環境・エネルギー 魅力的な注目市場分野

環境・エネルギー 魅力的な注目市場分野

本レポートにおいては、環境エネルギー産業における魅力的な市場として以下の4分野を取り上げます。



(1)デジタル制御技術の高度化


1 エネルギーマネジメント

エネルギー分野におけるデジタル技術の活用が進んでいます。AI を活用したエネルギー使用量の見える化、データ分析、運用改善支援などの業務・産業向け省エネサービスの市場規模は、2025 年度には81 億円に拡大すると予測されています(図表6)。こうしたAIを活用したエネルギーマネジメントは、現在は工場向けに一部企業で商用化されていますが、競合との差別化や高付加価値に訴求できることから、今後は中長期的に住宅・業務・エネルギー分野向けサービスでも導入が進む見通しです。


AIを活用した業務・産業向け省エネサービスの国内市場予測を示したグラフ。
2017年には1億円の市場規模が2025年には約80倍の81億円に拡大する予測される。
CAGR(年平均成長率)は+73.2%。
富士経済のデータを元に作成。

また、エネルギーマネジメントが地域におけるエネルギーの取り組みにも不可欠なものとして期待されています。その背景には、「地域新電力」として、地方自治体の電力事業への相次ぐ参入があります。地域内で作った再生可能エネルギー等を地域内で「地産地消」することで、経済面での地方創生が可能となるだけではなく、災害時の電源確保による防災対策にも繋がるのです。そこで、エネルギーマネジメントの強化により、不安定な系統である再生可能エネルギーを他の電力で補いながら、地域全体のエネルギーをコントロールして安定した供給体制を構築することが求められています。

 

このように、地方自治体においても、エネルギーマネジメントの導入とその高度化が進むと⾒られ、国内の地域エネルギーマネジメント事業における設備・システム構築市場規模は、2018年度の200億円から、2020年度は250億円、2030年度には350億円に拡大すると予想されています。

2 VPP(バーチャルパワープラント、仮想発電所)

日本のVPP市場は、アジア太平洋地域で最大規模となる可能性を秘めています。VPPとは、全国各地に点在している太陽光発電などの再生可能エネルギーや蓄電池、EVのエネルギーリソースを、IoT技術を使って制御し、あたかも大きな一つの発電所のように機能させる仕組みです。電力系統の周波数や電力使用量の調整等を可能にするVPPは、電力の安定供給や品質安定化に有効なDR(デマンドレスポンス)の実現に不可欠です。太陽光発電や蓄電池などのエネルギー設備の普及が拡大してきたことに加え、政府のエネルギーシステム改革が進んできたこと、IoTが急激に進化してきていることで、日本ではVPPを実現できる環境が整いつつあります。

 

VPPやDRを用いて電力の市場取引や相対取引を行う事業「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)」を活発化させるために、日本では2016年からVPP構築のための実証事業がスタートしています。2019年度は72社が参画し、7つのグループが実証事業を実施しました。DRの制御指令を受けて一定の時間に必要な削減量まで需要量を変化させることができるか、さらに随時変わる指令に一定時間対応を継続できるかといったことが検証されました。従来の電気事業者だけでなく、コンビニエンスストアやビルオートメーション事業等、異業種からもVPP実証事業に参入しています(図表7)。

(図表7)2019年度のVPP実証事業者の事例

(図表7)2019年度のVPP実証事業者の事例
事業者 内容
関西電力
  • 家庭用から産業用まで多様なリソースをまとめる
ローソン
  • 約1000店舗の機器を遠隔管理
アズビル
  • 複数の業務用ビルの設備をマネジメント
東京電力 × Goal connect × NEC
  • 複数のアグリゲーターが共通基盤で連携
SBエナジー
  • 再エネの出力抑制を、電力消費を増やすDRで回避
エナリス × KDDI
  • さまざまな家庭用蓄電池を高度に制御
中部電力 × 京都大学
  • 大学の複数の建物をひとつに見立てて管理

(2)再生可能エネルギー


1 洋上風力発電

風力発電市場は、従来の陸上風力発電に加え、近年では洋上風力発電も注目されています。国際エネルギー機関(IEA)の2019年発表の報告書によると、日本の洋上風力発電の導入ポテンシャルは、EU、米国に次いで世界第3位で、今後の大幅な導入が期待されています。海洋国家である日本の洋上風力発電量は、2022年あたりから伸び始め、2030年には1.5GWの発電量を誇り、世界第7位にまで成長すると予測されています(図表8)。

「2019~2030年までの世界洋上風力発電量予測(単位:GW)」について各国の発電量を示した棒グラフ。 世界全体の洋上風力発電量の推移は、2019年5.8、2020年6.7、2021年9.7、2022年9.0GW、2023年9.4GW、2024年13.0GW、2025年21.6GW、2026年21.5GW、2027年24.6GW、2028年24.3GW、2029年30.0GW、2030年30.9GW。 中国、英国、カナダ、ドイツ、台湾、オランダ、フランス、韓国、デンマーク、日本、その他の11項目の発電量も表示。 毎年中国の発電量が最も多く、2024年以降は中国に次いで英国、カナダが上位を占める。 GWECのデータを元に作成。

2020年6月の一般海域における洋上風力発電オークションの初開催を皮切りに、日本の洋上風力発電は転換期を迎えています。2020年7月21日には、「長崎県五島市沖」、「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」、「秋田県由利本荘市沖」、及び「千葉県銚子市沖」の4つの有望区域が「促進区域」に指定され、2019年4月に施行された「再エネ海域利用法」に基づく洋上風力発電事業者の公募が開始されました。2020年12月に発表された「洋上風力産業ビジョン(第一次)」では、「2030年までに1,000万kW、2040年までに3,000万kW~4,500万kWの案件を形成」、「国内調達比率を2040年までに60%にする」、「着床式発電コストを2030~2035年までに、8~9円/kWhにする」等の市場拡大に対する具体的な目標を設定しています。

再エネ海域利用法の施行に伴い、電力会社や商社に加えて、ガス会社や投資会社も発電事業に名乗りを上げており、欧州で実績のある外資系企業も日本の市場に関心を持ち、日本企業との協業を検討しています。実際に、GE、Vestas、RWE, ENGIE等の多くの外資系企業が、日本企業との合弁や現地法人を設立しており、政策面、産業面ともに勢いを増しています。

また、風力発電業界は、豊富な海外の知見を日本に呼び込み、洋上風力の事業拡大を促進するために、「日本洋上風力タスクフォース」を立ち上げ、業界全体で取り組む姿勢を見せています。さらに、欧州でも実施されてきたような「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」が設立され、洋上風力事業を展開していく上での課題を整理し、必要とされる政策を明らかにするという官民協働で産業を拡大する動きも見られます。

2 太陽光発電

日本の太陽光市場は、世界で最も急速な成長を遂げた市場の一つです。2018年時点で、国内太陽光導容量は56ギガワットで、中国、米国に次いで世界第3位の規模を有します(図表9)。日本はさらなる市場拡大のため、様々な施策を実施しています。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、太陽光発電の大量導入社会を円滑に実現するための戦略として、新たな技術開発指針「太陽光発電開発戦略2020 (NEDO PV Challenges 2020)」を策定しました。

2018年の「各国の太陽光導入容量(単位:GW)」を比較した棒グラフ。 大きい順から、中国175GW、米国62GW、日本56GW、ドイツ45GW、インド28GW、イタリア20GW、英国13GW、オーストラリア11GW、フランス9GW、韓国8GW。 IEAのデータを元に作成。

同指針の中で、発電コストの低減を課題として提示しており、国内太陽光発電市場において、コストの面で特に優位に立つ外資系企業の攻勢が続くと見られます。カナダの太陽光パネル世界大手カナディアン・ソーラーは、パネル製造から発電所の建設と保守管理まで手掛けています。また、中国の順風インターナショナルクリーンエナジー傘下であるサンテックパワーは、太陽光発電所の遠隔監視システム、LED照明等を日本に投入しており、顧客の要望に合わせて各機器をセット提案し、太陽光パネルの販売に繋げています。このように、外資系各社も、これまで日本メーカーの強みであった顧客サポートを含めた「総合力」を売りにする戦略により、国内太陽光発電市場で存在感を強めています。

3 その他の再生可能エネルギー

地熱発電に関して、日本は米国、インドネシアに次いで世界3位にあたる2347万kWもの地熱資源がありながら、国内における地熱発電開発は遅れています。しかし、その原因の一つとなっていた国立・国定公園内に新設する建築物の高さに関する規制が2015年に撤廃されています。また、地熱資源を開発する上で必要な掘削の対象範囲が拡大されています。こうした規制緩和で、国内における地熱発電の導入量拡大が期待されているところです。政府は、2030年度までに地熱発電で、現在の3倍にあたる150万kWを発電することを目標としており、既に全国100ヵ所ほどで調査・発電所建設が始まっています。地熱発電所を推進していくための土壌は徐々に出来始めており、将来的に日本の地熱発電シェアは伸びていく見通しです。

バイオマス発電市場については、2012年にFIT制度が始まって以来、急激に拡大しています。一次エネルギー国内供給量に占める割合は3.5%で比較的小さな市場ですが、現在計画中や工事中のバイオマス発電所が今後稼働を開始することで、2021年度の国内バイオマスエネルギー市場規模は6,160億円に成長すると予測されています。エネルギー源の低炭素化や未利用資源の有効利用、地域産業の振興などに寄与するエネルギーであることから、バイオマスネエルギーへのニーズが高まっています。

さらに、一次エネルギー国内供給量で、特に、再生可能エネルギー型の水力として「中小水力発電」に注目が集まっています。巨大なダムを建設する必要はなく、河川の自然の急流の他、農業用水や上下水道を利用して発電を行う中型・小型のタイプの水力発電です。中小水力発電は、FIT制度スタート以降、徐々に認定量を増やしていますが、初期リスクや建設コスト等の課題から、開発途上の段階にあります。しかし、水資源に恵まれた日本では水力を使った発電への利用も昔から盛んで、国内でまかなうことのできる貴重なエネルギー源となっており、今後の更なる開発が期待されます。


(3)水素エネルギー


化石燃料に代わる未来のエネルギーとして期待されているのが、水素エネルギーです。水素は、水をはじめとした様々な資源から製造でき、利用時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーとして活用が期待されています。水素の製造に再生可能エネルギーの余剰電力を有効活用すれば、製造から使用までトータルでCO2を排出しない「カーボンフリー」なエネルギーにすることも可能になります。既に様々な実証実験が行われ、将来のエネルギーの中心的役割を担うことが期待されています。

水素を次世代エネルギーとして利活用すべく、2018年3月、トヨタや日産、ホンダの自動車メーカーの他、フランスの産業用ガス会社エア・リキード等のガス・エネルギー大手の計11社で、新会社「日本水素ステーションネットワーク合同会社」を設立し、2022年までに80カ所の水素ステーションを新設するとしています。日本政府は、2019年3月12日に「水素基本戦略」で掲げられた目標を実現するために、新たな「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定し、必要となる基盤技術の開発におけるスペックや、コストについての目標を定めました。

日本は水素エネルギーに関連する高い技術を持っており、水素燃料電池分野における特許出願件数は世界一です。日本の高い技術力を背景に、世界の燃料電池自動車市場における日本のシェアは、2018年に13.4%を占め、アメリカに次いで世界第2位の市場規模を有しています。2026年までの市場予測では、この規模が維持されると予測されています(図表10)。

「2018~2026年までの世界燃料電池自動車市場シェア予測(上位5か国)」を示した円グラフ。 2018年と2026年の2つの円グラフを比較。 2018年では、米国25.8%、日本13.4%、カナダ10.3%、韓国7.4%、中国7.3%、その他35.8% 2026年では、米国23.5%、日本12.7%、カナダ10.8%、韓国7.5%、中国8.6%、その他36.9%。 Allied Market Researchのデータを元に作成。

(4)全固体電池


現在様々な電子機器のバッテリーとしてリチウムイオン電池が広く普及していますが、液漏れや発火のリスクがあることから、それに代わる安全で信頼できるIoT機器のバッテリーとして「全固体電池」の開発が求められてきました。近年全固体電池にさらに注目が集まっている背景には、脱炭素化実現に向けてのEVの普及が急速に進展していることが挙げられます。

日本政府は、2030年までに乗用車の新車販売に占めるHVやEV等「次世代自動車」の割合を5~7割にする目標を掲げています。また、2030年代半ば以降はガソリン車の新車販売禁止とする目標を設定する方向で現在調整に入っています。このように、EV需要の増加に伴い全固体電池の需要も高まることから、その市場規模は今後ますます拡大すると見られます。


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