外資に関する規制

最終更新日:2023年12月15日

規制業種・禁止業種

一般に、国家権益に関わる事業、すなわち水、エネルギー・電力供給、放送、防衛、保安などに関し、マレーシア政府は、外資出資比率の上限を30%または49%と規定している。

出資比率

原則、民間企業に対する外国資本の出資比率は、所轄官庁のライセンスや許認可に付与された出資条件によって決まる。製造業、流通・サービス業では、一部を除き100%外資が認められている。

  1. 製造業

    製造業に関しては、マレーシア投資開発庁(Malaysia Investment Development Authority:MIDA)に申請すれば、投資貿易産業省(Ministry of Investment, Trade and Industry:MITI)より、工業調整法に基づく製造ライセンスが発行される。MIDAのウェブサイトから、各種証明書発行に関する申請や書式が入手できる。
    2023年4月12日より、MITIは、国際貿易産業省(Ministry of International Trade and Industry)から投資貿易産業省(Ministry of Investment, Trade and Industry)に名称が変更された。

    マレーシア投資開発庁(MIDA):

    ほとんどの業種で100%外資が認められており、自動車の製造についても、2010年1月1日から実施された自動車政策により、自動車組み立てなどの一部を除いて資本条件がなくなった。緩和政策実施以前に、製造業ライセンスを取得した製造業者は、進出時に課せられた出資比率と輸出比率の諸条件は引き続き有効とされているが、このような既存の条件についても、MITIはケースに応じた外国資本比率の引き上げなどを認めている。また、一部の事業を除き、事業拡張と多角化に向けた投資、すなわち追加増資分については、100%の外国資本保有が認められる。

  2. 運輸、教育、石油関連製品の販売など、各関係法令に基づくライセンスが必要な業種は、所轄官庁が資本条件を定める。
  3. 金融機関

    金融機関については、2013年金融サービス法の施行により外資規制が撤廃された。ただし、5%以上の株式を取得する場合には、外資・内資にかかわらず、マレーシア中央銀行の事前承認が必要とされる。つまり、外資に対する法的規制はなくなったものの、金融分野における外資による企業の設立や資本参加の可否に関しては、マレーシア中央銀行に判断が委ねられることとなった。

    マレーシア中央銀行:2013年金融サービス法 "Financial Services Act 2013PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(824KB)"

  4. その他流通・サービス業など

    現在の国内取引・生活費省(Ministry of Domestic Trade and Cost of Living)の前身である国内取引・協同組合・消費者省(Ministry of Domestic Trade, Co-operatives & Consumerism:MDTCC)は、2010年5月12日、政府の資本規制緩和策を反映した「流通取引・サービスへの外国資本参入に関するガイドライン(Guidelines on Foreign Participation in the Distributive Trade Services Malaysia、MDTCCガイドライン)」を発行した。その後、2020年2月にガイドラインの改訂版が発行され、コンビニエンスストアの外資参入禁止が緩和された。同ガイドラインが適用される流通業の範囲は広く、販売会社やサービス業が広くカバーされる。2020年2月の改訂ガイドラインによれば、外資の参入については、a.資本規制が設けられていない(つまり、100%外資による参入が可能である)業種、b.外資の参入が可能だが、資本規制がある業種、c.外資が参入できない業種、の3カテゴリーに分かれる。

    1. 資本規制が設けられていない業種(ただし、最低資本金条件などはあり)
      • デパートメントストア*
      • スーパーストア**
      • 専門店
      • 流通センター(Eコマースのフルフィルメントを含む)
      • その他の流通形態

      *デパートメントストアは、1,000平方メートル以上または総面積の15%以上(最大でも5,000平方メートル未満)のスーパーマーケットを持つことができる。
      **スーパーストアは、売場面積が3,000平方メートル以上5,000平方メートル未満で、多様な消費財を中心に販売するセルフサービス方式の店舗である。特別市または一般市では、1,000平方メートル以上での出店も認められる。

    2. 外資の参入が可能だが資本規制がある業種
      • ハイパーマーケット*
      • コンビニエンスストア**

      *ハイパーマーケットは、売場面積が5,000平方メートル以上で、多様な消費財を中心に販売するセルフサービス方式の店舗である。資本の30%以上をブミプトラまたはマレー系が保有しなければならない。
      **コンビニエンスストアは、24時間営業で、回転の速い品目を販売する、180平方メートル以下の店舗である。外資の保有は30%まで可能で、また、資本の30%以上はブミプトラまたはマレー系が保有しなければならない。外資はフランチャイズ方式で参入しなければならないが、全体の30%までは直営店が認められる。

    3. 外資が参入できない業種
      • スーパーマーケット/ミニマーケット(販売フロア面積が3,000平方メートル未満)
      • 食料品店/一般販売店
      • 新聞販売店、雑貨品の販売店
      • 薬局(伝統的なハーブや漢方薬を取り扱う薬局)
      • ガソリンスタンド
      • 常設の市場(ウェットマーケット)や歩道店舗
      • 国家戦略的利益に関与する事業
      • 布地屋、飲食店(高級店でない)、宝石店など

    国内取引・協同組合・消費者省:MDTCC(現:国内取引・生活費省)ガイドライン "GUIDELINES ON FOREIGN PARTICIPATION IN DISTRIBUTIVE TRADE SERVICES MALAYSIAPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(0.98MB)"

  5. このほか、次のようなステータスを取得した会社には、100%外資が認められている。
    1. マレーシア・デジタル(Malaysia Digital:MD)ステータス会社。
    2. イスカンダル地域開発庁(Iskandar Regional Development Authority:IRDA)によりステータスを承認された会社で、当該開発地域内で事業を行う会社。
    3. 政府により定められた開発地域において、管轄する州当局によりステータスを承認された会社で、当該開発地域内で事業を行う会社。
    4. マレーシア国際イスラム金融センター(Malaysian International Islamic Financial Centre:MIFC)の事務局から承認を得た会社。
    5. 投資貿易産業省(MITI)、財務省(Ministry of Finance:MOF)、その他の省により、国際調達センター(International Procurement Centre:IPC)、経営統括本部(Operational Head Quarters:OHQ)、「プリンシパル・ハブ」などのステータスを承認された会社(2015年5月1日をもって、IPCとOHQの新規申請の受付は停止され、「プリンシパル・ハブ」というステータスおよび優遇措置に置き換えられた)。
      「プリンシパル・ハブ」の詳細については、「外資に関する奨励」の項を参照。2015年4月30日までに取得された既存のIPCおよびOHQについては、承認期間中は、そのままステータスと優遇措置が継続して適用される。

マレーシア政府は、経済成長の牽引役としてのサービス産業の活性化と成長を重要視しており、外資の誘致にも貢献するとして、段階的にサービス産業のサブセクターが自由化されている。自由化されているセクターについては、次のウェブサイトを参照。
投資貿易産業省(MITI):Autonomous Liberalisation外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

外国企業の土地所有の可否

マレーシア国内の土地は州によって管轄されており、土地・不動産を所有するためには、州当局の認可を得て土地の登記を行う必要がある。住宅に関しては、外国人個人による登記も認められているが、商業物件、工業用地、農業用地については、現地法人を設立して登記しなければならない。

不動産の取得に関しては、首相府傘下の経済企画庁(Economic Planning Unit:EPU)が2014年3月にガイドラインを発行している。なお、2022年12月23日、経済企画庁(EPU)は解散し、EPUの役割と責任は経済省(Ministry of Economy)に引き継がれている。
GUIDELINE ON THE ACQUISITION OF PROPERTIES(マレー語のみ)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(261KB)(現行2014年3月発行)

当該ガイドラインの概要は、次のとおり。

  1. EPUの承認と取得条件を満たす必要がある不動産取得(居住用物件以外)
    1. 価値が2,000万リンギ以上の不動産を直接取得する場合で、その結果、ブミプトラ関係者(ブミプトラ個人、ブミプトラが支配する現地会社)および/または政府機関が保有する不動産の所有権が希釈化する場合。
    2. 資産総額の50%超の不動産を所有する会社の非ブミプトラ関係者(非ブミプトラ個人、非ブミプトラが支配する現地会社)による株式取得を通して不動産を間接的に取得した結果、ブミプトラ関係者および/または政府機関の所有する会社の支配が変化することになり、かつ不動産の価値が2,000万リンギを超える場合。
      企業による不動産取得の条件は、次のとおり。
      1. ブミプトラ資本が30%以上
      2. 最低払込資本金:
        • マレーシア人が50%超所有する現地会社の場合:10万リンギ
        • 外国人、外国の会社が50%超所有する現地会社の場合:25万リンギ
  2. 最低取得額
    2014年3月1日より、外国関係者(外国人または外資50%超の現地法人)による不動産取引については、最低取得額が50万リンギから100万リンギに引き上げられた。

    外国関係者による商業物件、工業用地、農業用地の取得については、外資50%超の現地法人による取得が可能であり、EPUの承認は不要だが、州政府やその他の所轄官庁による認可は必要。
    農業用地の取得については、取得額が100万リンギ以上、もしくは5エーカー以上の面積の物件で、次の目的での使用に制限されている。

    1. 商業規模での農業
    2. アグロ・ツーリズム・プロジェクト
    3. 輸出用の農業、アグロベースの工業活動

    外国関係者による100万リンギ以上の居住用物件の取得については、外国人または外資50%超の現地法人による取得が可能であり、EPUの承認は不要だが、州政府による認可は必要。
    なお、外資50%超の現地法人が従業員寮の物件を取得する際は、最低取得額が1戸当たり10万リンギとなる。

  3. その他

    製造会社による工業用地の取得や「マレーシア・マイ・セカンドホームプログラム」の下での滞在者用住居に対しては、EPUガイドラインの規定が免除されている。

    土地取得にかかる申請先は土地登記局を含む各州の当局であるが、EPUガイドラインが適用される場合は、EPUにも申請しなければならない。

資本金に関する規制

最低払込資本金は、事業内容や必要な許認可に応じて定められている。製造ライセンス取得会社では、株主資本250万リンギ、流通・サービス取引では100万リンギである。

  1. 製造業部門
    250万リンギ以上の株主資本を有するか、75人以上の常勤従業員を雇用する製造業に対しては、工業調整法によって製造業ライセンスの取得が義務付けられている。従って、新規に製造会社を立ち上げた場合、払込資本金が250万リンギ以上であれば、製造ライセンスの取得が必要となる。既存の製造会社でも、払込資本金と剰余金を合わせて250万リンギ以上になる場合は、同様に製造ライセンスが必要となる。
    株主資本が250万リンギに満たない、かつ常勤従業員75人未満の製造会社は、「製造ライセンス免除の確認書」をMIDAに申請し、取得する。
    製造ライセンスに係るMIDAのガイドラインによると、製造ライセンス取得の条件として、以下の条件が設けられている。
    1. 従業員1人当たりの固定資産投資額(CIPE)が14万リンギ以上であること
    2. フルタイムの従業員の80%以上がマレーシア人であること(MITIは従来、製造ライセンスの対象企業に対して同要件を2022年12月31日までに充足するように要請していたが、充足期限を2年間猶予すると発表した。2022年7月22日付ジェトロの記事「製造業ライセンスのマレーシア人雇用比率の要件充足を2年間猶予」参照)
    3. フルタイムの従業員の25%以上は学位またはディプロマを持つ管理職、技術職、監督職のいずれかであること、または、製品の付加価値が40%以上であること
    4. 製造プロジェクトが、国の経済・社会の目的と合致し、マレーシアにおける製造業の秩序ある発展を促進するものであること

    MIDA:GUIDELINE ON APPLICATION FOR E-MANUFACTURING LICENCE外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(273KB)"

  2. 非製造業部門
    前述の「流通取引・サービスへの外国資本参入に関するMDTCCガイドライン」の対象業種の会社に関しては、最低払込資本金は100万リンギである。
    また、建設業開発庁(Construction Industry Development Board:CIDB)にForeign Contractorとして登録される建設会社(外国法人のマレーシア支店または外資30%超の現地法人)に関しては、2015年4月1日以降、最低資本が75万リンギとなった。
  3. プリンシパル・ハブ会社
    MIDAへのプリンシパル・ハブ・インセンティブの申請に必要な最低払込資本金は、250万リンギである。
  4. 入国管理局による最低資本金の要件

    入国管理局に雇用パスなどの認可を申請する会社の最低資本金は、次のとおり。

    1. 100%ローカル(マレーシア)資本の会社:25万リンギ
    2. ローカルと外資による合弁企業:35万リンギ
    3. 100%外国資本の会社:50万リンギ
    4. 資本の51%以上を外資が占める流通・サービス取引会社:100万リンギ

    入国管理局(Expatriate Services Division)発行のガイドブック "ESD Online Guidebook V4 2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(8.5MB)"

その他規制

2010年競争法(Competition Act 2010)

2010年6月に公布され、2012年1月1日に施行された2010年競争法(Competition Act 2010)では、カルテルなどの反競争的協定や支配的地位の濫用が禁止されている。

マレーシア競争委員会:2010年競争法(Competition Act 2010PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(318KB)

2011年4月1日に設置されたマレーシア競争委員会(MyCC)は、競争法の取締りや同法に関するあらゆる事項に関し、政府・事業者・消費者へのアドバイスを行う。

問い合わせ先:
マレーシア競争委員会(Malaysian Competition Commission:MyCC外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
E-mail:enquiries@mycc.gov.my