外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用

最終更新日:2024年02月04日

外国人就業規制

外国人は、大統領、国会議員、警察・警備、軍隊として就業できない。

在留許可

ケニアに入国する外国人は、入国ビザを取得する必要がある(なお、アフリカ諸国を中心にビザ免除国が43カ国あるが、日本は含まれていない)。
また、外国人がケニアで働くためには、移民局が発行する労働許可証の取得が必要。

入国ビザ

ケニアに入国するためのビザは、駐日ケニア大使館外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは発行しておらず、オンライン(eTAポータルサイト)にて取得手続きを行う。
eTAポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

シングル・ビザ取得に要する申請費用は30ドル。必要書類は次のとおりで、目的に応じて異なる。書類の不備がなければ、3営業日で発行される。ビザ有効期間は発行から90日間。

  1. 有効期限が6カ月以上残っているパスポート
  2. 写真
  3. 連絡先情報(Eメール、電話番号)
  4. 出入国予定詳細
  5. 会社からの招待状(ビジネス目的の場合)
  6. 会社の登録証(ビジネス目的の場合)
  7. 旅行日程(観光目的の場合)
  8. ホテル予約書

労働許可証

外国人(日本人を含む)がケニア国内で働くためには、労働許可証の取得が必要。原則として、ケニア入国前に取得することになっている。
政府は、ケニア人の雇用を守るため、労働許可証の発行を外国人でなければできない職種(後述)に制限している。また、ケニア人の雇用機会を増やすため、外国人が持つ技能などをケニア駐在期間中にケニア人に伝授することを義務付けている職種もある。
労働許可証はオンライン(eFNS)にて取得手続きを行う。
eFNSポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

労働許可証については、調査レポート:ケニアにおける事業設立ハンドブック 改訂版(2019年8月)も参照。

労働許可証を取得するための必要書類は次のとおり。

  1. 申請用紙
  2. 雇用主からのレター(従業員証明)
  3. パスポートのコピー
  4. 写真2枚
  5. 申請時点のケニア入国ビザ
  6. 納税証明書(Tax Compliance Certificate

前述の必要書類(共通提出書類)に加えて、職種に応じて、次の追加書類を提出しなければならない。

職種別追加書類
職種 申請者の条件 追加書類
クラスA:
探鉱・採掘
  1. 採掘の権利またはライセンスを取得している。
  2. 自由に処分できる十分な資本を有している(10万ドル)。
  3. 採掘することでケニアに利益をもたらす人である。
  1. 鉱物探査ライセンス
  2. 10万ドル以上の投資証明書
  3. 納税者識別番号(PIN)
  4. 直近1年間の会計報告
  5. 申請費用(1万Ksh)
クラスB:
農業・畜産業
  1. 十分な広さの土地の権益を有している。
  2. 自由に処分できる十分な資本を有している(10万ドル)。
  3. そのビジネスに参画することで、ケニアに利益をもたらす人。
  1. 借地権の証明書
  2. 資金調達力の証明書
  3. 関係機関からのライセンス
  4. 納税者識別番号(PIN)
  5. 直近1年間の会計報告
  6. 申請費用(1万Ksh)
クラスC:
特定の資格を持つ職業(医師、歯科医師、獣医師、弁護士など)
  1. 特定の資格を有している。
  2. 自由に処分できる十分な資本を有している(10万ドル)。
  3. 自国で当該業界団体、協会に登録されている。
  4. その職業を実践することで、ケニアに利益をもたらす人。
  1. 特定の職業に従事している証明書
  2. 学歴および資格保有の証明書
  3. 納税者識別番号(PIN)
  4. 申請費用(1万Ksh)
クラスD:
雇用
  1. ケニア政府等から特定の雇用機会を提供されたもの
  2. ケニアでは得られない技能を有し、その雇用に従事することでケニアに利益をもたらす人。
  1. 学歴・職歴の証明書
  2. ケニア人の代替者(技能を伝授する人)の名前・連絡先・履歴書
  3. ケニア人代替者との契約書
  4. 企業登録証(会社設立証明書)
  5. 関係機関からの許可証
  6. 申請費用(1万Ksh)
クラスF:
製造業
  1. 必要なライセンス・許可を取得している。
  2. 自由に処分できる十分な資本を有している(10万ドル)。
  3. その製造業に従事することで、ケニアに利益をもたらす人。
  1. ライセンスのコピー
  2. 10万ドル以上の投資証明書
  3. 企業登録証(会社設立証明書)
  4. 定款
  5. 直近1年間の会計報告
  6. 株主証明書(Shareholders Certificate
  7. 納税者識別番号(PIN)
クラスG:
貿易、ビジネス、コンサルタント
  1. 必要なライセンス・許可を取得している。
  2. 自由に処分できる十分な資本を有している(10万ドル)。
  3. その職業に従事することで、ケニアに利益をもたらす人。
  1. 10万ドル以上の投資証明書
  2. 企業登録証(会社設立証明書)
  3. 定款
  4. 納税者識別番号(PIN)
  5. 直近1年間の会計報告
クラスI:
宗教・慈善活動
  1. 社会法に基づいて登録された機関のメンバーとして、宗教活動をしている人。
  2. 有限責任会社のメンバー。
  3. 受託者法に基づいて登録された信頼性の高い機関のメンバーで、その存在がケニアに利益をもたらす人。
  1. 団体の登録証
  2. 学歴・職歴の証明書
  3. 申請費用(1万Ksh)
クラスK:
一般居住者
  1. 年齢が35歳以上であること。
  2. 自由に処分できる十分な資本を持ち、所定の金額(2万4,000ドル)以上の確実な年間収入があり、その収入源は外国に由来し、ケニアに送金されるものであること。その収入は、本表で明記されている各クラスの職業以外であること。
  3. その存在がケニアに利益をもたらす人。
  1. 2万4,000ドル以上の年間収入を保証する書類
  2. 申請費用(1万Ksh)
クラスM:
難民
難民法に基づき、難民としての地位を与えられた者とその配偶者。 難民局の推薦状

労働許可証は証明書の形で発行され、申請者のパスポートに認可番号・有効期間(通常2年間)・発行日が移民局(外国人カウンター)にて裏書される。当該有効期間内は、ビザなしでケニアに渡航できる。

外国人証明書(ケニア住民票)

ケニアに3カ月以上滞在する外国人は、外国人証明書(Foreigner Certificate)を取得する必要がある。申請書類は次の通り。なお、外国人証明書の有効期間は2年間(労働許可証の有効期限まで)

  1. 入力済の外国人証明書の申請書
  2. パスポートのコピー
  3. 写真2枚(直近12カ月以内)
  4. 労働許可証

内務・政務調整省移民局(Directorate of immigration and registration of persons外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますMinistry of Interior and Coordination of National Government
所在地:Nyayo House, 9th floor, Kenyatta Avenue/Uhuru Highway
郵便:P.O.Box 30191-00100, Nairobi
Tel:(254-20)2222022
E-mail:dis@immigration.go.ke

移民局:クラス別許可証(Welcome to the Immigration Permit Information Pack外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

現地人の雇用義務

現地人の雇用義務はないが、政府はケニア人の雇用を奨励している(投資申請時の考慮事項に含まれている)。ケニアでは、人材派遣サービスは一般的ではなく、直接雇用する必要がある。合理的な理由があれば、28日前に書面で通知することにより解雇できる。退職金の算出方法は基本給の半額に勤続年数を乗じた金額。

  1. 現地人の雇用義務に関する原則
    事業の性格上、外国人が必要と判断される場合を除き、事業主は、原則現地人を雇用すべきとされている。
    また、外国人駐在員が持つ技能を現地人へ移管するため、特定のケニア人を指名登録し、研修を行う旨を記載した計画表を提出しなければ、当該外国人の労働許可証が発給されない場合がある。
  2. 現地人を雇用する際の留意点

    ケニアには人材派遣サービスが一般的ではないため、従業員として直接雇用する必要がある。労働日数が3カ月以上の場合は雇用契約を締結しなければならない。

    ジェトロ:雇用契約書に記載すべき事項PDFファイル(343KB)

    その際には、試用期間(原則6カ月、最大1年間)を設定することが推奨される。試用期間中であれば、7日前の事前通知で終了することが可能。
    有期雇用契約(1年間など)を繰り返すことは、法的には可能だが、契約の不更新が不当解雇として裁判所で判断された事例があるので、注意を要する。

  3. 現地人を解雇する際の留意点
    合理的な理由があれば、28日前に書面で通知することにより解雇できる。
    ケニア労働法(第44条)では、以下に該当する場合、従業員を解雇できると規定している。
    1. 従業員が合法的な理由なく、職場に出勤しない場合。
    2. 従業員が酩酊することにより、勤務時間中に働くことができない場合。
    3. 従業員が故意に遂行する義務のある仕事の履行を怠る、または慎重かつ適切に遂行する義務のある仕事を不注意かつ不適切に遂行した場合。
    4. 従業員が雇用主に対して、乱暴な言葉や侮辱的な態度を振る舞う場合。
    5. 従業員が、従うべき義務の範囲内にある合法的かつ適切な命令に従わない場合。
    6. 従業員が逮捕・禁固刑に処せられ、14 日以内に釈放されない場合。
    7. 従業員が、雇用主の財産に対して、損害となるような罪を犯した、または合理的かつ十分な根拠をもって犯したと疑われる場合。

    一方、以下に該当する理由で解雇した場合は不当解雇とみなされる。

    1. 女性従業員の妊娠、または妊娠に関連する理由。
    2. 従業員の休暇、または従業員からの休暇取得の申し出。
    3. 従業員の労働組合への加入または加入の提案。
    4. 従業員が就業時間外、または雇用者の同意を得て就業時間内に労働組合の活動に参加すること、または参加しようとすること。
    5. 従業員が労働組合または労働者代表の役員になろうとすること、または役員として行動すること。
    6. 従業員による労働組合への加入または脱退の拒否または拒否の提案。
    7. 従業員の人種、肌の色、部族、性別、宗教、政治的意見または所属、国籍、社会的出身、婚姻状況、HIVの有無、または障害者。
    8. 従業員による雇用者に対する苦情やその他の法的手続きの開始または開始の提案。
    9. 従業員による合法的なストライキへの参加。
  4. 休暇
    労働法に基づき、雇用主は次の休暇を従業員に与えなければならない。
    1. 休息日:従業員は、7日ごとに少なくとも1回の休息日を得る権利がある。
    2. 年次休暇:毎年21日の年次休暇が与えられる。
    3. 出産・育児休暇:女性従業員には3カ月の出産休暇(全額支給)、男性従業員には2週間の育児休暇(全額支給)が与えられる。
    4. 養子縁組休暇:子どもの養子縁組に際して1カ月の休暇(全額支給)が与えられる。
    5. 病気休暇:従業員は最低7日間の全額支給の病気休暇と、さらに7日間の半額支給の病気休暇を取得できる。一般的には、15~30日間の病気休暇を与えている企業が多い。
  5. 労働時間

    就業時間は週6日、52時間を超えてはならない。
    1週間当たりの労働時間(就業時間外を含む)は116時間を超えてはならない。
    16歳未満の者に対しては、1日につき6時間を超えて労働させてはならない。

    ケニア法規サイト:賃金例規則 第5条(Regulations of Wages Order外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  6. 残業手当(時間外手当)
    就業時間を超えた残業手当は、平日の場合は通常の時間給の1.5倍、日曜日・祝日の場合は2倍の時間給を支払われなければならない。
  7. ボーナス
    ボーナスに関しては労働法に規定はないが、慣習的に1カ月分のボーナスを支払う雇用主が多い。
  8. 退職金
    退職金の算出方法は、基本給の半額(15日分)に勤続年数を乗じた金額。
    例えば、基本給が10万Kshで、8年6カ月勤務したスタッフが退職する場合は、
    5万Ksh × 8.5 =42万5,000Kshとなる。
    もし、退職する時点で有給休暇をすべて使い切っていない場合は、その余っていた日数分も買い取って支払わなければならない。
  9. ケニアの法定最低賃金

    ケニア労働省「The Regulation of Wage OrderPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1619KB)」(2022年7月)で規定されている月額の法定最低賃金(15業種平均)は2万3,868Ksh(約199ドル)。

    ジェトロ:ケニアの法定最低賃金一覧表PDFファイル(363KB)

    なお、ケニア人の平均収入については、「投資コスト比較」から参照できる。

  10. 従業員の賃金からの控除について
    労働法(第19条)では以下に該当する場合、従業員の賃金から控除できると規定している。
    1. 積立基金、退職年金制度、または労働委員会承認の拠出金に従業員から支払われるべき金額。
    2. 従業員の故意の不履行により、雇用者が所有している財産に生じた損害に対する妥当な弁済額。
    3. 合法的な理由なく、出勤しなかった日の賃金(それぞれ労働日の1日分の賃金を超えない額)。
    4. 売上金の受領、保管、支払いを任されている従業員により、過失または不誠実さによって金銭の不足が生じた場合の当該相当額。
    5. 従業員に支払われるべき賃金を誤って超過して支払われた場合の超過額。
    6. 法律、労働協約、裁判所によって控除が認められた金額。
    7. 従業員が雇用者に賃金から差し引くよう書面で要求した金額。
    8. 雇用者が従業員に対して行った金銭貸付の返済のために、支払うべき金額(ただし、控除した後の賃金の50%を超えてはならない)。
    9. 労働長官が規定するその他の金額。
  11. 就業時間外に雇用者から連絡を受けない権利
    雇用者は緊急事態を除き、就業時間外に従業員に連絡を取ってはならない。遵守しない雇用者は50万Ksh以下の罰金、または1年以下の懲役、もしくはその両方を科される。従業員は就業時間外の雇用者からの連絡に対して応答する義務を負わない。就業時間外の業務上の連絡を無視しても叱責・懲戒処分にはならないと規定している。

その他

雇用主は従業員に対して、労働者訓練税、国立病院保険基金(NHIF)、国家社会保障基金(NSSF)、労働者保険給付金を負担する義務を負う。また、従業員に対して医療サービスを受けさせることが義務付けられていることから、医療保険に加入している企業が多い。

    1. 労働者訓練税(Training Levy
      1人当たり毎月50Kshの納付が必要。
    2. 国立病院保険基金(National Hospital Insurance Fund:NHIF
      従業員のみが負担するもので、従業員の収入に応じて、150Ksh~1,700Kshを控除して、国立病院保険基金に毎月送金するもの。雇用主が翌月の9日までに送金する必要があり、遅れた場合のペナルティ(通常の2倍)は雇用主に課される。
    3. 国家社会保障基金(National Social Security Fund:NSSF
      従業員の退職金を集め、保管し、責任をもって投資し、分配することを目的としたもので雇用者と従業員の双方の強制参加が義務。従業員の拠出額は、総収入に応じて月額360Kshから最大1,080Kshまで。雇用者は同額の拠出金を上乗せして拠出する。翌月の15日までに送金する必要があり、遅れた場合はペナルティが課される。
    4. 労働者保険給付金(Worker Insurance Benefit
      雇用主が被雇用者に対して負う可能性のある賠償責任に関して、保険契約を締結することが義務付けられているもの。従業員が事故に巻き込まれ、障害や死亡に至った場合に、給付を受けることができる。

ケニア「税制 その他税制」参照。

  1. 医療
    雇用者は、従業員に対して病気の際には十分かつ適切な医薬品を提供し、重病の際には医療サービスを受けさせることが義務付けられている。一般的に多くの企業は、この要件を満たすために医療保険に加入している。

  2. 雇用者は、従業員のために十分な量の衛生的な水を雇用場所に設置しておく必要がある。