2025年10月
日本の技術力 世界にアピール 純国産量子コンピューター稼働
2025年10月09日

純国産超伝導量子コンピューター
従来のコンピューターとは次元の違う計算を可能にし、社会を変革すると期待される量子コンピューター(QC)の分野で、日本の技術力に注目が集まっています。日本政府も2025年を「量子産業化元年」と位置付け実用化を後押ししています。
大阪大学を中心に中小・ベンチャー企業や研究所等も参画したグループは、部品やソフトウェアなど主要構成部品をすべて国内で開発・製造した「純国産超伝導量子コンピューター」の稼働を7月に開始しました。8月には大阪・関西万博の会場で、純国産機の遠隔操作を体験できる展示イベントが開かれ、国内外から多くの来場者が訪れました。大阪大学量子情報・量子生命研究センターの根来誠教授は「純国産機を高い性能で作れることを示せた。今後は海外とも連携して、日本がこの分野で世界の中心になるように取り組んでいきたい」と語ります。

右:大阪大学量子情報・量子生命研究センター 根来誠教授
左:アルバック・クライオ株式会社 技術部希釈冷凍機課 斎藤政通参事

大阪・関西万博
量子コンピューターは極微(ミクロ)の世界で起きる量子法則を利用したコンピューターで、今回、大阪大学を中心としたグループが開発に成功したものは、チップを電気抵抗がなくなる絶対零度(-273.15℃)近くまで冷却して使用する「超伝導方式」を採用しています。また、すでに国産だったチップや制御装置、ソフトウェアに加えて、今回は極低温状態を連続的に生成する装置「希釈冷凍機」の国産化にも成功しました。
冷凍機を開発したのは、低温機器や真空ポンプの製造販売を手がけるアルバック・クライオ社。同社技術部希釈冷凍機課の斎藤政通参事は、「量子コンピューターの制御のため非常に重要な要素である冷却技術を提供することで、開発に貢献できた。実用化に向けて今後もプレイヤーの一人として取り組み、構成部品の市場拡大も実現していきたい」と話します。

万博で展示されていた量子コンピュータアートの前で話す根来教授(右)と斎藤氏(左)
量子コンピューターの実用化が進めば、材料開発や創薬、人工知能(AI)などの分野での活用も期待されます。根来教授は「光合成のメカニズムを解明して『人工的な光合成』を作るといった応用が考えられる。量子コンピューターで生命科学の謎を解くことを目指したい」と意気込みます。
量子コンピューターの開発では激しい国際競争が続きます。根来教授は日本の強みとして、高い技術力に加えて、ムーンショット型研究開発制度に代表される「強固な産官学の連携」や、各社・機関がそれぞれ得意な技術や強みを持ち寄る「水平分業型の開発手法」を挙げます。さまざまな産業レイヤーに量子コンピューター関連の技術やデータ、ノウハウを持つ日本は、海外企業にとって技術の比較や検証を行う「テストベッドとして活用できる」と指摘します。

大阪・関西万博にて来場者に量子コンピューターを説明する根来教授
「実用化、商用化に向けて我々の量子コンピューターの開発はまだ始まったばかり。海外も含め、関心を持ってくれる企業と、技術と技術の連携を強めていきたい」。根来教授は今後の意欲をそう語ります。
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