為替管理制度

最終更新日:2024年01月10日

管轄官庁/中央銀行

財務省は、為替管理の最終的責任と監督権限を持ち、タイ中央銀行(BOT)は、財務大臣より為替管理の運用実務を委任されている。

外国為替管理は、1942年制定の外国為替管理法、1954年財務省省令により運用されている。財務省は、為替管理の最終的責任と監督権限を持ち、BOTは、財務大臣より為替管理の運用実務を委任されている。

為替相場管理

1997年7月に、ドルを中心とした通貨バスケット制から管理フロート制(実質的な変動相場制)へ移行。

1990年5月の国際通貨基金(IMF)8条国加盟を契機に、大幅な為替管理の緩和を進めている。このため、近隣諸国へのバーツ現金持出し枠、海外株式取得枠、海外子会社への貸出し枠などの拡大、外貨(ドル現金)持出しおよび銀行の非居住者向け貸出しの自由化など、規制緩和が進んでいる。

外国為替相場システムは、1997年7月にドルを中心としたバスケット制から管理フロート制(実質的な変動相場制)へ移行し、バーツの価値は市場要因によって決まるようになった。すなわち、内外における外国為替相場の需給により、経済のファンダメンタルズに従って通貨が変動する。
変動相場制は、通貨管理施策がより柔軟に、また効率的に行われ、さらに経済政策の実行が円滑に行われる上で効果を上げている。また、変動相場制は、通貨制度に関する国内および海外の投資家からの信頼度の増加、外国資本の流出入管理体制の改善にも貢献している。

外国為替管理法上で、海外との取引において受け取り・支払いともに指定通貨の制度はなく、決済通貨に指定はない。BOTは、対ドル相場について、前日の営業日の加重平均レートを基準相場として公表している。また、日本円をはじめとする主要通貨について、前日の営業日におけるすべての銀行の最終公表相場の単純平均を公表している。

貿易取引

標準的決済方法、信用状(L/C)の開設、輸出取引、輸入取引。
国内通貨はバーツ。

  1. 標準的決済方法
    [1]前払い送金、[2]輸入信用状、[3]取立手形(D/P、D/A)、[4]後払いによる決済があり、受け取り、支払いともに、決済通貨の指定はない。
  2. 輸入信用状(L/C)の開設
    会社は輸入信用状を自由に開設できる。信用状の開設に際しては、会社はインボイスなどの書類を添えて、銀行に輸入信用状の開設の申請を行う。商務省の輸入許可が必要な貨物については、商務省の輸入許可証を添付する。
  3. 輸出取引
    1. 輸出した企業は、一回の輸出額が100万ドル以上の場合、原則として輸出の日(船積日)から360日以内に決済しなければならない。輸出代金の支払いとして外国通貨を受領した会社は、即座に受取外国通貨をバーツもしくは外国通貨口座に入金しなければならない。
    2. 対外債務と相殺する場合、外国為替銀行は、輸出代金の受け取りの免除を承認することができる。この場合輸出者は、外国為替銀行経由所定の書式により、BOTに報告しなければならない。
  4. 輸入取引
    1. 輸入者は、輸入決済に充てるため、外貨預金口座から、自由に外貨を引き出すことができる。
    2. 輸入者は、L/Cの発行を当局の許可なく自由に行うことができる。
    3. 輸入者は、輸入決済時(L/Cの場合は開設時)に、外国為替銀行に取引の目的を通知し、インボイス等の取引帳票およびIDを提出しなければならない。

貿易外取引

仕向送金(支払い)、被仕向送金(受け取り)、外国通貨の受け取り。

  1. 仕向送金(支払い)
    1. 貿易外取引(保険、運輸など役務の提供に関する取引)については、バーツ建て・外貨建てとも原則自由となっているが、一部の取引(外国におけるFX取引の支払いや先物取引の支払いなど)についてはBOTの事前承認が必要とされる。また、仕向送金が20万ドル以上の場合、外国為替銀行に対し、送金者のIDや為替取引の目的を通知することと、BOTが必要とする関連書類の提出も必要。
    2. ロイヤルティーおよび配当金の送金、借入金の返済、利益などの返還(清算に伴う資本金の返還、配当金・減資金の返還)などには、BOTの事前承認は不要。
    3. 貸付金の送金
      タイ国外に居住する者への貸付金の送金には、BOTの事前承認は不要。また、2022月5月13日付施行の改正により、一回当たりの送金額の上限も撤廃された。ただし、一回当たりの送金額が20万ドル以上の場合、外国為替銀行に対して送金者のIDや為替取引の目的を示す書類を提出することが必要。
      海外送金時の取引帳票などの書類提出義務については、タイ国内で登録された法人で、BOTの要件(明確な外為リスクマネジメントポリシーを有すること、適切なガバナンスおよび内部統制体制を有すること、ならびに3年間に合計15億米ドル以上の国際取引を行うこと)を充たした者(適格会社)に対して、免除の措置がある。かかる適格会社と認められた場合、商品の支払い、貸付の返済、利益送金および海外不動産の購入などにおいて、取引帳票やIDを取引銀行に提出する必要がなくなる。
    4. 投資資金の送金
      1. 海外関連会社への投資資金の送金:タイ企業が株式を10%以上保有する外国企業または外国の関連会社への投資は、BOTの事前承認は不要。ただし、外国為替銀行に対し、送金者のIDや為替取引の目的を通知することが必要。
      2. 海外の証券取得(投資目的):海外の証券投資資金の送金には、BOTの事前承認が必要。ただし、証券ブローカーを通じて行う一定の要件を充たす投資については、BOTの承認が不要となる。
      3. 海外の不動産取得:海外の不動産もしくは不動産のリース権を取得する資金、または海外の不動産装飾の費用の送金には、外国為替銀行に対して、取引の目的を通知し、インボイスなどの取引帳票およびIDを提出しなければならない。また、2022月5月13日付施行の改正により、送金額にかかわらずBOTの事前承認は不要となった。
    5. 取引との関連や理由のない外国宛送金は、年間5万ドルが上限とされている。
  2. 被仕向送金(受け取り)
    バーツでの外国からの受け取りには制限はない。入金は公認銀行または外貨預金口座を通じて行うことができる。
  3. 外国通貨の受け取り
    100万ドル以上の外貨を受け取った会社は、その外貨を取引日から360日以内にバーツ建てまたは外貨建て口座に預けなければならない。ただし、その規定の免除をBOTに請求することができる。

タイ通貨または外貨の税関申告およびBOT許可

マネーロンダリング防止およびテロリズムへの資金流入対策に関する国際基準遵守のため、タイ銀行は、次のとおり追加の外為規制を設けた。

  1. タイ出入国の際に、45万バーツを超えるタイ通貨または無記名の譲渡可能証券を所持している者は、タイ税関に申告しなければならない。
  2. タイ出入国の際に、1万5,000ドルを超える外貨または無記名の譲渡可能証券を所持している者は、タイ税関に申告しなければならない。
  3. タイ出入国の際に所持するタイ通貨と外貨の合計額が45万バーツ相当額を超える場合は、タイ税関に申告しなければならない。
  4. タイと国境を接する国(ベトナムおよび中国の雲南省を含む)に旅行する者が200万超のタイバーツを持ち出す場合、その他の国の場合は5万超のタイバーツを持ち出す場合には、BOTから許可を得なければならない。

資本取引

タイにおける外国投資は、直接投資、資産運用投資のいずれも自由である。非居住者は、居住者に対する外貨での貸付に制限はない。資本や貸付は、自由に国内に持ち込めるが、定められた期間内に、公認銀行または外貨預金口座に入金しなければならない。タイ投資委員会(BOI)が付与した奨励特典付きの外国投資には、様々な奨励策や特別な恩典が与えられる。投資資金の本国送金や海外からの外貨建ての借入金返済は、証明書類の提出を条件に、自由に送金できる。

関連法

タイにおける外国為替管理に関する法令は、1942年の外国為替管理法とそれに基づく省令から成る。運用に関する詳細は、財務省告示、BOT告示・命令により定められている。

その他

特になし。