EU、鉄鋼セーフガード措置の後継措置について合意、7月1日から実施へ
(EU)
ブリュッセル発
2026年04月17日
EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は4月13日、6月30日に終了する鉄鋼セーフガード措置の後継措置案(2025年10月14日記事参照)について、政治合意した(プレスリリース
)。世界的な過剰生産からEU鉄鋼産業を保護することを目的とし、今後両機関による正式な承認を経て、7月1日から実施する見込み。
合意内容は、関税割当枠(クオータ)を年間約1,830万トンに削減し、超過分への税率を現行の25%から50%に引き上げるなど、欧州委案の中核を維持しつつ、EU域内の供給網を安定させ、構造的な過剰生産に対応するためにいくつかの修正を加えた。
まず、四半期ベースで管理する割当量の未使用分は次の四半期に持ち越さない案に対し、実施1年目は事業者に柔軟性を与え、供給網を安定させるため、全ての製品カテゴリーで持ち越し可能とする。2年目以降は市場の混乱抑止のため、欧州委が特定の製品カテゴリーに関し、輸入圧力、割当枠の消化率や川下部門への供給可能性などを基に判断する。
両機関は第三国別の割当量配分において、鉄の溶解・鋳造国の証明を考慮する要素の1つと位置付けた。また欧州委は措置開始から2年以内に、溶解・鋳造国を国別割当量配分の基準とすべきか評価し、必要であれば新たな立法措置を行うとした。
対象品目は欧州委案の28から30品目に増やし、2年ごとに措置を見直すとしていたのを、発効開始から半年以内に欧州委が鋼管、一部のワイヤーや鍛造棒などを対象範囲に含めるか評価し、必要に応じ改正案を提示するとした。さらに1年以内に、2度目の見直しを行い、特に相当量の鉄鋼を原材料とする、または含有する製品に関し、措置の調整が必要か評価し、以降は2年ごとに見直すとした。加えて、欧州委が定期的に措置の実効性を評価し、市場や世界の過剰生産能力の推移に応じた必要な調整を提案可能とした。
欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は4月14日、新措置は1,500万トンの域内生産能力の回復と23万人の雇用(間接雇用も含む)の維持に資すると合意を歓迎した(プレスリリース
)。EUROFERによると、域内の鉄鋼需要が低迷する中、2025年第4四半期(10~12月)の輸入量は前年同期比250万トン増の990万トンと記録的な高水準となり、EU市場に上市される平鋼製品の約3分の1を輸入品が占めている。また、OECDによると世界の過剰生産能力は2025年に約6億4,000万トンに達し、米国の鉄鋼・アルミ・銅製品に対する関税措置(2026年4月3日記事参照)など、主要市場において保護主義が高まっている。EUROFERは、新措置に係る合意は「深刻さを増す危機への対応の始まりに過ぎない」と強い危機感を示した。その上で、域内の需要維持やバリューチェーン全体の保護に向け、ユーザー業界に対し同様の対策が必要と強調したほか、エネルギー価格引き下げやEU炭素国境調整メカニズム(CBAM、2026年4月15日記事参照)の実効性向上、過剰生産を巡り関係国との連携強化も緊急に必要と主張した。
(滝澤祥子)
(EU)
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