中国商務部、「EU新鉄鋼関税は保護主義」の認識示す、国内では「内巻」是正へ生産能力調整

(中国、EU)

調査部中国北アジア課

2026年06月03日

中国商務部は5月28日の定例記者会見で、EUが7月1日から新たな鉄鋼関税政策を実施予定(2026年4月17日記事参照)であることについて、「EUの措置は本質的に貿易保護主義であり、鉄鋼産業の競争力向上にはつながらず、中欧間の鉄鋼貿易や世界の産業・サプライチェーンの安定に影響を及ぼす」との認識を示した。その上で、中国側はWTOの枠組み内でEUと交渉中であるとし、「EUはWTO規則を順守し、中国の正当な権益を尊重するとともに、透明かつ公正・合理的な交渉を行うべきだ」と求めた。

中国の鉄鋼に関する政策では、中国工業情報化部が5月18日、「鉄鋼業生産能力置換実施弁法」〔工業情報化部原(2026)97号〕外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表している。同弁法は、業界の発展における新たな情勢と要求を踏まえ、2021年に発表された「鉄鋼業生産能力置換実施弁法」〔工業情報化部原(2021)46号〕(2021年5月14日記事参照)を改正したもの。生産能力置換とは既存設備の廃棄を条件に、新規設備の建設を認める制度で、その適用要件を一段と厳格化し、政策による誘導および監督管理を強化した(注1)。具体的には、(1)全国の製鉄・製鋼生産能力の置換比率(廃棄する生産設備と新規に建設する設備の生産能力の比率)を1.5対1以上(合併・再編の場合は1.25対1以上)へ引き上げることや、(2)名目だけの能力削減を防ぐため企業をまたいだ生産能力置換を2年間の移行期間後に原則廃止(実質的な合併・再編のみに限定)、(3)置換計画の先延ばしを防ぐため計画の有効期間を24カ月とすることなどを定めた。同弁法発表の背景として同部は、供給側の構造改革を通じた生産能力削減の成果を維持・強化するとともに、「内巻式」競争の抑制を図ることが狙いだと説明している。

中欧関係をめぐっては、商務部報道官は5月30日、中欧間で貿易・投資に関する協議メカニズムの構築を検討中であることを明らかにしており、対話を通じた摩擦の解消に期待を示した。一方で、EUが一方的に新たな貿易手段による差別的措置を講じる場合、対抗措置も辞さない姿勢を示している(注2)。

(注1)2025年9月に発表された「鉄鋼業の安定的成長に関する作業方案(2025-2026年)」では、供給面において、生産能力と生産量の詳細な調整を行うことなどが示されていた(2025年9月26日記事参照)。また今回の改正では一部の低炭素製錬設備や電炉の建設などについて、差別化された置換比率を適用することでハイエンド化・グリーン化の発展を支援することも定められた。

(注2)5月29日に欧州委員会において対中関係に関する議論が行われたことについて、商務部の見方を問われた際の回答。EUによる一連の措置をめぐっては、サイバーセキュリティー法改正案に対するコメントの発表や(2026年5月7日記事参照)、EU外国補助金規則に基づく中国企業への調査を「不当な域外管轄措置」と認定する(2026年5月19日記事参照)などの動きがみられる。

(和田拓己)

(中国、EU)

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