日本の脱炭素化に新たな選択肢 米Vycarb、独自技術「ACCS」の商業化を加速

2026年11月04日

Vycarb, Greg Humphries氏、米ニューヨークNewlabにて

米クライメートテック企業Vycarb、水中での炭素回収・貯留技術「ACCS」で日本市場に展望

カーボンニュートラルの実現に向け、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)への関心が高まるなか、米ニューヨークのクライメートテックスタートアップVycarbは、水中での炭素回収・貯留を実現する独自技術「Aqueous Carbon Capture and Storage(ACCS)」の実用化を進めている。同社は、日本が抱えるCCSの課題に対し、自社技術が新たな選択肢となり得ると考え、期待する日本市場での展開を本格化させている。

「ACCS」という新たな炭素管理技術

Vycarbは、自社のACCS技術を、海洋アルカリ化(OAE)や従来の地中貯留型CCSとは異なる選択肢として位置付ける。 ACCS技術は、排ガスや水中のCO₂を水とアルカリ性鉱物との反応により重炭酸塩・炭酸塩として水中に固定化する技術である。海洋が自然に行っている炭素貯留メカニズムを加速させることで、CO₂を長期間安定的に貯留できる。CO₂を重炭酸塩としてその場で固定化するため、高圧圧縮設備やCO₂輸送インフラを必要としないことが特徴である。

また、 Vycarbの最大の特徴は、CO₂除去量をリアルタイムで測定できる独自センサー技術だ。

同社は脱炭素分野で課題となっていた「貯留量の可視化」に取り組んできた。独自開発したセンサーとモニタリング技術により、水中のCO2量をリアルタイムで計測できるシステムを構築し、高精度な貯留量の定量化と検証を実現している。

ニューヨークのNewlab内

Vycarb, Chief Operating Officer, Greg Humphries氏

ニューヨークでの実証を経て商業化フェーズへ

Vycarbはこれまで、ニューヨーク州のロングアイランドやガバナーズアイランドで実証を実施してきた。現在はブルックリン・ネイビーヤードに設置したパイロット設備を運用しており、年間約200トンのCO2を処理できる能力を有する。

実際に同社は、CO2濃度5%という低濃度の排ガスでも高効率に処理できることを実証している。この成果により、発電、セメント、鉄鋼、石灰製造、バイオガスなど幅広い産業で、従来必要とされてきた大規模なCO2回収設備への依存を抑えながら炭素貯留を行える可能性があるという。

現在は、年間数千トン規模の産業向けパイロット案件の準備を進めており、その先の商業展開を視野に入れている。

日本市場に大きな可能性

同社が日本市場に注目する理由の一つは、日本特有の地理的・産業的条件にある。日本は世界有数の製造業基盤を有する一方、CO2を大規模に地中貯留できる適地が限られているとされる。しかし、長い海岸線を有し、人口や産業の多くが沿岸部に集積している。

Vycarbは、こうした環境がACCS技術と高い親和性を持つとみている。

また、日本企業が持つ高度なエンジニアリング力やプロジェクト開発能力を高く評価しており、日本を重要市場の一つと位置付け、将来的な事業展開や協業機会の拡大を見据えている。

日本での商業プロジェクト実現に向けて

Vycarbはすでに日本企業や投資家との関係構築を進めており、市場調査やパートナー探索においてジェトロのオープンイノベーション支援プログラム「J-Bridge」も活用している。現在、日本国内での具体的な展開可能性について検討を進めているという。

今後同社は、2029年から2030年頃を目標に、日本で初となる商業規模のACCSプロジェクト実現を目指す。対象としては、バイオガス施設、セメント工場、発電所、下水処理施設、ごみ焼却施設など、年間10万トン超のCO2処理を想定している。

また、自治体や研究機関を含む幅広いパートナーとの協業にも意欲を示す。

「私たちは、日本企業にとってCCSをより現実的で導入しやすいものにしたいと考えています。当社の技術はシンプルで柔軟性が高く、安全性も実証されています。日本には優れた産業基盤と製造能力があり、産業分野における新技術の導入に大きな可能性があると考えています。日本企業との協業を通じて、CCSプロジェクトの実装を進めていきたいと考えています」と同社は期待を寄せている。

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