鉄鋼業生産能力置換実施弁法(改正版)を発表

(中国)

中国北アジア課

2021年05月14日

中国工業情報化部は5月8日、「鉄鋼業生産能力置換実施弁法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(改正版)」を発表した。2018年に施行して以来初の改正となり、6月1日から実施する。国家目標である2060年のカーボンニュートラル達成に向けて、二酸化炭素(CO2)排出削減の重点産業の鉄鋼業の過剰生産能力を一層引き下げることを目指す。

弁法では、これまで新規プロジェクトの申請企業に対し、新規生産設備(注1)の建設に際し、既存設備の廃棄を義務付ける生産能力置換を定めてきたが、改正版ではこれをより厳しく運用する。大量のCO2を排出する高炉製鋼法による新規プロジェクトの場合、生産能力の置換比率(廃棄する生産設備と新規に建設する設備の生産能力の比率)について、大気汚染の深刻な地域では1.5:1、それ以外の地域では1.25:1と定めている。設備の生産能力も各種の炉内容積に応じて、弁法内に細かく定義した。統合・再編を行った場合、置換比率は優遇される。工業情報化部は「生産設備の場所、型番、規模のいずれかが変更になる場合は、全て置換の対象になる」としている。例外として、高炉を電炉に置き換える場合や、高炉を使用しないコレックスやファイネックスといった新しい製鉄法の場合などについては1:1の比率での置換を認める。

関連して発展改革委員会は5月6日、「鉄鋼精錬プロジェクト登録管理にかかる意見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、鉄鋼企業に対して、同弁法に基づき「新規プロジェクトの登録前に生産能力置換案を公示、および公示内容を証明する材料を必ず提出しなければならない」とした。

国家発展改革委員会と工業情報化部は4月1日に「2021年に鉄鋼過剰生産能力の解消について、過去を振り返り、粗鋼生産量の減少などを研究・実行する」との通知を発表しており、中国鉄鋼工業協会は2021年の粗鋼減産を表明している(2021年4月20日記事参照)。また、5月1日からは財政部税務総局16号公告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、鉄鋼製品146品目に対する輸出増値税還付を廃止、国務院税則委員会4号公告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで鉄鋼製品20品目の輸入関税をゼロに引き下げ、5品目の輸出関税を引き上げた(注2)。

工業情報化部は弁法の発表に際して「鉄鋼生産能力の新規増設を徹底して制止する」とし、減産分については輸出の抑制と輸入により国内供給を賄うべく、関連措置を相次いで取っている。

(注1)具体的には高炉、転炉、電炉の3つの炉を指す。高炉製鋼法では、鉄鉱石を溶かして還元する銑鉄を製造する際に、高炉、銑鉄を精錬する際に転炉が使われる。

(注2)対象品目は、各公告のリンク先に掲載されている添付文書で確認できる。

(江田真由美)

(中国)

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