日本からの輸出に関する制度

牛肉の輸入規制、輸入手続き

カナダでの輸入手続き

1. 輸入許可、輸入ライセンス等、商品登録等(輸入者側で必要な手続き)

調査時点:2024年12月

カナダの輸入業者は、事前に事業者番号(Business Number)をカナダ歳入庁(Canada Revenue Agency)から取得し、カナダ国境サービス庁(Canada Border Services Agency: CBSA)事務所に輸出入口座を開設します。その後、電子取引プログラム(Electronic Data Interchange: EDI)により輸入手続きを行います。牛肉は 2012年1月から自動輸入システム(Automated Import System: AIS)の対象品目になり、輸入業者および通関業者はEDIによりカナダ食品検査庁に牛肉の輸入を通知しなければ、税関で貨物を引き取ることができません。また、2024年10月から、カナダへの商品輸入にあたっては、輸入者はCBSA Assessment and Revenue Management(CARM)システム への登録が義務付けられました。これは、CBSAが輸入者からの関税や諸税徴収を一元化するために設けたもので、輸入者は同システムを通じてCBSAへ直接諸税の支払いを行います。

輸入許可(Import Permit)
牛肉は、カナダグローバル連携省によって輸入管理品目に指定されているため、輸入に際しては輸入許可が必要です。日本産牛肉のカナダへの輸入では、輸入者がTPP11(CPTPP)協定適用関税もしくはWTOにおけるMFN(最恵国)関税のどちらかを選択できますが、それぞれ異なる輸入許可が必要になります。TPP11規定のもとで輸入を行う場合、輸入書類に「一般輸入許可100(GIP100、General Import Permit 100)」と記載のうえ、輸入手続きを行う必要があります。MFNの規定で輸入を行う場合は、カナダグローバル連携省から「出荷特定輸入許可(Shipment-specific Import Permit)」の交付を受ける必要があります。いずれの場合も関税は無税となっています。詳細は「輸入関税等」を参照してください。
輸入ライセンス(Safe Food for Canadians Licence)
日本から牛肉を輸入するにあたって、輸入者は輸入ライセンスが必要です。カナダ食品検査庁(Canadian Food Inspection Agency: CFIA)は食品安全法(Safe Food for Canadians Act)のもと、カナダ食品安全規則を2019年1月15日に施行しました。同規則は食品の種類別に設けられていた14の規則を統合し、すべての食品にかかわる輸入、輸出、カナダ国内の州間の移動を規制するもので、輸入食品の安全に対する輸入業者の責任の強化、カナダ食品検査庁による輸入業者の把握、安全性に疑いのある輸入品の迅速な確認・対応と当局への連絡などが求められ、輸入業者は、事業規模や輸入食品に応じて設定されている要件を満たすことを条件に輸入ライセンス(カナダ食品安全規則ライセンス、Safe Food for Canadians Licence)が付与されます。2023−2024年度(2023年3月31日開始)における2年間分の費用は287.22カナダドルとなっています。同ライセンスの取得要件については、「食品関連の規制」タブの「1.食品規格」を参照してください。
必要書類
カナダへの牛肉輸入に際して、カナダ食品検査庁(CFIA)傘下の国立輸入サービスセンター(National Import Service Centre:NISC)の承認を受けなければ、出入国管理を行うカナダ国境サービス庁(CBSA)から当該貨物(牛肉)のカナダへの輸入が許可されません。NISCからの承認を得るには、輸入者は厚生労働省が発行する食肉衛生証明書(Official Meat Inspection Certificate)および農林水産省が発行する輸出検疫証明書を提示する必要があります。2文書の取得方法はそれぞれ「2.施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」および「3.動植物検疫の有無」を参照してください。

2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)

調査時点:2024年12月

カナダ食品検査庁では、同庁ウェブサイトで自動輸入参照システム(Automated Import Reference System)を導入しており、商品ごとに通関時に必要となる書類や情報を公開しています。牛肉の輸入に際して提出が求められる情報は次のとおりです。

  1. 対カナダ輸出食肉衛生証明書 Official Meat Inspection Certificate
  2. カナダ食肉検査施設 Canadian Meat Inspection Establishment (other than US shipments)
  3. 船舶または航空機等の輸送業者 Transport Carrier
  4. 食肉処理場認定番号、名称および国 Foreign Processing Establishment
  5. 商品包装の種類 Product packaging type
  6. パッケージ数 Number of packages
  7. 総重量/体積 Total Weight/Volume
  8. 輸出施設 Export establishment
  9. 積荷マーク Shipping marks
  10. 封印シール番号 Seal number
  11. と畜場認定番号、名称および国 Slaughter establishment
  12. 総重量単位(lbs/kg)Total weight unit of measure
  13. コンテナ番号 Container number
  14. 輸出検疫証明書 Export Quarantine Certificate
  15. カナダ食品安全規則ライセンス Safe Food for Canadians Licence

3. 輸入時の検査・検疫

調査時点:2024年12月

カナダ食品安全規則のもと、食品検査には「標準検査手順(Standard Inspection Process: SIP)」が用いられています。食肉もこの手順のもと検査が行われていますが、なかでも輸入牛肉については、カナダ食品検査庁が具体的な検査方法を次のとおり示しています。外国の牛肉取扱施設が、新規にカナダ向けの牛肉輸出が可能な施設として認定されると、カナダの認定検査施設において、初出荷分から連続して最低10回分の出荷物について全官能検査を行います。連続10回分の出荷物が全官能検査に合格すると、検査頻度は連続出荷10回分につき1回に減ります。検査で不合格品が見つかった場合には、当該施設からの全出荷物が官能検査の対象となり、連続して10回分の出荷物が合格するまで検査頻度は減りません。
なお、前述の認定検査施設での検査が行われるのと同時に、ラボ分析検査用にサンプル抽出が行われ、輸入牛肉の重金属、残留農薬、ホルモンおよびその他の化学残留物質や微生物検査が行われます。通常、当該品が官能試験に合格後は、ラボ検査の結果を待たずにカナダの認定検査施設からリリースされますが、ラボ検査で不合格が見つかった場合には、連続して15回分の出荷物(少なくとも不合格品となった対象品の15倍の質量のもの)がさらにラボ検査の対象となり、各出荷分はラボ検査の結果が出るまで登録施設で留置されることになります。

4. 販売許可手続き

調査時点:2024年12月

カナダで牛肉を販売するのに必要となる、連邦政府が定める免許や登録はありませんが、一般的に食品の販売には、州、地方自治体が定める免許の取得や事業の登録が必要です。これらは、州、地方自治体が独自に定めており、業態などによって必要となる手続きは異なります。

5. その他

調査時点:2024年12月

なし

その他

調査時点:2024年12月

有機認証制度

2012年以来、日本とカナダの間で有機認証制度に関する協議を続けてきた結果、2014年9月17日、両国は、日本の当時の「農林物資の規格化等に関する法律」(現「日本農林規格等に関する法律」)に基づく有機JAS制度と、カナダのCanada Organic Regime (COR)が同等であると相互に認めることについて合意しました。これにより、2015年1月1日以降は、日本-カナダ間において、自国の有機認証制度による認証を受けた有機農産物および有機農産物加工食品に「organic」などと表示して、相手国へ輸出できるようになりました。

加えて、2020 年7月16日には、有機畜産物、有機畜産物加工食品および有機農畜産物加工食品、2023年8月31日には有機酒類に関する有機同等性が相互承認されたため、牛肉についても日本の有機制度による認証を受ければ、「organic」などと表示して、カナダへ輸出することが可能です。有機JAS制度に基づき、最終的に日本国内で生産、加工または包装され、有機畜産物(原材料の原産国は問わない)として格付がされていれば、牛肉のパッケージなどに「organic」と表示してカナダに輸出することが可能です。

JAS認定事業者がカナダへの輸出証明書を入手するには、有機JAS登録認定機関にカナダへ有機製品を輸出する意向があることを伝えます。有機JAS登録認定機関は、JAS認定事業者に、輸出する有機畜産物がJAS格付されたものであるか、日本国内で生産、最終的加工または包装および表示されたものであるか、カナダの表示要件を満たしているかなどについて確認し、カナダへ輸出するための証明書を発行する取り決めとなっています。日本国内のすべての有機JAS登録認定機関は、カナダへ輸出するための証明書の発行が可能です。輸出証明書については、関連リンク「その他参考情報」の農林水産省「同等性を利用した有機製品の対カナダ輸出入に関するQ&A(2024年8月)」のQ16を参照してください。