欧州149産業団体、次期欧州委に長期的産業政策立案を提言

(EU)

ブリュッセル発

2019年11月27日

欧州自動車工業会(ACEA)、欧州工作機械工業連盟(CECIMO)、欧州化学工業連盟(Cefic)など欧州の149産業団体は11月26日、12月1日に発足予定の次期欧州委員会が取り組む、EUの長期的産業政策に貢献するものとして、業種横断的な勧告を盛り込んだ共同提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を明らかにした。タイトルは「欧州産業の未来のための長期戦略-言葉から行動へ」。「ビジネスフレンドリーな政策環境」「ビジネスの中核としての持続可能性」「技能・教育の刷新」「研究・イノベーションの強化」「投資および資金アクセスの改善」「欧州単一市場の強化」「貿易および世界市場へのアクセスの強化」を優先すべき重点7項目と位置付け、野心的な産業政策の立案を欧州委に求めている。

通商政策では「中国」「インド」「米国」などへの対抗策を求める

今回の提言書は、欧州の農林水産業から製造業、サービス業までを含む149の産業団体で構成する、業種横断的な連合組織「インダストリー・フォー・ヨーロッパ(Industry4Europe)」が取りまとめた。ウルズラ・フォン・デア・ライエン新委員長率いる次期欧州委員会への政策協力を目的に、広範な産業界の意見を集約したとしている。

インダストリー・フォー・ヨーロッパの調整役を務めている欧州鉄道産業連合(UNIFE)のフィリップ・シトロエン事務局長は、熟練した労働力と品質と持続可能性に対する国際的な評価が欧州産業界の強みとの認識を示した上で、「産業(政策)を国の最優先課題と位置付ける諸外国との競争のため、EUには野心的な産業政策が必要」と指摘。欧州のための包括的で長期的な産業戦略を具体化する段階であることを訴えた。また提言書では、「産業政策を国の優先課題として推し進めている諸外国」として「中国」「インド」「米国」を名指ししている。

今回の提言書では、通商政策については「WTO改革」の必要性を指摘しつつ、公平な競争環境を確保するため、(EU側の)知的財産権強化を通じて、技術移転強制の問題(2019年5月22日記事参照)に対抗する必要があるとしている。また、自由貿易協定(FTA)では、対米通商交渉の推進を支持するとしたほか、既に発効・政治合意などしている対カナダ、日本、シンガポール(2019年11月22日記事参照)、メルコスール(2019年7月1日記事参照)の通商協定について過去5年の成功事例としたが、同時に協定内容の実施状況についてのモニタリングも優先課題と指摘(2019年11月22日記事参照)。特に中小企業やスタートアップ企業には、通商協定による特恵関税を活用するための情報の発信・普及が必要との問題意識(2019年11月19日記事参照)を示した。

なお、インダストリー・フォー・ヨーロッパは、次期欧州委のバルディス・ドムブロフスキス上級副委員長(人に優しい経済政策総括)、マルグレーテ・ベスタエア上級副委員長(欧州デジタル化対応総括)、ティエリー・ブルトン委員(域内市場・産業・デジタル単一市場担当)の名を挙げ、EUの政策関係者との協働を進めるとしている。

(前田篤穂)

(EU)

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