税制
最終更新日:2023年01月01日
- 最近の制度変更
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2023年8月9日
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2023年1月23日
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法人税
16%
税率
- 法人税は、利益に対して一律16%
- 零細企業に対しては、1%の軽減税率を適用(税法2015年227号第47条~第51条)。
零細企業(microîntreprindere/microenterprise)とは、[1]前会計年度における売上高が50万ユーロを超えないルーマニア法人と定義され、[2] 清算/解散手続き中ではなく、[3]会社の総収入の80%以上がコンサルティング・経営活動以外によるものであることや、[4]1名以上の従業員がおり、[5]所得税制度の適用を受ける株式または議決権の25%以上を有する関連会社/株主数が3以下であるとの条件を満たす必要がある。[5]については、この制限を超えた場合、株主はその状況が発生した四半期に、軽減税率の適用対象外となり通常の法人税の累進課税制を適用する零細企業を定め、株主のいずれかが株式または議決権の25%以上を保有している零細企業の数が3社以内という条件を常に満たす必要がある。
なお、以下a.~d.の事業エリアについては新たに零細企業から除外される。
- 銀行分野の活動
- 保険、再保険、資本市場分野での活動、および、これら分野での仲介活動
- 賭博分野での活動
- 石油および天然ガス鉱床の探査、開発活動
一律1%の税率が適用されている。零細企業制度は選択制で、2023年1月1日以降に零細企業の所得に関する課税制度が適用されなかった場合、条件を満たした翌会計年度から法人税の軽減税率を選択することが可能となる。
課税年度
納税年度は、原則として暦年であるが、企業の裁量によって暦年以外の12カ月を設定することも可能。
申告と納付
申告期限は、原則として四半期もしくは月ごとに翌25日まで。
確定申告は、納税者の関連するカテゴリーに応じて期限が異なる(政府緊急政令2017年79号)。
繰越欠損金
7年間の繰越が可能。
二国間租税条約
ルーマニアは、日本と二重課税防止条約を締結している。
日本・ルーマニア二重課税防止条約に基づき、次のように決められている。
- 利子送金課税:10%(最高税率)
- 配当送金課税:10%(最高税率)
- ロイヤルティー送金課税:15%(工業的使用料)、10%(文化的使用料)
主な租税条約締結国・地域
アイルランド、アゼルバイジャン、アラブ首長国連邦、アルジェリア、アルメニア、スイス、イスラエル、イタリア、イラン、インド、インドネシア、ウクライナ、ウズベキスタン、英国、エクアドル、エジプト、エストニア、エチオピア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カザフスタン、カタール、カナダ、韓国、北朝鮮、キプロス、クウェート、クロアチア、サウジアラビア、ザンビア、シンガポール、スウェーデン、スペイン、スリランカ、スロバキア、スロベニア、セルビア、モンテネグロ、タイ、チェコ、中国、デンマーク、トルクメニスタン、ドイツ、トルコ、日本、ノルウェー、パキスタン、ハンガリー、バングラデシュ、フィリピン、フィンランド、フランス、ブルガリア、米国、ベトナム、べラルーシ、ベルギー、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ポルトガル、北マケドニア(旧マケドニア)、マレーシア、南アフリカ共和国、ヨルダン、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ロシア
その他税制
個人所得税(一律10%)、付加価値税(VAT:基本税率19%)、間接税、地方税(建物税、土地税、その他)など。
一部の対象企業には、環境基金への支払いや電子申告の義務がある。
個人所得税
税率は一律10%。ただし、配当所得に対する税率は5%(税法2015年227号、第43条)で、2023年1月1日以降の配当所得に対しては8%(税法2022年16号)。
社会保障負担は、2018年1月1日より次の2項目のみ(政府緊急政令2017年79号)。
- 被雇用者によって支払われる社会保障費:社会/年金保険料(25%)、健康保険料(10%)
- 雇用によって支払われる社会保障費:労働保険料(2.25%)
なお、給与以外の付加給付(食事券など)は、社会保険料の対象外。社会保険、年金、健康保険などを含む社会保障については、原則としてルーマニアに居住しルーマニアの企業から給料(もしくは給料とみなされる報酬)を受け取るすべての人が加入し、かかる社会保障費用を支払う必要がある。支払い義務はルーマニア現地法人と雇用契約のある従業員に加え、ルーマニア現地法人と役員契約などのある役員や出向契約により日本からルーマニア現地法人へ出向している者についても適用される。
IT産業関連職務に従事する従業員に対する個人所得税の免税措置について
研究・イノベーション・デジタル化省令21813/6421/2246/4433/2022により、特定のIT関連活動に従事する従業員に対して、個人所得税の免除が適用される。具体的には欧州共同体経済活動統計分類(通称、NACEコード)の以下a.~e.の事業活動が対象となる。
- NACE CODE 5821:コンピュータゲームの編集活動
- NACE CODE 5829:その他のソフトウェア編集活動
- NACE CODE 62-1:カスタムソフトウェア開発活動
- NACE CODE 62-2:ITコンサルタント活動
- NACE CODE 6209:その他の情報技術サービス活動
前述のIT産業活動に従事する従業員が当該免税措置を受けるためには、以下a.~e.の基準を満たす必要がある。
- 当該従業員が雇用されている職種(ポジション)が、本省令の別添において定められている職種に該当していること(具体的には、データベース管理者、アナリスト、ITシステムエンジニア、ソフトウェアシステムエンジニア、ITプロジェクトマネージャー、プログラマー、ITシステムプログラマーおよびコーディネーター、ITシステムプログラマー、プログラマーアシスタントまたはアナリストアシスタント、ソフトウェア製品開発エンジニア、など)
- 対象となる従業員の職種/ポジションが、コンピューター/情報関連の専門部署に属しており、雇用主の組織図において、その専門部署が「部、課、室、部門」などのくくりで強調されていること
- 対象となる従業員が、認定された高等教育機関の長期または短期の高等教育課程を修了した者に与えられる卒業証書、または大学の第1サイクルを修了した者に与えられる卒業証書、もしくは、バカロレア資格を有しており、認定された高等教育機関の課程に従い、本省令の別添にて定めるいずれかの活動を効果的に実施している者であること
- 対象となる従業員の雇用主が前会計年度に、市場での販売を目的としたコンピュータープログラムの作成活動から得た収益が区分上、収支に計上されていること
- 前述のd.において言及された雇用主の年間収入が、免除対象の従業員1名につき、最低でも1万ユーロのレイ相当額(所得が登録された各月のルーマニア国立銀行の発表した平均為替レートを適用し算出)であること
新設の会社である場合は、対象従業員が本免税措置を受けるために必要な条件d.を会社設立年度および翌年度のみ免除される。
また、2023年1月発効の省令改正により、当該免除は公共部門の従業員にも適用されることとなった。
本免除の適用を受けるために必要となる書類については、同省令の第4条に挙げられており、雇用主はこれらを準備し、監査の際には(物理的、または電子署名を含むデジタル形式で)提示する必要がある。また当該免税措置を受ける従業員の職種・ポジションへの配置は、雇用者の責任で行われる。
当該免除は、雇用契約や出向契約、または特別なステイタスに基づく給与(または給与とみなされる報酬)に対して、月単位で適用される。
エンジェル投資家(個人)への配当所得税免税
中小企業に対して資金を供給するか中小企業の株式を買収するエンジェル投資家(個人)は、配当所得税が3年間免税される(法令2015年120号)。その場合、投資を受ける中小企業は、次の条件を満たす必要がある。
- 有限会社(S.R.L.)として登録されている。
- 独立した法人である。
- 支払不能または倒産状態ではない。
- 金融、保険、コンサルティング、資本市場、賭博、不動産等の分野に関わらない業務。
付加価値税(VAT)
一般には19%であるが、次のような例外がある。
- 9%:医薬品、パン・小麦粉等、飲食料品(アルコールを除く)、調理用植物や種、農業用水、飲料水、下水処理および配水サービス(法令2018年175号)。なお、ホテルなどの宿泊施設・レストラン、ケータリングサービス(アルコールを除く)も2023年1月1日より9%となった(税法2022年16号)。
- 5%:書籍、博物館・映画館・スポーツ試合・見本市入場料、娯楽施設やレクリエーション施設への入場料、運動や精神教育を目的としたスポーツ施設の使用料(緊急政令2018年89号)。緊急政令2019年31号により5%の適用範囲が拡大され、山岳栽培やオーガニック製品、伝統的な製品などの高品質食品の配達も含まれることとなった。
また住居については2023年1月1日より、別館を除く使用可能面積が120平方メートル以下で価格が60万レイ(12万ユーロ)以下の場合、個人による購入で1回限り、評価額に対して5%のVATが適用されることになった(税法2022年16号)。
2021年2月より、事業者のVATの支払いに関する税法の一部の規定が明確化された。これは政府緊急政令2021年13号により2021年2月26日に適用されたもので、2021年1月1日以降、前年および当年度の年間売上が450万レイ(90万ユーロ)の上限を超えなかった事業者は、VAT徴収スキーム(ルーマニア語ではTVA la incasare)(注)を選択できるようになった。さらに、本規定により、条件を満たせば年内いつでもVAT徴収スキームの適用を選択することが可能となった。
(注)請求書払いで、実際の支払いを受けた後に国へVATを支払うことが認められる制度。
通常VATは対象取引の代金回収前に国に対して支払われるが、このスキームが適用されるVAT納税者は、実際の代金が回収される前にVATを国に支払う必要がなく、支払い受領後に納付することが認められる。
源泉徴収税(配当金、ロイヤルティー、利子等への国外移転にかかる課税)
源泉徴収税率は16%。配当所得税率は5%(2016年1月~)。
租税条約によりその他様々な税率が適用される。徴収対象となる基本的な所得は、配当金、ロイヤルティー、利子、賞金など。
間接税
間接税は、対象となる品目を保管、生産、または輸入する会社、法人、個人事業者などに課せられる。
EU基準に準拠した範囲で、アルコールとアルコール飲料、タバコ、エネルギー(燃料油・電気等)が対象になる。物品と税率は間接税法によって定められている。
申告は月次で翌月25日までに行うとともに、年次申告は4月30日まで。
物品税(間接税)が廃止された品目
コーヒー、プラチナ・金製の宝飾品、服飾用の天然の毛皮、ヨット、プレジャーボートまたはそのエンジン、エンジン容量が3,000立方センチメートルの自動車、武器と弾薬。
物品税が課せられる品目
- 電子たばこ(または、機器を使い吸い込むタイプのニコチン入り液体)(統計品目番号NC 2403 99 90、1ml当たり0.5レイ)
- 加熱時に吸い込める蒸気を出すたばこ製品(統計品目番号 NC 3824 90 96、1kg当たり384レイ)
物品税(間接税)について、支払い後における還付が可能となった。対象となるのは、保税倉庫に再搬入された課税物、ルーマニアで物品税を支払った物品でEU内に輸出または販売される課税物品。
地方税
- 建物税
- 個人が所有している住宅用建物および別館の場合、課税額は評価額の0.08~0.2%。課税率は地方自治体が決定する。
評価額は建物の構造(コンクリート、木造など)、タイプ(水道電気付きか否か)、面積、所在地などにより算出される。 - 個人が所有している非居住用建物の場合、課税額は評価額の0.2~1.3%。比率は地方自治体が決定する。
評価額は、過去5年間における認定評価者が作成した評価報告書などに基づく。 - 農業活動のために使用される建物の場合、課税額は評価額の0.4%。
- 法人が所有している住宅用建物の場合、課税額は評価額の0.08~0.2%。比率は地方自治体が決定する。評価額は昨年度評価額などによる。
- 法人が所有している非居住用建物の場合、課税額は評価額の0.2~1.3%。比率は地方自治体が決定する。評価額は昨年度評価額などによる。
なお、法人の場合、建物の評価額を3年ごとに更新する必要がある。過去3年以内に評価が更新されていない場合、課税率は、地方自治体によって5%まで引き上げられる(税法2015年227号第460条8)。
また、工業団地や科学技術パーク内の建物(免税されていない場合に限る)、国有の建物、スポーツ関連施設などについては、免税扱いとなる。一方、風力発電機の支柱は建物とみなされ、建物税の課税対象となった(政令2014年1210号)。
2016年には農業施設が免税され、2017年1月1日からは農業建設税が廃止された(税法2015年227号)。なお、税法2022年16号には、建物税に関する新たな税率を含めた以下の変更が提案されている。
- 住宅用建物および別館の場合、課税額は評価額の最低0.1%を適用予定
- 非居住用建物および関連する付属建物の場合、課税額は評価額の0.5%以上を適用予定
- 農業活動のために使用される建物の場合、課税額は評価額の0.4%を適用予定。
居住用および非居住用からなる建物については、50%以上を占有するエリアに基づき適用税率が決定され、建物全体の評価額に対して当該税率が課される形となる。
これらの変更が具体的にいつから導入されるかについては、政府が本変更の適用を遅らせる可能性があると発表したため、現時点では不明である。 - 個人が所有している住宅用建物および別館の場合、課税額は評価額の0.08~0.2%。課税率は地方自治体が決定する。
- 土地税
土地税は、地方自治体が定める分類に従い、土地の用途、場所、土地のランク、面積を考慮して算出され、前年度の12月31日に土地を所有している者が支払う。
土地の上に建物が存在する場合の土地税免税は廃止された。つまり、建物が存在する土地の場合、2016年1月から、土地税および建物税のいずれも支払わなければならなくなった(緊急政令2017年3号)。 - 不動産売買取引税
不動産の売買金額が45万レイを超えた部分に課税される不動産売買取引税の3%は、個人により売却された不動産にのみ適用される(緊急政令2017年3号)。税法2022年16号により、2023年1月1日より不動産売買取引税について、45万レイの課税基準が廃止された。さらに、課税対象はあらゆる種類の建物および建物のない土地となり、税率は、保有3年未満であれば不動産売買取引価格の3%、保有3年以上であれば不動産売買取引価格の1%が適用されることになった。
- 自動車税
200ccごとに区分された税額を支払う。
電気自動車や在庫品の中古車(業務使用されていない自動車)は免税される。ハイブリッドカーの場合、地方自治体が自動車税を少なくとも50%まで引き下げた。 - 広告税
広告利用者は、紙面または映像音声によるマスメディアを除き、サービス利用額(税抜)の1~3%を自治体に支払う必要がある。
広告ディスプレイの利用者は、場合により1平方メートル当たり23レイ以下、もしくは32レイ以下の税を自治体に支払う必要がある。
年2回の均等払い(3月31日まで、9月30日まで)であるが、3月31日までの一括払いした場合、最高で10%の税額割引が可能。 - 地方税の特別税
地方・産業によっては、各種の特別税が課せられる場合がある。
たとえばブカレスト市は、市内の車両通行規制および環境対策として2020年1月1日より酸素税を導入した。これにより、土日祝日を除き7~22時の時間帯は、欧州の排ガス規制に基づく「ユーロ3」未満の車両については、「大気対策エリア」に指定された市内中心部の通行が禁止された。また、「ユーロ3」の車両については、酸素税チケットの購入により前述エリアの通行が可能となる。なお、2021年以降「ユーロ4」への課税開始、通行禁止エリアの拡大等の拡充措置が予定されている。- 地方自治体は、新関税制度で定められている地方税率(建物税、土地税、自動車税、広告税等)を引き上げることができるが、引き上げ最高限度は50%。
- 2016年1月1日から、宿泊者にかかるホテル税が廃止された。
環境基金への支払義務
次の項目に該当する企業は、水・森林省環境基金行政局へ月次(品目によっては四半期または年次)ごとに翌月25日までに、各税額を支払う必要がある。
納税期日を超過した場合、1日当たり0.1%のペナルティーが加算される。
- 大気汚染物質(一酸化窒素、硫黄酸化物、水銀、鉛など)を排出している企業:1kgにつき0.02~20レイ
- 有害物質輸入・製造企業(医薬品製造用を除く):同物質価格の2%
- 鉄・非鉄廃棄物の販売企業:収益の3%
- 木工・木工製品を取り扱う企業:売上高の2%
- 鉱油輸入企業・製造企業:1キロ当たり0.3レイ(支払義務は1回のみ)
- 容器包装の供給会社:法定回収率を順守できなかった場合、法定回収率と実質回収率の差を支払う。1キロ当たり2レイ。
- タイヤ・メーカー:再生目標値を下回る部分について、1キロ当たり2レイ
- エコ税:バイオ素材以外の材料を使って買い物袋を製造するメーカーは、1袋につき0.1レイ
電子申告
中・大規模企業には、電子申告が義務付けられた。電子申告は、電子申告用ウェブサイトe-guvernare.roを通して行われる。
そのために、電子署名証書を取得する必要がある。
電子署名証書を発行している会社リストについての詳細は、デジタル化推進庁のウェブサイトを参照。
"Autoritatea pentru Digitalizarea României"
電子申告手続きについての詳細は、ルーマニア税管理庁(Agenția Națională de Administrare Fiscală:ANAF / National Agency of Fiscal Administration)のウェブサイトを参照。
"INSTRUCŢIUNI DE UTILIZARE A SERVICIULUI DE DEPUNERE A DECLARAŢIILOR ON-LINE"