外資に関する規制

最終更新日:2023年11月01日

規制業種・禁止業種

外国資本の投資が規制・禁止される業種は、1991年外国投資法(共和国法第7042号、1996年改正)の規定に従い、必要に応じ、定期的に改定される『ネガティブリスト』に記載される。

ネガティブリスト

ネガティブリストはリストAとリストBに分類される。

リストA:外国人による投資・所有が憲法および法律により禁止・制限されている業種。
リストB:安全保障、防衛、公衆衛生および公序良俗に対する脅威、中小企業の保護を理由として、外国人による投資・所有が制限される業種(外国資本による出資比率を40%以下に制限)。

2022年6月に改定された第12次ネガティブリストはPDFファイル参照(第12次が2023年11月時点での最新版)。
ジェトロ:フィリピン 規制業種・禁止業種『第12次ネガティブリスト』PDFファイル(219KB)

フィリピン現地法人の外国資本比率規制

フィリピンにおける現地法人には、業種により外国資本比率規制がある。この外国資本比率を計算する際、従前までは、総発行株式数をベースにした外国資本比率の算出が認められてきた。すなわち、フィリピン人向けに議決権のない優先株を発行することにより、議決権を与えずに保有比率のみを満たすことが可能であった。しかし、2013年5月20日、フィリピン証券取引委員会(SEC)はガイドライン最終版(SEC Memorandum Circular No. 8)を発行し、議決権の有無にかかわらずすべての発行済み株式総数に対してフィリピン保有比率を満たすことを求めた。このガイドラインの骨子は次のとおり。

  1. フィリピン保有比率の算出には、次のa.b.両方の株式数において条件を満たす必要がある。
    1. 取締役(Director)選任のための議決権つき発行済み株式総数
    2. 取締役(Director)選任のための議決権つきおよび議決権なし発行済み株式総数
  2. 会社秘書役(Corporate Secretary)は、a.b.の条件を満たしているかどうか、常にモニターすることが求められる。
  3. 1. 2.の条件を満たさない企業には、SEC Memorandum Circular No.8の発効日より1年間の猶予が与えられ、その期間内に条件を満たすことが求められる。SECは、例外として猶予期間を延長する可能性があるが、フィリピン保有比率を満たさない企業および企業役員については、1991年外国投資法(共和国法第7042号、1996年改正)において罰則が規定されている。

出資比率

ネガティブリストでは外資出資比率が100%禁止、25%・30%・40%以下に制限されている業種がそれぞれ記載されている。このネガティブリストの出資規制業種に該当しなければ外国資本の出資比率の上限規制はない(100%外資可能)。ただし建設業など、免許の取得が別途必要な業種・業界の場合、外資制限が課されるケースもあるため、別途事前確認が必要である。

2013年3月20日、SECは、覚書回覧第8-2013号を発行した。同回覧は、憲法、外国投資法(Foreign Investment Act:FIA)その他の現行法によって、全部または一部がフィリピン人に限定されているような特定領域分野に従事するすべての会社に適用される。本回覧は、憲法を遵守し、会社の法的所有権者であるための必要条件を定めることを目的としている。ここでは、特定の会社に必要なフィリピン人の資本比率は、取締役会での議決権のある発行済み株式の合計数と、取締役会で議決権の有無を問わない発行済み株式の合計数の両方に適用されるとした。現行法が適用されている企業で本規定に従っていない場合、本回覧の発行から1年の移行期間が与えられる。本規定に従わない個人または会社の役員は、1991年外国投資法第14節の規定により罰せられる。

2013年8月8日、SECは、覚書回覧第14-2013号を発行した。本回覧は、払込資本金の支払いで不動産を使用する場合の先のガイドラインを改定するもの。ここでは、会社設立の際の払込資本金の支払いが土地による場合、土地の譲渡を受けた者の名で所有者移転証明を、申請が受理された日から120日以内にSECに提出しなければならないとした。払込資本金の支払いが土地以外の不動産による場合には、譲渡を受けた者の名で、登録移転証明を、申請が受理された日から90日以内にSECに提出しなければならないとした。

共和国法第11659号の施行規則(公共サービス法(PSA)の改正、2023年3月20日)により、2023年4月1日以降、鉄道、航空、高速道路、電気通信などの特定の公共事業については、外資出資率を100%とすることが可能となる。なお、従前では外資出資比率は40%に制限されていた。
ただし、配電、送電、海運、上下水道、公共事業用車両といった公共事業は国家安全保障上の重要インフラとみなされ、外資出資率は引き続き40%に制限される。

エネルギー省(DOE)は、通達(第11-0034号、2022年12月8日)により、太陽光、風力、水力、海洋・潮流エネルギー資源の探索、開発、利用において、外国人投資家は100%の出資が認められると規定している。エネルギー省は、司法省(DOJ)に見解を求め、司法省(DOJ)は、司法省意見書第21号(2022年9月29日)により、フィリピンにおける再生可能エネルギー事業について、外資出資比率100%を認めるべきであるとの見解を示した。このように2008年再生可能エネルギー法(共和国法第9513号)施行規則において、再生可能エネルギーについて40%の外資出資率の規制が定められているところ、司法省(DOJ)とエネルギー省(DOE)は、太陽光、風力、水力、海洋・潮流エネルギーの探索・開発・利用は、40%の外資出資率の規制の対象にはならないとの見解を示している。

外国企業の土地所有の可否

外国企業、および外国人による土地の所有は認められていない。

1987年憲法のもとで、土地の所有はフィリピン人のほか、フィリピン人が資本の最低60%を所有する株式会社などに限定されている。

一方、外国人投資家は、投資目的のみに利用される土地をリースすることができ、リース期間は最長50年、更新は1回限りの25年である。また、外国人投資家が投資のみを利用目的としない土地をリースする場合、リース契約の期間は最長25年、更新は1回限りの25年である。

金融機関の不良債権を処理するための金融機関の戦略的移転法(FIST法、共和国法第11523号、2021年2月16日付け承認)において、金融機関の不良債権等への投資、取得等できるとされている金融機関の戦略的移転法人(FIST法人)は、株式会社であるところ、1人法人では認められないとされている。

資本金に関する規制

フィリピン会社法上、株式会社に課せられていた会社設立時の資本要件である、授権資本(authorized capital)の最低25%相当の株式を引き受け(subscribed capital)、引受株式の最低25%を払い込む(paid-up capital)という要件は撤廃され(共和国法第11232号、改正フィリピン会社法、2019年2月23日施行)、会社設立に際しての資本要件はなくなった。ただし、増資の場面においては従来の25%の資本要件は依然として課せられている。
外国資本が40%を超える会社やスタートアップ等についての最低払込資本要件などは、以下の詳細欄を参照。
また、銀行など特定事業に従事する株式会社には、当該事業を規制する特別法や施行細則に従い、高額の最低払込資本要件が適用される。主な業種とその最低払込資本金は後述のとおり。

最低払込資本要件

外国資本が40%を超える会社については、国内市場向け企業の場合、最低払込資本要件は20万米ドル。ただし、以下a.ないしc.のいずれかの条件を満たす場合、最低払込資本要件は10万米ドルとする。なお、この資本金要件は、革新的新興企業法(Innovative Startup Act)の下で定義されるスタートアップやスタートアップ支援機関新興企業支援者にも適用される。また、外国人を雇用し、財政上の優遇措置を享受する登録外資系企業は、フィリピン人への技術または技能の移転を確実にするため、研修または技術開発プログラムを実施しなければならず、その遵守は労働雇用省により定期的に監視される(共和国法第11647号(改正外国投資法)、2022年3月2日)。

  1. 先進技術(科学技術省が決定する)を利用していること。
  2. 革新的新興企業法(Innovative Startup Act)に基づき、「スタートアップ」または「スタートアップ支援機関」として承認されていること。
  3. フィリピン人従業員を15人以上雇用していること(従来50人とされていた)。

銀行

フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas:BSP)による、銀行規制マニュアル(2018年12月)によると、銀行の資本金については次のとおり定められている。

  1. ユニバーサルバンク:30億~200億ペソ
  2. 商業銀行:20億~150億ペソ
  3. 貯蓄銀行
    1. 本店がマニラ首都圏内:5億~20億ペソ
    2. 本店がマニラ首都圏外:2億~8億ペソ
  4. 地方銀行(本店の所在地による):1,000万~2億ペソ
  5. デジタル銀行:10億ペソ以上

2013年12月13日、フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas:BSP)は、外国銀行の支店の資本について変更を行う回覧第822-2013を発行した。これにより、銀行規定マニュアル小項目X105.4は、外国銀行の子会社や支店がフィリピンに設立されるときに必要となる資本要件について変更がなされた。

外国銀行が子会社を設立する場合には、同種のフィリピン国内銀行と同額の資本金が必要となる。一方、外国銀行の支店は、同じ最低資本金が求められるも、資本比率については、同種のフィリピン国内銀行に適用される資本比率を考慮する。支店設立を認められた外国銀行は、同種の国内銀行に必要とされる資本金を下回らない額の資本金を永続の資本金として割当てなければならない。永続割当の資本金はフィリピン国内に送金され、ペソに交換されなければならないとされている。

同回覧はまた、正味手数料の計算基準、金額に対する定められた正味手数料の率、外国銀行支店のリスクベースの資本金額、資本金積み上げプログラムのルール、追加的に支店を設立する際の要件、支店開設要件、譲渡可能長期積立て預金証書発行のガイドライン、銀行が投資することのできる株式資本の制限についても規定している。

2014年7月15日、外国銀行の進出を完全に認める、共和国法第7721号を改正する共和国法第10641号が公布された。同法は、外国人に銀行の100%の所有を認め、財政的に健全な外国の銀行が、フィリピンに進出しやすくすることを目的とした。同法はまた、フィリピンに設立される外国銀行の子会社が、同種の国内銀行と同等の恩典が受けられるようにした。
従来法では、外国銀行がフィリピンの銀行システム下で営業するためには、現存するフィリピンの銀行から議決権株式を取得、購入または所有する必要があったが、その取得等は60%までに制限されていた。フィリピン法に基づいて新しい子会社を設立することも許されていたが、この場合も所有する議決権株式は上限60%に制限されていた。このほか完全な銀行の権限を有する支店の設立が可能であった。

共和国法第10641号では、外国銀行は、次のいずれの形態でも、フィリピンの銀行システム下で営業することができる。

  • 現存するフィリピンの銀行から議決権株式を100%まで取得、購入または所有
  • 100%までの議決権株式を所有し、フィリピン法に基づいて新しい子会社を設立
  • 完全な銀行の権限を有する支店を設立

営業が認可された外国銀行は、同種のフィリピンの銀行と同じ機能を有し、同等の恩典を享受し、同じ制限が課される。
外国銀行支店の単独の借り受け限度額は、国内銀行の規定に準ずる。

以上のいずれかの形態によりフィリピンで営業を行うことを認可された外国銀行は、抵当に入っている不動産の入札や競売に参加することができ、実行、その他の手続きが可能である。抵当権の設定により入札や競売で取得した財産は、実際に所有を始めてから5年を超えて所有することはできない。いかなる場合でも、外国銀行間で財産を譲渡し合うことはできない。外国銀行が競売で落札した場合には、適用できる法律の下で、借受人の権利を損なうことなく、5年の間に、資格あるフィリピン人に対し、譲渡する権利を持つ。外国銀行が5年以内に譲渡しなかった場合は、資格あるフィリピン人に譲渡されるまでの間、年あたり競売落札時価格の0.5%の罰金が科される。

2020年11月26日付けで、フィリピン中央銀行は、デジタル銀行を銀行の類型に導入することを承認し、同年12月に回覧第1105-2020によりデジタル銀行設立のガイドラインを定めた。なお、同回覧によるとデジタル銀行とは、デジタルプラットフォームおよび/または電子的手段を通じて端末間で処理される金融商品およびサービスを提供し、物理的な支店・出張所またはブランチライトユニットを持たない金融商品およびサービスを提供するものとされている。

小売業

共和国法第11595号(改正小売業自由化法)では、以下のように規定されている。

  1. 外資の場合、払込資本金は2,500万ペソ以上とする。
  2. 複数の実店舗で小売業を営む外資は、1店舗当たり最低1,000万ペソの投資を行う必要がある。

なお、小売業自由化法施行規則によると、払込資本金は、1店舗当たりの投資額要件を満たすために、資産の購入に使用することができる。また、「店舗」とは、フィリピン国内で設置された小売ベースで商品を販売する物理的な店舗をいう。
最低払込資本の実際の使用については、証券取引委員会(SEC)または貿易産業省(DTI)が監視するものとし、これらの機関および国家経済開発庁(NEDA)により、最低払込資本金額は3年ごとに見直される。

その他規制

保険会社の最低資本金額、年次報告書提出義務、財務諸表提出期限およびコーポレート・ガバナンス法(金融機関)などの規制がある。

  1. 生命保険、非生命保険、再保険会社の最低資本金額の変更について
  2. 年次報告書提出義務について
  3. 財務諸表提出期限の変更について
  4. コーポレート・ガバナンス法(金融機関)

ジェトロ:フィリピン その他規制 詳細PDFファイル(376KB)