外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用

最終更新日:2023年11月09日

外国人就業規制

ミャンマー投資委員会(MIC)認可企業、または経済特区法に基づき設立された企業の場合、ミャンマー国民の雇用義務(外国投資法第24条(a)、経済特区法第75条)と熟練技術を必要としない職種への雇用規制を負うとされてきたが、2016年10月に成立した投資法では、熟練技術を必要とする業種においては、外国投資法に規定されていた具体的な雇用比率は撤廃されている。

  1. MIC認可企業、または経済特区法に基づいて設立した企業の場合
    1. 手続きの窓口
      経済特区法に基づき設立された企業の場合:経済特区のワンストップサービスセンター(One Stop Service Center:OSSC)に設置される労働事務所の駐在所にて、就労許可を取得することができる。
    2. 熟練技術を必要とする業種におけるミャンマー人の雇用割合
      経済特区法に基づいて設立した企業に対しては次のとおり義務付けられており、ミャンマー人の雇用比率は、当該規制の範囲内でなければならない(経済特区法第75条)。
      • 事業開始から2年で25%以上
      • 次の2年(事業開始から4年)で50%以上
      • さらに次の2年(事業開始から6年)で75%以上
    3. その他
      熟練技術を必要としない職種では、外国人を雇用することはできず、ミャンマー国民のみを雇用しなければならない(経済特区法第74条、投資法第51条(c))。
  2. 会社法のみに基づき設立された企業の場合
    外国人の雇用比率に関する規制、および技術を必要としない職種における規制は、法律上規定されていない。しかし、明文化はされてないものの、在留許可取得時に一定人数のミャンマー国民の雇用を求められることがある。

在留許可

70日間有効のビジネス(商用)ビザを取得のうえ、入国後に在留許可(Stay Permit)を取得する(延長可能)。3カ月以上滞在する外国人は、外国人登録が必要である。

商用ビザの取得方法

  1. 大使館での申請:商用ビザ(シングル・マルチともに)申請可。
  2. e-Visaでの申請:商用ビザ(シングルのみ)申請可。

1.と2.ともにMyanma Insurance以外の企業が提供する保険への加入も提示可。

商用ビザ取得に必要な書類

  1. パスポートの原本
  2. パスポートのコピー(大使館での申請時のみ必要)
  3. カラー写真1枚
  4. 申請書(大使館での申請時のみ必要)
  5. 招待状
  6. 会社登記
  7. 会社概要(e-Visa申請時のみ必要)
  8. 海外旅行損害保険(新型コロナウイルス関連の費用補償を含むことが条件)
  9. 納税記録(大使館での申請時のみ必要)
  10. マルチビザの適用する詳細な理由(マルチビザ申請時のみ必要)
  11. 納税証明書(ビジネスパスポートとジョブパスポート)
  12. ミャンマー入国時に必要な書類
  13. パスポート
  14. ビザ申請時に利用した新型コロナ治療補償を含む医療保険(Myanma Insurance等)への加入書類
  15. その他、ビザ取得時に使用した書類等

ミャンマーから日本への渡航時の注意点

  • ワクチンの接種証明書(3回以上)、または新型コロナウイルスRT-PCR陰性証明書

なお、帰国便搭乗前のPCR検査で陽性確認の場合は、10日間の隔離が必要となり、隔離明けのPCR再検査で陰性であれば帰国便に搭乗可。
【推奨】日本到着予定時間の6時間前までにVisit Japan Webにて事前登録を行うことで入国手続き(検疫、入国審査、税関申告、免税購入)が簡略化される。

在留許可の取得方法

長期滞在する場合、一般に在留許可を取得しなければならないが、以下の手順にて投資企業管理局(DICA)より推薦書を入手する必要がある。

  1. 投資企業管理局告知により、2020年8月1日よりビザ延長手続きがオンライン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます化された。在留許可(Stay Permit)の取得手続きの場合も本オンライン手続きが適用される。2022年9月14日の告知によると、必要書類や推薦状の発給要件は以下のとおりである。
    1. 最新のcompany extract(会社登記の内容の写し)
    2. 会社の現在の事業内容を証明する書類(免許証、許可証、政府機関からの証明書、関係者との取引契約書など)
    3. 外国人に関する、会社の取締役会の宣言書
    4. 会社の2020~2021年度分の税務申告書または監査報告書。2021~2022年度、2022~2023年度の確定申告書、または証明書、過去の所得税納税証明書(該当する場合)
    5. 外国人の履歴書(6カ月以内に撮影した写真(2インチ×1.5インチ)、学歴、職歴、本籍地(国内・国外)、住所、電話番号)
    6. 外国人の職務権限、職務内容(Terms of Reference:TOR)
    7. 雇用契約書、外国人の学歴証明書/資格証明書
    8. 外国人の居住先が変更した場合、その住所
    9. 外国人が2回目の延長を申請する場合、在職期間中の所得税の納税証明書
    10. 会社の従業員数、雇用状況(外国人/市民)、氏名、パスポート番号、国民登録証番号、電話番号
    11. 外国人の家族(妻・夫・息子・娘)について、親族関係を証明する書類

    なお、申請について以下の要件を満たさなければならない。

    • 外国人の在留許可延長のため推薦状発給を申請する会社は、DICA登録期間が1年以上の会社でなければならない。
    • 会社法(2017年施行)を順守しなかったためにDICA登録が停止または抹消された会社は、1年間の法令順守期間の後にのみ、在留許可延長のための推薦状発給申請を行うことができる。
    • 会社において在留許可延長のため推薦状発給を希望する外国人(以下、外国人)は、在留許可有効期限満了の90~120日前までに申請する必要がある。その際、パスポートの有効期限は6カ月以上必要。
    • 投資法に基づきミャンマー投資委員会(MIC)の事業認可、エンドースメントを受けた企業は、同企業専用の申請サイトであるMOVAS外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで在留期間延長のための推薦状発給を申請すること。DICA企業専用の申請サイトで申請しても受理されない。
  2. 投資企業管理局で取得した推薦書を添えて、労働入国管理人口省入国管理局(Department of Immigration, Ministry of Immigration and Population)に在留許可、数次ビザの発給を申請する。
    申請の際にForm C(外国人登録に関するReport of Arrival)と呼ばれる書類を提出する必要があるため留意が必要である。
    また、3カ月以上滞在する外国人は、外国人登録を入国管理局で行い、外国人登録証(Foreigner Registration Certificate:FRC)を入手する必要がある。
    なお、取締役または秘書役が人事異動等で交替する場合は、MyCOにての変更手続きを行う必要がある。

これらの在留許可および数次ビザの有効期間に関して、以前は初回申請時から1年間有効なビザが発行されていたが、突如、初回申請時は3カ月間有効、第2回目は6カ月間有効、第3回目以降で1年間有効なビザが発行される取り扱いに変わった。その後も、初回申請時から1年間有効なビザが発行される取り扱いに戻った後、6カ月間有効なビザが発行される取り扱いに変わるなど、今後もビザ発行に関する運用が突然変更される可能性があるため、申請時には最新の情報を確認することが望ましい。

2022年11月1日、DICAは、外国人がビザの延長のための推薦状の申請を行う場合、ビザの有効期限の60日以上前に申請しなければならない旨を発表した。
2023年9月11日、DICAは、外国人私立学校教員およびその扶養家族のビザ延長は、DICAでは手続きできなくなる旨を発表した。

現地人の雇用義務

労働者を雇う際には、原則として労働事務所に雇用条件を通知し、同事務所から入手した応募者リストをもとに面接し決定しなければならないとされていたが、現在では、新聞等に募集広告を載せた上で、自ら労働者を募集することが一般的である。

労働者を雇用する会社は、原則として労働事務所(Township Labour Office:TLO)を通して募集するとされているが、現在では新聞広告や人材紹介業者等を通じて自ら募集することも可能であり、実務上はこちらが一般的である(注1、2参照)。
多人数を募集する場合は、労働入国管理人口省のHead Officeに相談するのが望ましい。

(注1)法律上、限定された条件なしで雇用できる被雇用者は18歳以上である。
(注2)少人数であれば、知人を通じて探す方法が一般的である。

  1. TLOを通す場合の募集手続き
    1. 雇用者はその地域のTLOへ、必要な被雇用者のタイプ、被雇用者数、資格要件、職務の内容、雇用条件等の募集条件を、書式に従って通知すること(求人票に該当)(Form 3)。
    2. TLOから、その職務に適した登録求職者の推薦リストが雇用者に送られてくる。
    3. 雇用者は、その中から最適な候補者を選ぶことができる。
    4. 雇用者は、選んだ被雇用者のリストを労働事務所へ通知する(Form 6)。
    5. 選ばれた被雇用者は、雇用者からの正式採用通知として、労働事務所から書類Form 7を受け取る。
  2. 雇用契約

    2013年12月1日に施行された雇用および技術向上法(Employment and Skill Development Law)に基づき、会社が労働者を雇用する場合には、雇用後30日以内に雇用契約を締結しなければならない。雇用契約書においては、職種、給与、契約期間、労働時間、勤務地等の21の事項を必ず規定しなければならない。
    もっとも、ミャンマーにおいて特徴的な点は、原則として労働入国管理人口省が公表するモデル雇用契約書を使用しなければならないことである。労働入国管理人口省は、2015年8月に旧モデル雇用契約書を公表したが、2017年8月28日付労働入国管理人口省通達第140号を発布し、新モデル雇用契約書を公表した。新モデル雇用契約書においては、有期雇用の更新拒絶について正当な理由が要求されるようになった。
    また、労働入国管理人口省は、2017年9月1日付労働入国管理人口省通達第4号を発布し、会社は、労働者との雇用契約締結後、当該契約書の写しを管轄の労働事務所に提出し、承認を得なければならないと規定した。同通達によると、5人以上の労働者を雇用するすべての者は、雇用契約書を作成し、労働事務所の承認を得ることが明示された。

  3. その他労働関連法
    ミャンマーにおいては、日本の労働基準法のような基本となる労働法が存在せず(過去には、従業員の基本的な権利と義務に関する法律(The Law Prescribing the Fundamental Rights and Duties of People’s Workers, 1964)が存在したものの、2011年12月に廃止されている)、多くの個別法が労働に関する一定の事項を規定しており、労働時間や休暇等、それぞれの事項ごとに異なる法律を確認しなければならない。また、2011年3月の民政移管以降、多くの労働関連法が相次いで改正されている。以下、2023年11月9日時点において効力を有する労働関連法を列挙する。
    • 労働者災害補償法(The Workmen’s Compensation Act, 1923
    • 雇用統計法(The Employment Statistics Act, 1948
    • 工場法(The Factories Act, 1951
    • 休暇および休日法(The Leave and Holidays Act, 1951
    • 油田(労働および福利厚生)法(The Oilfields(Labour and WelfareAct, 1951
    • 雇用制限法(The Employment Restriction Act, 1959
    • 海外雇用に関する法(The Law relating to Overseas Employment, 1999
    • 労働組合法(The Labour Organization Law, 2011
    • 労働紛争解決法(The Settlement of Labour Dispute Law, 2012
    • 社会福祉法(The Social Securities Law, 2012
    • 最低賃金法(The Minimum Wages Law, 2013
    • 雇用および技術向上法(The Employment and Skill Development Law, 2013
    • 経済特区法(The Special Economic Zone Law, 2014
    • 賃金支払法(The Payment of Wages Law, 2016
    • 店舗および商業施設法(The Shops and Establishments Law, 2016
    • 職場安全衛生法(The Occupational Safety and Health Law, 2019

その他

一部の会社は、外国人をシニアマネージャー、技術専門家またはコンサルタントを雇用する場合には、MICから承認を得なければならない。

MICから投資許可を得て事業を行っている会社は、外国人をシニアマネージャー、技術専門家またはコンサルタントとして雇用する場合、当該外国人の入国前または入国から7営業日以内に、MICに対して承認を申請しなければならない(2017年10月19日付投資企業管理局投資管理課通達、2017年11月15日説明(注1))。また、当該外国人が退職した場合には、会社は航空券の写しおよび退職届をMICに提出しなければならない(2017年10月19日付投資企業管理局投資管理課通達3条)。
(注1)当該説明には、2017年10月3日に公表された通達についての説明であると記載されているが、2017年10月19日の誤りであると解される。