【イベントレポート】HVC KYOTO開催、京都から世界へ広がるライフサイエンス分野の国際共創

2026年09月03日

HVC KYOTO Demo Dayの会場の様子

HVCKYOTOが促進する国際連携とイノベーション創出への期待

2026年7月14日、京都で「HVC KYOTO(Healthcare Venture Conference KYOTO)Demo Day」が開催されました(2026年7月28日記事参照)。ジェトロをはじめ、京都府、京都市、京都リサーチパークなどが連携して実施する本イベントには、国内外のヘルスケアスタートアップ、製薬企業、医療機器メーカー、ベンチャーキャピタル(VC)、研究機関が集結し、新たな事業連携や投資機会の創出に向けた交流が行われました。

Demo Dayでは、ライフサイエンス分野に特化したスタートアップによる英語でのピッチセッションが行われたほか、共同研究や事業提携、投資を検討する企業・投資家とのマッチングが実施されました。また、ジェトロは主催機関の一つとして運営に参画し、将来の国際展開や海外連携が期待されるスタートアップに対して「JETRO賞」を授与しました。

「JETRO賞」授与の様子

HVC KYOTOが築く国際的なイノベーションの舞台

HVC KYOTOは、ライフサイエンス領域の革新的な技術を持つ国内外スタートアップと、製薬企業や医療機器メーカー、VC、インキュベーターなどをつなぐイノベーションプラットフォームです。特にプレシードからアーリー期のスタートアップに対して、事業成長につながるネットワーク形成や協業機会を提供し、研究成果の社会実装を後押ししています。

近年、ライフサイエンス分野ではイノベーション創出の競争がグローバル規模で進んでおり、研究力だけでなく、企業や投資家とつながるエコシステムの構築が重要になっています。HVC KYOTOは、そうした国際的な共創の場として発展を続けています。

英国企業が期待する日本市場の魅力

今回参加した英国の創薬スタートアップArgonaute RNA社は、siRNA(*)(短鎖干渉RNA)を活用した新しい治療薬の開発に取り組んでいます。同社は、日本を重要な市場の一つとして位置付けており、高度な研究開発環境や医療インフラに大きな魅力を感じているといいます。

同社のアンソニー・パーカー氏は、日本市場について「世界トップレベルの研究者や医療機関が存在し、臨床研究を進める上で非常に魅力的な環境が整っている」と評価しました。特に京都大学病院をはじめとする関西地域の研究機関との連携に期待を寄せています。

Argonaute RNA社 Executive chairman アンソニー・パーカー氏

日本への進出には制度や言語、商習慣の違いといった課題もあります。同氏は、日本で事業を展開するためには現地の専門家やパートナーとの連携が不可欠であると語りました。一方で、高齢化が進む日本では心血管疾患をはじめとする医療課題への対応ニーズが高く、革新的な治療法の開発や実装において大きな可能性を持つ市場であるとの見方を示し、製薬企業や投資家との対話を進めており、日本での事業展開に向けた足掛かりを築きつつあります。

京都発スタートアップを支える投資エコシステム

京都大学イノベーションキャピタル(iCAP)は、大学発スタートアップの創出と成長を支援するベンチャーキャピタルです。

iCAPの河野修己氏は、京都の強みとして「世界トップレベルの大学や研究機関が集積していること」、そして「大学や企業、支援機関同士が近い距離で連携できる環境」を挙げます。

京都大学イノベーションキャピタル株式会社 シニア・マネジャー 河野修己氏

京都大学ではライフサイエンスや再生医療に加え、量子コンピューティング、脱炭素技術などの次世代技術分野の研究が進められています。しかし、優れた研究成果がそのまま事業化につながるわけではありません。河野氏は、研究者とビジネス人材が早い段階から協力し、知的財産や市場性を踏まえて事業を育てていくことの重要性を指摘しました。

また、日本のスタートアップが世界で成長するためには、海外のエコシステムとの接続が不可欠であり、その橋渡し役としてジェトロに期待を寄せるとともに、関係機関と連携しながらグローバル市場を見据えたスタートアップ育成を進めていく考えを示しました。

国境を越えたエコシステム形成を目指して

HVC KYOTOの統括を務める小栁智義氏は、本イベントの価値について「スタートアップが英語で発信し、世界の製薬企業や投資家と直接対話できる環境を提供すること」にあると説明します。

京都大学医学部付属病院 先端医療研究開発機構 ビジネスディベロップメント室長 小栁智義氏(取材当時)

同氏によれば、日本の研究力は世界的にも高く評価されている一方で、研究成果を事業化し社会実装につなげる部分にはまだ成長の余地があり、そこでHVC KYOTOが、大学、企業、投資家、行政機関を結びつけることで、その課題解決に取り組んできました。

また、京都・関西地域には豊富な研究資源が集積しており、ライフサイエンス分野のポテンシャルは非常に大きいといいます。小栁氏は、東京とは異なる、関西独自の強みを生かしながら、海外のスタートアップや投資家との接点を広げることで、国境を越えて世界と直接つながるイノベーション拠点の形成を目指していきたいと語りました。

京都から世界へ

今回のHVC KYOTO Demo Dayでは、スタートアップによるピッチだけでなく、海外企業、大学、投資家、支援機関が一堂に会し、ライフサイエンス分野の未来について議論が交わされました。そこで生まれたつながりは、今後の共同研究や事業提携、投資案件へと発展していくことが期待されます。

ジェトロは今後も、海外企業と日本の研究機関・企業との連携促進や対日投資支援、そして日本発イノベーションの国際展開を後押ししていきます。HVC KYOTOで育まれる国際共創が、京都から世界へ広がる新たなイノベーション創出につながることが期待されています。

ライフサイエンスビジネスチャンスにご関心がおありでしたら、ぜひジェトロにご連絡ください。日本各地の拠点から地域に関する最新情報のご提供や、日本への投資に関するさまざまなサポートサービスのご提供が可能です。

  1. 注:

    *siRNA(small interfering RNA:短鎖干渉RNA)は、RNA干渉(RNAi)機構を利用して標的mRNAを分解し、特定遺伝子の発現を抑制する二本鎖RNAである。 本文に戻る

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