ICT 政府の取組

ICT 政府の取組

新型コロナを受けて加速する政府によるデジタル化推進


(1)Beyond 5G


2019年から2020年にかけて日本を含め世界各国で5Gの商用サービスが相次いで開始される中、日本では5Gの実現による新たな市場の創出に向けて、様々な利活用分野の関係者が参加する5G総合実証試験が2017年度から全国各地で実施されてきました(図表4)。また、2018年頃からは、Beyond 5Gの実現に向け有望と考えられる通信技術について学術的な議論が活発に行われているほか、ユースケースや要求条件に関する議論が始まっています(図表5)。

(図表4)全国各地で実施された5G総合実証試験(2019年度)

(図表4)全国各地で実施された5G総合実証試験(2019年度)
事業概要 所在地 事業詳細
高精細画像によるクレーン作業の安全確保 愛媛県今治市
  • クレーンの玉掛作業において死角となっている場所の4K高精細映像を5Gを用いて運転台に送信。映像を確認しながら安全に作業できる環境を実現
建機の遠隔操縦・統合施工管理システム 三重県伊賀市
  • 工事現場において5Gの大容量・超低遅延の特長を活かし、建機の遠隔操縦と施工作業の管理を行う
遠隔高度診療 和歌山県和歌山市、日高川町
  • 遠隔地の診療所の医師が、患者の様子やバイタルサイン、エコー動画を5Gにより大学病院の専門医へ送信。専門医の指示を受け、患者に対して的確な診断・治療を提供。
濃霧中の運転補助 大分県大分市
  • 車両に搭載した4K高精細カメラの情報を5Gを用いてサーバへ伝送。映像解析を行い白線や前方車両等の情報をヘッドアップディスプレイに分かりやすく表示。濃霧中の安全な運転を支援
VRとBodySharing技術による体験型観光 沖縄県那覇市
  • VRとロボットの活用により、遠隔地からでも観光地と同様にアクティビティを仮想体験できるサービスを実現
鉄道地下区間における安全確保支援 大阪府大阪市
  • 地下鉄列車内の様子を撮影した4K高精細映像を5Gを用いて伝送し、映像解析により列車内の異常等を自動検知、駅員に通報
トラック隊列走行 静岡県浜松市
(新東名高速道路)他
  • 複数のトラック車両間で5Gを用いた運転制御を超低遅延かつ超高信頼で行うことで、隊列走行を実現。労働力不足の解消につなげる
酪農・畜産業の高効率化 北海道上士幌町
  • 牛舎内に設置した複数の4Kカメラから5Gを用いて伝送された高精細映像をもとに、牛の位置把握と個体識別を実施。作業の省力化を実現
トンネル内における作業者の安全管理 北海道赤井川村
  • 各種センサによるトンネル内異常検知を実施するとともに、災害・事故時に建設機械を遠隔操作することで周囲の確認を行い、作業員の安全を確保
山岳登山者見守りシステム 長野県駒ケ根市
  • 4Kカメラを搭載したドローンからの高精細空撮映像をリアルタイムに捜索本部に配信。遭難者の状況把握を行い、迅速な救助活動につなげる
救急搬送高度化 群馬県前橋市
  • 救急車やドクターカー内の患者・医師の4K映像を5Gを用いて救急指定病院やかかりつけ医へ一斉配信することで、患者の受入先・受入方法検討の時間短縮、症状の早期共有を実現

(図表5)Beyond 5Gに関する取組の状況

(図表5)Beyond 5Gに関する取組の状況
主体 年度 事業詳細
NICT 2018年
  • 欧州委員会と連携してテラヘルツ波end-to-endシステムの開発研究を開始。Beyond5Gを見据えワイヤレス、ネットワーク、デバイスなど研究開発を推進中
NTT 2019年
  • 6Gを見据えたネットワークの構想「IOWN」を発表。2019年10月、米インテル、ソニーと次々世代の通信規格での連携を発表
NTTドコモ 2020年
  • 2030年頃のサービス提供開始を目指し、6Gに向けた技術コンセプト(ホワイトペーパー)公開

一方で、日本は現在、2030年代を見据えた5Gの次の規格に向けた検討が始まっています。日本政府は、2020年1月より、Beyond 5Gに関する総合戦略の策定に向けた「Beyond 5G推進戦略懇談会」を立ち上げました。2030年代の社会において、日本の企業及びそのパートナー企業がBeyond 5Gインフラ(ハードウェア+ソフトウェア)市場シェア3割程度の獲得を目指すとともに、デバイス分野や利活用分野でも一定のプレゼンスを持続的に確保することを目指しています。

この目標に向け、国内外の多様なプレイヤーが協働して研究開発を行える拠点として「Beyond 5G研究開発プラットフォーム(仮称)」を構築することも計画されています。また、研究開発用途での電波利用に係る規制の緩和等により民間の研究開発投資の支援にあわせて、イノベーションを起こし得るアイデアや人材の発掘・育成も実施するとしています。

2030年までに政府は「Beyond 5G ready」な環境を実現するため、5G投資促進税制や5Gエリア整備支援制度といった税・財政支援、周波数確保等の制度整備、インフラシェアリングの促進等により、5Gネットワークの面的拡大を図っています。合わせて、Beyond 5G推進戦略を産学官の連携により強力かつ積極的に推進するための母体として「Beyond 5G推進コンソーシアム」を設置し、各戦略に基づき実施される具体的な取組を産学官で共有するとともに、国内外の企業や大学等による新規の実証プロジェクトの立ち上げ支援等を実施するとしています。


(2) Society 5.0の実現に向けた経済構造改革への基盤づくり


世界では現在、デジタル・プラットフォームを運営・提供する事業者、いわゆるデジタル・プラットフォーマーがイノベーションを牽引し、事業者の市場アクセスや消費者の便益向上に貢献しています。他方、こうしたデジタル・プラットフォーマーを巡っては、取引条件の不透明・不公正、データ寡占、個人情報漏洩、プラットフォーム上での違法・不適切な行為等の問題点が日本を含め、世界的に指摘されています。

こうした中、総務省、経済産業省、及び公正取引委員会は、2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」において、プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備のための基本原則を定めました。また、2018年に閣議決定された「成長戦略実行計画」に基づき、内閣官房に「デジタル市場競争本部」が設置され、デジタル市場に関する重要事項の調査審議等を実施するための会議が開催されています。同会議ではデジタル市場のルール整備について議論が行われ、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公平性の向上に関する法律」等が、令和2年通常国会で成立しています。

この他、データの価値評価も含めた独占禁止法のルール整備、デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用規制の考え方の整理、及びデジタル広告市場の競争状況の評価について検討が行われています。

(3)IT新戦略とデジタル庁創設


2020年7月17日、政府は「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進計画(IT新戦略)」を閣議決定しました。IT新戦略では、新型コロナが日本の経済、生活、働き方、教育、行政、医療、防災等、様々な分野での社会や価値観の変容をもたらしたとして、ニューノーマルの視点を求めています。そうした上で、IT活用とデジタル強靭化による社会構造の変革・社会全体の行動変容の両面について重点的に取り組むものとされるとともに、国と地方を通じたICTインフラの構築は、喫緊に取り組むべき事項と掲げました。

IT新戦略の中で特に注目されているのが、政府が2021年9月の創設を目指すデジタル庁です。政府はデジタル庁をデジタル社会形成の司令塔と位置付け、行政のデジタル・トランスフォーメーションを推進する強力な調整機能を持たせるとしています。各省庁では、個別にITシステムの調達や運営を行っており、それにより業務の重複やコストの無駄といった非効率性が生じています。こうしたことから、政府はデジタル庁を発足してIT業務の一元化を実現し、行政手続きの効率化やスピード向上を実現することを目標としています。

デジタル庁では、国と自治体のシステムを統一、マイナンバーカードの普及促進、そして行政手続きのオンライン化実現を進めると共に、同庁が進める事業により産業にも影響を及ぼすとされています。新型コロナの影響により、三密を避けられるオンライン診療やオンライン教育の需要が高まっているため、デジタル庁では、医療や教育分野での規制を緩和し、オンライン診療・教育を問題なく受けられるようにする業務も担う予定です。また、経済産業省が進める「IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)」のような施策(図表6)に加え、デジタル庁が主体となってデジタル化を進めることで、中小企業の間でもIT化が進むことに繋がり、生産性の向上や、ITを駆使した新しい商品・サービスの創出により収益力が向上する効果が見込まれています。


(図表6)IT導入補助金事業(2017~2020年)

(図表6)IT導入補助金事業(2017~2020年)
補助対象者
  • 中小企業、小規模事業者等(飲食、宿泊、小売・卸、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)
補助対象ツール
  • ソフトウエア、クラウド利用費、専門家経費等
30万〜450万以内 通常枠 1/2 -
特別枠 2/3, 3/4
  • 「甲:サプライチェーンの毀損への対応」のみ導入
  • 「乙:非対面型ビジネスモデルへの転換」、「丙:テレワーク環境の設備」のどちらか一つ以上導入


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