日本からの輸出に関する制度

水産物の輸入規制、輸入手続き

カナダの食品関連の規制

1. 食品規格

調査時点:2019年10月

水産物はカナダ食品安全規則において規格が定められています。

カナダの水産物の輸入者は、食品の衛生および安全性を確保することを目的とし、カナダ食品安全規則第4章(Part4)で定められる予防管理(Preventive Controls)に従った衛生管理などを行う必要があります。

さらに、同規則第4章第6節(Part 4 Division 6)により食品製造工程上の危害要因を分析し、重要な管理点を継続的にモニタリングすることで食品事故の発生を未然に防ぐことを主な目的とした予防管理計画(Preventive Control Plan)を作成、書面で保管することが求められています。書面の作成にあたり、製造元の事業者とカナダの輸入者の間で取り交わされる言語に制限はありませんが、最終的な予防管理計画書は英語もしくはフランス語で作成され、保管されなければなりません。

また、同規則第5章(Part5)では、トレーサビリティについて定められており、輸入者は商品名、ロット記号、輸入者もしくは製造者名および住所を記録保管するとともに、商品にこれらの情報をラベル表示することが求められています。さらに、商品の流通履歴の記録保管を行うため、商品の販売者および購入者名、住所、販売/購入日時の記録を保管しなければなりません。

これらの食品全般に対する要件に加え、カナダ食品安全規則のもとに制定される水産物に特有の要件「カナダ食品安全規則―食品別要件およびガイド―水産物」(その他参考情報)も順守する必要があります。

こうした予防管理、予防管理計画、トレーサビリティの要件を満たすことを条件に輸入者には食品検査庁から輸入ライセンスであるSafe Food for Canadians Licenceが供与されます。

予防管理、予防管理計画、トレーサビリティの要件

予防管理

カナダ食品安全規則のもと、食品輸入者を含め、カナダで州をまたいで食品生産・加工を行う企業の多くは、アルコール飲料や食品添加物などの一部の食品を除き、食品安全に対する予防管理を施すことが求められます。予防管理は食品への危害要因を安全な水準まで除去もしくは減少させることを目的とした国際的に認知された手法で、CODEX(コーデックス委員会)の原則に基づいています。

カナダ食品安全規則第4章(規定47~84)では予防管理について定めており、水産物を含め、該当する食品は次の要件を満たす必要があります。

危害要因の特定、分析および管理措置(規定47~84)
食品に汚染危険性のある生物的、化学的、物理的危害の特定と管理を行う。
施設の状態
規則に準じた方法で施設を維持・操業する。
公衆衛生、害虫予防および食品以外の物質の取り扱い
施設や機材の清潔状態を保ち、害虫予防や洗剤などによる食品汚染を予防する。
輸送設備および機材
輸送設備および機材が食品を汚染しないよう設計、清掃、消毒する。
危積み卸しおよび貯蔵
食品を汚染しない方法で積み卸し、貯蔵を行う。
従業員の能力
従業員が安全な食品の取り扱いの知識を有する。
衛生状態
適切な衣類を着用し、健康状態に留意して食品を取り扱う。
調査、伝達、クレームおよびリコール対処方法
食品の安全問題が起きた場合に調査を行う。ヒトの健康にリスクがある場合は、カナダ食品検査庁(Canadian Food Inspection Agency:CFIA)へ通知する。クレームの取り扱い手順、リコール手順を文書化する。リコールテストを行う。
予防管理計画

それぞれの事業者は食品安全管理が行われていることを「予防管理計画(PCP)」として文書化する必要があります。予防管理計画の作成にあたって、日本側事業者へはカナダの輸入者が課せられる要件に対し、英語もしくはフランス語による各種の書面の提出が求められることになります。

1. 輸入者の予防管理計画
  1. 危害要因の特定と関連する管理措置
    カナダ食品安全規則では、輸入食品に対してもカナダ国内で加工・生産される食品と同等の危害要因分析および予防管理が必要となります。輸入者は外国の食品施設に対して直接の食品安全管理措置を取れる状態にないことを前提としているため、外国供給業者が危害要因を特定し、関連する管理措置を施しているかを見極めることが重要になります。

    危害要因の特定
    食品を輸入するにあたって、食品を汚染しうる生物的・化学的・物理的な危害要因をすべて特定し、記述する必要があります。食品由来および加工工程由来の危害要因をすべて洗い出し、予防管理計画の危害要因の特定よび分析の章に次の2点を記載する必要があります。
    ・輸入見込み食品の食品由来および加工工程由来の危害要因
    ・上述の危害要因が輸入見込み商品に対して設定した危害要因として適格であるという輸入者の保証
    予防管理計画上で危害要因の特定について示す方法
    次に提示するA~Cのいずれかを用いて、輸入者が危害要因の特定を適切に行っていることを示す必要があります。
    1. 輸入者もしくは第三者による外国供給業者に対する現場監査の実施。この場合、予防管理計画には特定された危害要因がすべて記載されている必要があります。
    2. 国際的な第三者認証を取得している供給業者からの商品供給。この場合、輸入者は、外国供給業者に対して、監査が危害要因の特定と分析を含み、認証機関との良好な関係を維持していることを示す根拠資料の提出を求める必要があります。
    3. 食品安全システムの同等性認証取得国内の供給業者からの商品供給。この場合、輸入食品の原産国が同等性認証取得国の商品で、輸入食品供給業者が当該国の所轄官庁と良好な関係を維持していることを示す文書が必要になります。
    *2019年10月時点で同等性認証を交わしているのは米国のみです。
    管理措置
    予防管理計画には、すべての危害要因を管理できる措置が施されていることを示す根拠資料を盛り込む必要があります。
    予防管理計画上で効果的な管理措置を示す方法
    危害要因の特定と同様、次のA~Cのいずれかを用いて効果的な管理措置が行われていることを示す必要があります。
    1. 輸入者もしくは第三者による外国供給業者に対する現場監査の実施。この場合、次の6点を予防管理計画に盛り込む必要があります。
      1. 管理措置に係る作業
      2. 作業がどのように行われるか
      3. 作業頻度
      4. 作業の担当者
      5. 日々の作業工程での管理措置に係る作業が行われていることを示す記録
      6. その他管理措置が効果的に施されていることを示す書類
    2. 国際的な第三者認証を取得している供給業者からの商品の供給。この場合、監査が食品安全管理措置に関する評価を含み、認証機関と良好な関係を維持していることを示す証拠の提出を求める必要があります。
    3. 食品安全システムの同等性認証取得国内の供給業者からの商品供給。この場合、輸入食品供給業者の原産国が同等性認証取得国からの商品で、供給業者が当該国の所轄機関と良好な関係を維持していることを示す文書が必要になります。
    *2019年10月時点でカナダと同等性認証を交わしているのは米国のみとなっています。
    管理措置の有効性の検証
    前述のA~Cに加え、輸入者は管理措置の有効性を検証する必要があるため、次の手段を講じることが推奨されています。
    1. 供給業者ごとの定期的なサンプリング検査(検査頻度は商品の安全性や供給業者のこれまでのコンプライアンス準拠状況による)。
    2. ロットごとの分析証明書の入手。分析証明書には次の記載が可能。
    ・ サンプリング方法、検査を行うための分析方法
    ・ サンプリング検査および分析実施日、商品ID(商品名およびロット番号)、分析者氏名
    ・ ロットが検査され、分析記録が出荷物と合致し検査後変化が起きないよう適切な状態で保存されたということの検証
  2. 外国供給業者管理と手順

    輸入者は、カナダ食品安全規則のもと、それぞれの外国供給業者が規則の第47~81章で示される予防管理、もしくは、それに相当する効果的な食品安全リスクの管理を行っており、第89章89(1)(c)(i) ~(vii)で示される要件に合致した食品安全システム(例えば、CODEX(コーデックス委員会)の原則に基づく食品安全システム)を運用していることを予防管理計画の中で保証する必要があります。

    輸入管理計画には、外国供給業者が次のステップを踏んで運用を行っていることを示す必要があります。

    • 危害要因の特定と分析
    • 管理措置の実施
    • 必須管理点の特定
    • 検証
    必須管理点(CCP)が実施されているかの検証
    危害要因の特定と同様、次のA~Cのいずれかを用いて、外国供給業者が必須管理点を実施していることを示す必要があります。
    1. 輸入者もしくは第三者による外国供給業者に対する現場監査の実施。この場合、次の4点を予防管理計画に盛り込む必要があります。
      1. 外国供給業者の予防管理実施について特定・記録すること。
      2. 必須管理点を特定・記録し、それぞれの許容限界(Critical Limit)について記載すること。
      3. それぞれの必須管理点について許容限界内に収まるようにモニタリング方法について記録すること。
      4. 許容限界を超えた場合の是正措置について記録すること。
    2. 国際的な第三者認証を取得している供給業者からの商品の供給。この場合、監査が供給業者の必須管理点の特定、許容限界についての記載、それぞれの必須管理点についてのモニタリング方法の記録、許容限界を超えた場合の是正措置に関する評価を含んでいるという根拠資料を含めた第三認証プログラムの情報、および認証機関との良好な関係を維持していることを示す根拠資料の提出を求める必要があります。
    3. 食品安全システムの同等性認証取得国内の供給業者からの商品供給。この場合、輸入食品供給業者の原産国が同等性認証取得国からの商品で、供給業者が当該国の所轄機関と良好な関係を維持していることを示す文書が必要になります。
      *2019年10月時点でカナダと同等性認証を交わしているのは米国のみです。
    予防管理計画の有効性の検証手順
    輸入食品が一貫して安全で規格にのっとったものであることを確実にするため、輸入者が検証する各種の方法を「予防管理計画の有効性の検証手順」として記載する必要があります。
    • 輸入食品がカナダの要件に合致することを確認できるように輸入者が踏む手順(サンプリング、分析証明書の評価、商品スペックの確認など)
    • 検証手順の頻度(新規の供給業者については最初の出荷を含めた5回分の出荷分を確認し、その後は国際的な食品安全システムからの年次監査結果を要求するなど)
    • 検証を行う人員の役職名
    さらに、輸入者の予防管理計画には検証手順に使用した補完資料(各種規則やガイドライン、CODEX(コーデックス委員会)など国際的に認証されているガイドライン、科学的文献、専門家の意見、業界の慣習など)を盛り込むことも可能です。
  3. 消費者保護に関する要件
    輸入食品が、ラベル表示、商品名称、等級、包装などの消費者保護に関する規定順守を確実にするために講じる対策について記載します。
2. 予防管理計画の実施
予防管理計画の文書化を完了後、計画を日常業務で遂行するには、次のことを実施する必要があります。
  • 手順に関するスタッフのトレーニング
  • 書かれた予防管理計画に従う
  • 予防管理計画を実施したことを示す記録を作成し、その記録を少なくとも2年間保持する
  • 予防管理計画が書面通りに実施され、食品安全上の問題予防に有効であることを検証し、その結果、カナダ国民のための安全な食品に関する規則(SFCR)を順守する。

予防管理計画の有効性の検証
予防管理計画の有効性を示すにはいくつかの方法があります。例えば、食品ごと、または外国供給業者ごとに検証手順を設定しておくことも可能です。検証頻度や検証水準は輸入食品のリスクに応じて変更する必要があります。

予防管理計画の有効性検証のための対策

  • 商品がカナダの規格およびスペックを満たしているかの目視検査
  • 包装材料が意図した用途に適していること、包装製造業者の指示に従って使用されていること、およびカナダの要件を満たしていることの検証
  • ロットの分析証明書の取得
    • 証明書を見直し、サンプリング手順と分析方法が適切であることの確認
    • ロットが最近サンプリングされ、サンプリング後の食品への変化を防ぐために適切な条件下で保管されていることを確認
    • 代表的なサンプルを定期的(例:毎月)に取り出して分析し、分析証明書の正確さを検証
  • それぞれの供給業者について文書化された履歴を維持し、供給業者が仕様に準拠していることを示す(例:分析結果の文書化)
  • 所定のサンプリング計画に従ってロットをサンプリングし、仕様への準拠について分析
  • 輸入食品について受け取った苦情を定期的に見直す(例:毎月)

予防管理計画には、計画を実施したという証拠(サービス契約、処理記録、その他の日々の記録など)も含める必要があります。

3. 予防管理計画の維持管理
予防管理計画を開発・実施後は、年に一度など、定期的に見直しを行うとともに次の場合にも再評価・修正を行う必要があります。
  • 何かが新しくなる、もしくは変更が行われる場合(例:供給業者の変更や商品の仕様変更など)。
  • 問題が見つかった場合(外国供給業者の社内モニタリングでの欠陥発見や、第三者監査でコンプライアンス違反、消費者クレームに基づく予防管理計画の不備が見つかった場合など)。
トレーサビリティ

輸入者には、カナダ食品安全規格で定義されているトレーサビリティの要件が適用され、次の情報を盛り込んだ文書を記録保管することが求められます。

  1. 食品の識別
    ・食品の一般名
    ・食品のロットコードまたはその他の一意の識別子
    ・食品の製造、保管、包装、またはラベル貼付した企業もしくはそれを委託した企業の名称および住所
  2. 食品の直近の供給業者(サプライチェーンの一段階前)の情報
    ・供給業者の名称および住所
    ・食品の供給日
  3. 食品の直近の提供者(サプライチェーンの一段階後)の情報
    ・供給業者の名称および住所
    ・食品の供給日

2. 残留農薬および動物用医薬品

調査時点:2019年10月

水産物は、残留農薬/動物用医薬品規制の対象となります。カナダは使用される農薬についてポジティブリスト制度を採用し規制しています(有害生物駆除製品法、Pest Control Products Act:PCPA)。許容残留農薬の登録あるいは事前相談は、保健省病害虫管理規制局(Pest Management Regulatory Agency:PMRA)のElectronic Pesticide Regulatory System(e-PRS)によって申請するか、電子メールで問い合わせることができます。
なお、同局では農薬最大残留基準値データベースを公開しており、水産物の農薬最大残留基準値は調査時点で次のとおり2種類が規定されています。
なお、最新情報については、関連リンクを参照してください。

水産物における残留農薬の最大残留基準値
化学物質名 最大残留基準値 (ppm)
Azamethiphos 0.05
DDT 5

さらに、養殖魚などへの動物用医薬品の使用についても、「カナダ食品検査庁水産養殖業治療薬残留モニタリングリスト」が公開されており、調査時点で66種類が規定されています。 なお、最新情報については、関連リンクを参照してください。

3. 重金属および汚染物質

調査時点:2019年10月

水産物は、重金属/汚染物質/真菌・毒素・微生物などの規制の対象となります。具体的な基準値は、食品医薬品規則-食品の不良(DIVISION 15 Adulteration of Food)によって規制されており、カナダ保健省食品部化学安全局(Bureau of Chemical Safety, Food Directorate)が管轄しています。
同局では、重金属/汚染物質/真菌・毒素・微生物などを「汚染物質、不純物、化学汚染物質」と定義しており、含有禁止物質および含有許可物質とその最大残留基準値を食品の種類別に次の順で提示しています。関連リンクの「その他参考情報」を参照してください。

  1. 食品の汚染物質および不純物リスト
    パート1:食品に含まれてはならない物質リスト
    パート2:食品への含有最大基準が設けられている物質リスト
  2. 食品の化学汚染物質の含有最大基準

4. 食品添加物

調査時点:2019年10月

水産物は、食品添加物規制の対象となります。カナダでは、使用される添加物についてポジティブリスト制を採用しており、食品医薬品規則-食品添加物(DIVISION 16 - Food Additives)で規制されています。カナダで使用できる食品添加物(着色料含む)のほか、その使用方法および限度量は、カナダ保健省の「許可済み食品添加物リスト」(カナダ保健省 食品添加物について」リンク内)に公開されています。規定量を超える使用、同リストに記載のない食品添加物の使用、規定されている使用法以外での使用を行う場合は、カナダ保健省に事前に申請する必要があります。例えば、日本では使用が認められている次の着色料や保存料はいずれもカナダでの使用は認められていません。

カナダでは使用が禁止されている日本の食品添加物例
種類 名称 使用が散見される食品
着色料 紅麹 おかきや煎餅
着色料 クチナシ 羊羹などを含む緑・黄色系食品
保存料 パラオキシ安息香酸(イソプロピル、ブチル、イソブチル) 醤油、蒲焼きソース、かき氷シロップ

(出所:ジェトロ聞き取り調査)

さらに、米国ではマグロやブリなどの赤身の変色防止剤として水産品への一酸化炭素ガス処理が認められていますが、カナダでは、一酸化炭素は前述の「許可済み食品添加物リスト」に掲載されておらず、使用が認められていないため注意が必要です。

なお、人工着色料の使用にあたってはカナダ保健省からの認定書の取得が義務付けられていましたが、2016年12月14日付で食品医薬品規則を改正し、認定書取得の義務付けが即日廃止されました。

5. 食品包装規制(食品容器の品質または基準)

調査時点:2019年10月

食品用の容器・包装に関しては、食品医薬品規則-食品包装材(DIVISION 23 Food Packaging Materials)で食品衛生・安全性および品質基準に合致することが求められており、カナダ保健省健康製品食品部食品局(HPFB)およびカナダ食品検査庁が管轄しています。
食品の包装材が安全でかつ食品医薬品規則の品質基準に合致することは食品販売者(製造業者、卸売業者)の責任となっています。2014年7月2日までカナダ食品検査庁による包装材の安全性評価のための市場導入前審査が義務付けられていましたが、現在は乳児用調製粉乳(フォーミュラ)や新規食品などの一部の食品を除いて行われていません。ただ、企業が希望すれば、HPFBは包装材の審査を行い、審査基準を満たせば同局から使用に異議がない旨の書面「LONO(Letter of No Objection)」の受理が可能です。
なお、カナダ保健省では包装材に使用できる材質のポジティブリストを提示していませんが、生産者へのサービスの一環として、2003年11月1日以降LONOを発行してきた重合体のポジティブリストを公開しています。

6. ラベル表示

調査時点:2019年10月

水産物のラベル表示は、カナダ食品安全法および規則(Safe Food for Canadians Act & Regulations)、食品医薬品法および規則(Food and Drugs Act & Regulations)によって規定されています。

2016年12月14日、食品医薬品規則の栄養ラベル表示、原材料表示および人工着色料の要件変更が施行され、新ラベル表示への移行に5年間の猶予期間が設けられることになりました。猶予期間中は新旧どちらのラベル表示も可能ですが、2021年12月14日以降は、すべての包装済み食品は新規則に準拠しなければなりません。ここでは新規則について概説します。

ラベル表示は、いかなる包装済み商品にも適用される「基本ラベル表示要件(Core Labelling Requirements)」、「強調表示および陳述(Claims and Statements)」の部分と食品分野別に定義される「食品群別ラベル表示要件(Food-Specific Labelling Requirements)」から構成されています。商品に応じてそれぞれの要件に沿った表示が求められ、英語、フランス語による併記が義務付けられています。

基本ラベル表示要件
  1. 2カ国語表記
  2. 品名
  3. 原産国
  4. 日付刻印と貯蔵方法
  5. 事業者名および住所
  6. 照射食品
  7. 読みやすさと表示位置
  8. 原材料表示およびアレルギー源
  9. 容量
  10. 栄養表示
  11. 甘味料
  12. 食品添加物
  13. 強化食品
  14. 等級
  15. 商品認識基準
強調表示および陳述
  1. 広告
  2. アレルギー源およびグルテン
  3. 組成および品質
  4. 健康強調表示
  5. 生産方法
  6. 写真、イラスト、ロゴおよび商標
  7. オーガニック
  8. 原産
  9. 栄養成分
食品群別ラベル表示要件
水産品をはじめとして19の食品群別のラベル表示要件が提示されています。水産品に特有なラベル表示要件として提示されている項目は次のとおりです。
  1. 品名
  2. ツナ缶、白身魚、フィルター燻蒸に関する追記項目
  3. 容量(穀物およびベーカリー製品)
  4. 貯蔵方法および取扱方法
  5. 栄養表示
  6. 読みやすさ
  7. 原産国
  8. 等級
  9. コード表示
  10. 輸送コンテナ
  11. 貝類のラベル表示要件
  12. 自主的強調表示および陳述
  13. 追加情報
なお、原材料に卵と表示されていないのに卵を使用したすり身商品が食品検査庁の検査によって多数見つかっています。卵はアレルギー物質であり、深刻な健康上の問題を引き起こす消費者もいます。卵を含むアレルギー物質を使用していながら原材料表示を行っていない商品は没収およびリコールの対象となります。また、こうした商品の輸入を行った輸入者は、輸入ライセンスの剥奪など、法的措置の対象となるため注意が必要です。
カナダ食品安全規則により変更される主要点は次のとおりです。
  1. 「包装済み」(prepackaged)および「消費者向け包装済み」(consumer prepackaged)という言葉が新たに定義されました。
    1. 「包装済み」(prepackaged):消費者向けにあらかじめ包装されたものを含め、個人や団体に対して販売される容器包装されたもの。製造業向けやフードサービス向けの商品が該当します。
    2. 「消費者向け包装済み」(consumer prepackaged):個人に対して販売される容器包装されたもの。小売商品が該当します。
    カナダ食品安全規則に統合された乳製品規則および加工食品規則では、prepackagedは小売店舗用販売食品に限定されているのに対し、食品医薬品規則では、prepackaged productは個人や団体に販売される商品と定義されており、整合性を欠いていました。これを是正するため、新規則では定義の統一化が図られています
    カナダ食品安全規則の要件確認の際には、当該規則が「包装済み」(prepackaged)食品すべてに適用されるものか、あるいは「消費者向け包装済み」(consumer prepackaged)食品のみ、もしくは「包装済みで消費者向け包装済み以外の」(prepackaged other than consumer prepackaged)食品のみに適用されるものかを確認する必要があります。
  2. 消費者保護の観点から、予防管理計画の一部としてラベル表示が正確に行われているかを確認する文書を保管することが求められます。また、トレーサビリティの観点から、ラベルには次の情報掲載が求められます。
    1. 品名(カナダ食品安全規則または食品医薬品規則で定義される名称。あるいはこれらの規則で定義されていない場合には、食品の通称もしくは機能を示す名称)
    2. 製造事業者もしくは製造委託元事業者の名前および住所
    3. アルファベットや番号で提示されるロット番号(消費者向けにあらかじめ包装された商品のみ)

7. その他

調査時点:2019年8月

なし

カナダでの輸入手続き

1. 輸入許可、輸入ライセンス等、商品登録等(輸入者側で必要な手続き)

調査時点:2019年10月

カナダの輸入業者は、事前に事業者番号(Business Number)をカナダ歳入庁(Canada Revenue Agency)から取得し、カナダ国境サービス庁事務所に輸出入口座を開設します。その後、電子取引プログラム(Electronic Data Interchange: EDI)により輸入手続きを行います。水産物は 2012年1月から自動輸入システム(Automated Import System: AIS)の対象品目になり、輸入業者および通関業者はEDIによりカナダ食品検査庁に輸入を通知しなければ、税関で貨物を引き取ることができません。

日本から水産物を輸入するにあたって、輸入者は輸入ライセンスが必要です。

輸入ライセンス(Safe Food for Canadians Licence
カナダ食品検査庁(Canadian Food Inspection Agency: CFIA)は食品安全法(Safe Food for Canadians Act)のもと、カナダ食品安全規則を2019年1月15日に施行しました。新規則は食品の種類別に設けられていた14の規則を統合し、すべての食品にかかわる輸入、輸出、カナダ国内の州間の移動を規制するもので、輸入食品の安全に対する輸入業者の責任の強化、カナダ食品検査庁による輸入業者の把握、安全性に疑いのある輸入品の迅速な確認・対応と当局への連絡などが求められ、輸入業者は、事業規模や輸入食品に応じて設定されている要件を満たすことを要件に輸入ライセンス(Safe Food for Canadians Licence)が付与されます。費用は2年間で250カナダドルとなっています。
同ライセンスの取得要件については、「食品関連の規制」の「1.食品規格」を参照してください。

なお、カナダ食品安全規則施行以前に水産物を対象として施行していた旧魚類検査規則(Fish Inspection Regulation)と比較すると、輸入に関する商品通知書式や、時期、カナダ国境サービス局による通関終了後の措置に関し、次のとおり違いがみられます。。

旧魚類検査規則とカナダ食品安全規則による輸入手続きの違い
旧魚類検査規則
(2019年1月15日に廃止)
カナダ食品安全規制
(2019年1月15日施行)
輸入通知書式 魚類輸入通知(Fish Import Notification)フォームを使用 電子データ交換(EDI)を使用
通知時期 輸入者は輸入後48時間以内に通知 輸入者は輸入前または輸入時に通知
CBSA通関終了後の措置 Basic Importer Program輸入者は、カナダ食品検査庁の検査終了まで商品が留め置き
輸入者向け品質管理プログラム(QMPI)輸入者は、即時商品の流通可能
即時商品の流通可能

2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)

調査時点:2019年10月

カナダ食品検査庁では、同庁ウェブサイトで自動輸入参照システム(Automated Import Reference System)を導入しており、商品ごとに通関時に必要となる書類や情報を公開しています。水産物(例:HS030721:ホタテ貝柱)の輸入に際して提出が求められる書類および情報は次のとおりです。

  • 外国加工施設(Foreign Processing Establishment
  • 単位容器のタイプ(Unit Container Type
  • パッケージ数(Number of packages
  • 総重量/総量(Total Weight/Volume
  • 包装ごとのユニット数(Number of units per package
  • 単位重量(Unit weight
  • 単位容器・測定単位(Unit container unit of measure
  • ロットコード/サイズ(Lot code/size
  • 商標名(Brand name
  • SFCライセンス(Safe Food for Canadians Licence

3. 輸入時の検査・検疫

調査時点:2019年10月

カナダ食品安全規則のもとでは、食品検査の焦点は、従来の商品検査からシステムに基づく輸入者の予防管理計画検査へと移行しています。輸入食肉検査は従来通り行われますが、その他の輸入食品については通関検査が必要な場合を除き、カナダの国内市場出荷前の定期検査の対象にはなりません。

製品のサンプリングまたは検査の頻度を定める明確な作業仕様または計画がない場合、輸入製品検査の有無は検査官の裁量に委ねられています。

検査官は、入手可能なすべての情報に基づいて検査ニーズを決定し、製品検査の優先順位を付け、標準検査や予防管理計画検査時に製品にアクセスできるように検査を計画します。

輸入商品の検査優先度

商品は予防管理計画の設定欠陥、サンプリング検査での不合格、消費者からのクレームなどのリスク要因に基づいて検査されます。

カナダ検査庁では、輸入商品に対し、1.商品群に応じた優先度と2.その他の優先度を設けて検査を行っています。

  1. 商品群別では、乳製品、卵、水産品、青果物、ハチミツ、メープル製品、加工青果物のそれぞれの品目で病原体リスクの高さに応じてさらに細かい品目分けが行われ、優先度が設定されています。
カナダ食品検査庁が設ける水産物の品目別検査優先度
商品群 病原体リスクによる品目順位(優先度:高→低) 備考
水産物 •調製済み生の魚介類(例:燻製魚、寿司、生のカキ、キャビア、その他の生製品など)
・非調製済みの新鮮または冷凍の魚およびシーフード(例えば、未処理の生の魚、生の軟体動物の貝、生の甲殻類など)
•調製済みで加熱処理された魚および魚介類(調理された魚および/または魚介類、燻製魚および/または魚介類など)
• 調製済みの漬物、スパイス、マリネした魚と魚介類(例:魚の発酵製品、アンチョビ、未低温殺菌魚のソース、ペーストなど)
•調製済み乾燥または塩漬けおよび乾燥魚および魚介類(例:干物、塩漬け魚、魚のジャーキーなど)
•調製済み缶詰魚介類(低温殺菌済みキャビア、低温殺菌済みカニ肉、オイスターソース、魚醤など)

•活魚とシーフード(ロブスター、非調製済み貝など)
比較リスクモデルの結果によると、魚介類は人間の健康に3番目に高いリスクをもたらします。
魚介類製品の主な危険は、病原体と化学物質(海洋生物毒素、重金属)です。 したがって、生で消費される製品と化学的危険性のある製品(生体毒素、重金属)を検査の対象とする必要があります。
  1. その他の優先度では、輸入者(これまでのコンプライアンスや予防管理計画の作成経験)、外国事業者の予防管理の知識、原産国、サプライチェーンの4項目によって、高、中、低の優先度が設けられ、検査が行われることになっています(表参照)。
カナダ食品検査庁が設ける検査優先度
優先度―高 優先度―中 優先度―低
輸入者リスク(これまでのコンプライアンス、予防管理計画) ・重大なコンプライアンス違反がある
・コンプライアンス順守が行われていない
・予防管理計画がこれまで不要
・軽度のコンプライアンス違反がある
・新規輸入者(これまで検査を受けたことがない)
・予防管理計画がこれまで不要
・コンプライアンスが順守されている
・(食肉、水産品など)カナダ食品安全規則施行前から予防管理計画を策定している
外国供給者の予防管理知識 ・外国供給業者が食品安全に関する指摘を受けた実績がある
・外国供給業者所在‘国と食品安全規格の同等性認証を交わしていない
・輸入者が現場検証を行っていない
・外国供給業者に食品安全に関する過去の実績がない
・外国供給業者所在国と食品安全規格の同等性認証を交わしていない
・輸入者が現場検証を行っていない
・外国供給施設の食品安全に関して良好な実績がある
・外国供給業者所在国と食品安全規格の同等性認証を交わしている
・輸入者/所轄官庁が予防管理について検証済み
原産国リスク ・所轄官庁が食品安全規格を有していない ・所轄官庁が食品安全規格を有している
・カナダと同等性認証を行っていない
・所轄官庁が食品安全規格を有している
・カナダと同等性認証を行っている
サプライチェーンリスク ブローカーや卸売業者などの仲介業者が存在する ・サプライチェーン不明
・生産者/供給者からの直送
・生産者/供給者からの直送

輸入者の予防管理計画検査の検査手順については、カナダ食品検査庁は標準検査手順(Standard Inspection Procedure)を公開しており、予防管理計画書検査における判断基準、環境検査や商品検査、コンプライアンス違反が見つかった場合の程度に応じた是正措置対応期間(重大:10日以内、中等度:60日以内、軽度:180日以内)などの詳細が記されています。

輸入商品のサンプリング活動

輸入製品のサンプリングおよびサンプリング計画は、カナダ食品安全規則施行後も、これまでと同様に次の年次全国サンプリング計画を通して設定されます。

  • 全国化学物質残留モニタリングプログラム(NCRMP)
  • 全国微生物モニタリングプログラム(NMMP)
  • 添加物、粗悪品、アレルゲン、組成、照射および栄養サンプリング計画(総称AAACIN)
  • 水産品計画
  • 食品安全性監視サンプリング計画

標準検査および予防管理計画検査の所見を裏付けるため、検査中に輸入商品がサンプリングされる場合もあります。さらに、前述の監視サンプリング計画に基づいて、標準検査および予防管理計画検査とは無関係にサンプリングが実施される場合もあります。

カナダ食品安全規則施行に伴う魚類の検査制度の変更

前述の検査制度概要では、水産物を含めた肉類を除く食品に水平展開される食品検査制度について概説しましたが、ここからは、水産品への新旧検査体制の違いについて概説します。

カナダ食品安全規則の施行に伴って、カナダ食品検査庁は検査方法にリスクベースの検査体制を整えることになり、旧魚類検査規則をもとに実行してきた検査体制に変更が加えられています。

カナダ食品安全規則の施行前に水産品の検査規則として適用されていた旧魚類検査規則(FIR)では、輸入水産品がカナダの基準と要件を満たすことを示す根拠の提示に重点が置かれ、製品や生産者に応じて次の検査が行われていました。

  • 初めて輸入された魚類の検査
  • ランダム検査
  • 不適合の履歴を持つ魚類の強制検査(必須検査リスト(MIL)および拡大検査リスト(EIL)による)

必須検査リストおよび拡大検査リストにより、CFIAは準拠していない魚を識別し、同様の製品が輸入される際には、国内での販売・流通前に分析/製品検査が可能となっていました。

また、旧規則下で運用されていた2つのプログラム、Basic Importer ProgramおよびQuality Management Programでは、前者の場合、CFIAの監視は、主に前述の3種の検査およびロットごとの追跡/製品分析/検査の必要性の評価(リスク要因に基づく)に基づき、後者では、主に文書化されたQMPI計画のコンプライアンス検証に基づいていました〔カナダ国民のための安全な食品に関する規則(SFCR)の予防管理計画(PCP)と同様〕。

これに比べて、カナダ食品安全規則下では、次の3点の変更が加えられました。

  • 必須検査リストおよび拡大検査リストを、製品の検査とサンプリングに対するリスクベースのアプローチに置き換えており、魚類の輸入業者は予防管理計画(PCP)を通じてコンプライアンスを示す責任がある。
  • 魚類の輸入は一般にカナダ食品検査庁による留め置きや検査が実施されない。
  • 輸入者はPCP記録を維持し、PCPの有効性を検証する必要がある。 CFIA検査官は、認可された魚類輸入業者の検査を実施し、輸入者の予防管理の有効性の検証と監視、コンプライアンス違反の問題に対処する。

4. 販売許可手続き

調査時点:2019年10月

カナダで水産物を販売するにあたって必要となる、連邦政府が定める免許や登録はありませんが、一般的に食品の販売には、州、地方自治体が定める免許の取得や事業の登録が必要です。これらは、州、地方自治体が独自に定めており、業態などによって必要となる手続きは異なります。

5. その他

調査時点:2019年10月

なし