環境・エネルギー 政府の取組

環境・エネルギー 政府の取組

(1)革新的環境イノベーション戦略


2020年1月21日に、環境・エネルギー分野の技術開発を押し進める「革新的環境イノベーション戦略」が策定されました。この戦略では、世界のカーボンニュートラル、さらには、過去に排出された大気中のCO2削減、つまり「ビヨンド・ゼロ」を可能とするような革新的技術を、2050年までに確立することを目指しています。

同戦略の「アクセラレーションプラン」では、ESG投資の拡大等を踏まえた革新的技術開発への民間投資の増大が推進されています(図表4)。また、環境・エネルギー関連の技術開発において、国際連携とオープンイノベーションを促すことで、国内外のスタートアップが参入しやすい環境が整備されています。こうした政策により、新技術が続々と登場しており、環境・エネルギー分野が今後さらに活性化していくと見込まれています。

(図表4)アクセラレーションプランにおける3つの取組

(図表4)アクセラレーションプランにおける3つの取組
取組 内容
(1) 司令塔を設置し計画的に推進
  • 府省横断の司令塔機能を担う「グリーンイノベーション戦略推進会議(仮称)」を設置
  • 「ゼロエミッション国際共同研究センター」をはじめとする各拠点の研究内容への助言、GHG削減効果、コスト評価へのLCA(ライフサイクルアセスメント)手法の導入等
(2) 国内外の叡智を結集
  • G20の研究者12万人をつなぐプラットフォーム拠点となる「ゼロエミッション国際共同研究センター」、産学が共創する「次世代エネルギー基盤研究拠点」、「カーボンリサイクル実証研究拠点」を新設
  • 有望な若手研究者の集中支援(ゼロエミクリエイターズ500)や、先導研究やムーンショット型研究開発制度を活用した技術シーズの発掘・実現
  • 東京湾岸に構築するイノベーションエリアや「地域循環共生圏」において、多様な産学官の集積や地域のニーズを生かした研究や実証を展開
(3) 民間投資の増大を促進
  • 研究開発型ベンチャーへのVC投資促進、制度改正と一体となった国際展開の促進
  • 今後10年間で官民で30兆円の研究開発投資を実施

(2) FIT 制度・FIP制度


FIT(フィード・イン・タリフ)制度とは固定価格買取制度のことで、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。同制度により、電力会社が電気を買い取る際にかかる費用の一部を電気利用者から再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)として調達しています。電力会社にとって発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、化石燃料から作られた電気と比較して買取価格が高額に設定されている再生可能エネルギーの普及を後押しすることに繋がっています。

再生可能エネルギーに関する状況も変化する中、2022年4月1日に「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」へと名称改正される再エネ特措法において、2020年度末までにFIT制度の抜本見直しを行う旨が規定されました。この⾒直しの注目すべき点は、FIT制度に加え、市場価格に一定額を上乗せするFIP(フィード・イン・プレミアム)制度が新設されることです。

FIP制度は、発電事業者が発電した電気を市場において自由に売り、売電価格に「プレミアム」と呼ばれる割増金を上乗せする制度です。より市場取引に近い制度として、今後制度からの独立が期待される大型の事業用太陽光発電、風力発電が対象となります。両発電において、日本市場で既に実力を付けている外資系企業も多く、同制度を活用してさらに収益を拡大させると見られます。 上乗せされる「プレミアム」の詳細については、現在政府で議論が進められているところです。また、再生可能エネルギーの導入拡大に必要なネットワークの増強費用について、その一部を賦課金方式で全国一律に課す制度が創設されることも決定しており、現行の再エネ賦課金にならって制度設計される予定となっています。


(3)電力システム改革


現在、経済産業省が進める電力システム改革は、(1)広域的な送電線運用の拡大、(2)小売の全面自由化、(3)法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保の3 つを大きな柱としており、3 段階に分けて実施されてきています。特に、「小売の全面自由化」によって、市場の新規参入者が増えることが期待されており、市場競争力が強まる見込みです。

2017年4月に小売自由化の運用が始まり、柔軟な電力調達が可能になると、これまでに多くの新規参入者が電気事業の小売ライセンスを取得しました。また、日本企業だけでなく、外資系企業の発電・小売分野への参入が広がり始めています。発電分野では、インベナジー・ジャパン合同会社(米国)が太陽光発電事業でメガソーラーの開発から運営までを共同で手がけるとして、2017年4月にSBエナジー社とパートナーシップを締結しています。小売においては、米ズームエナジージャパン合同会社(現: ティーダッシュ合同会社)が協力会社と連携したマーケティングを武器に、2016年12月より国内で事業を開始しています。

さらに、2020年以降、発電及び小売からの送配電の法的分離が義務化されたことから、地域独占の電気事業者のほとんどが、送配電とそれ以外で分割されることになりました。加えて、消費者が不当に高い価格を強いられることを防止する消費者保護の観点から、電力の規制価格の撤廃に関する今後の取組に注目が集まっています(図表5)。


(図表5)国内電力市場における規制緩和の流れ

(図表5)環境・エネルギー×テックに利用されている最新技術
年月 内容
2015年4月
  • 電力広域的運営推進機関(OCCTO)設立
2016年4月
  • 電力小売部門の完全自由化
2020年4月
  • 送配電部門の法的分離(送配電分離)の実施

(4) ガスシステム改革


2017年4月からの都市ガスの小売り全面自由化により、都市ガス会社が独占的に供給していた約2.2兆円の市場が開放されることになりました。その結果、都市ガスだけではなく、以前から自由化されていたLPガスも含めた合計約5兆円のガス市場において、活発な競争によるコスト低廉化と、消費者の利便性の向上が期待されています。

しかし、都市ガス市場では、電力小売自由化と比較しても、新規参入する企業が限られています。今回自由化された「調達・輸入事業」に参入するためには、独自のLNG基地(都市ガスの原料となるLNGの貯蔵基地)やそれと同等の能力をもつ施設を保有する必要があり、これに莫大な投資を行わなければなりません。また、小売事業に新規参入する企業は、ガス導管の利用料を支払うことで、各エリアの導管を使用してガスを供給できる仕組みになっていますが、供給したいエリアに導管が無い場合には自前で導管を新設する必要が生じ、これにも莫大な投資が必要となります。

一方で、ニチガスと東京電力が提携しガス事業者をはじめとしたエネルギー業界向けにリリースしたクラウド方式の業務・物流支援システムである「雲の宇宙船」を始め、新規参入への障壁を大幅に引き下げるサービスも登場しています。競合が少ない現状、こうしたサービスなどを上手に活用し、都市ガスの小売事業に参入できれば、大きなビジネスチャンスになる可能性が高いと予想する企業が増加しています。

(5)地方自治体の取組(ゼロカーボンシティ)


政府は、2050年までに温室効果ガス又は二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを目指した自治体「ゼロカーボンシティ」をより強力に推進していく方針です。2021年1月現在、ゼロカーボンシティを表明した自治体は既に200を超えており、これら自治体の人口合計は9千万人超となりました。

ゼロカーボン宣言をした自治体においては、実効性のある先駆的な取組が実施されており、条例等によって地域全体として温室効果ガスを削減するための枠組みづくりがなされています。例えば、東京都や長野県では、地域における再生可能エネルギーの導入を促すため、建物の太陽光発電等の設置ポテンシャルを示すソーラーマッピングの取組を実施しています。また、神奈川県や京都市等では、太陽光発電設備の共同購入により費用対効果の高い太陽光発電の設置を促す取組も始まっています。

再生可能エネルギーが主力電源化する中、大規模電源と分散型電源が共存する方向へ変革しており、地域における需給一体型の「分散型エネルギーモデル」の普及が政府により促されています。再生可能エネルギーの地産地消を事業として実施することで、地域での雇用創出や事業収益を通じて地域に利益を還元するためです。地域で作られた再生可能エネルギーを販売する取組として、2019年12月に横浜市と東北3県の12市町村との間で再生可能エネルギーに関する連携協定が締結され、東北の再生可能エネルギーによる電気を横浜市内の中小企業が購入する取組が始まっています。都市部の自治体は、地域のエネルギー需要に見合う再生可能エネルギー供給が困難である地域も多く、地方圏と都市圏の自治体間の連携によるゼロカーボン実現に向けた取組も有効です。



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