AI需要と地政学が迫るエネルギー再編、「グローバル・エネルギー・フォーラム2026」が開催

(米国)

ニューヨーク発

2026年06月30日

ロイター通信主催のグローバル・エネルギー・フォーラムが、62324日にかけてニューヨーク市内で開催され、世界のエネルギー情勢を巡る最新動向が議論された。特に、地政学リスクの高まり、人工知能(AI)向けデータセンター(DC)による電力需要の急増、電化の進展に加え、再生可能エネルギー(再エネ)や小型モジュール炉(SMR)を含むエネルギーの多様化、電力の強靱(きょうじん)化が主要テーマとして挙げられた。DCサプライチェーンや電気など公益事業に関わる企業のみならず、米国、欧州、カナダ政府機関など、多岐にわたる関係者が参加した。

写真 ライトDOE長官へのインタビューの様子(ジェトロ撮影、6月24日)

ライトDOE長官へのインタビューの様子(ジェトロ撮影、6月24日)

フォーラムではまず、2026年初頭の米国によるベネズエラへの石油制裁緩和、イラン情勢の急変やホルムズ海峡の供給混乱など、地政学的要因がエネルギー市場に与える影響について議論された(2026年6月19日付地域・分析レポート参照)。ロイターの編集者リズ・ハンプトン氏は「従来以上に外交政策がエネルギー市場を左右する主要因となっている」と指摘し、情報源は、これまでの米国エネルギー省(DOE)や内務省から、ホワイトハウスや国務省へと変化したと指摘した。

地政学的要因に加え、DC電力需要の急拡大は、送電網の接続待機列の増大、変圧器・蓄電池などのサプライチェーンの逼迫を誘引している。米国では2027年までに25年比で2倍のDC電力需要増が見込まれている(注1)。

こうした状況を踏まえ、フォーラムでは電力強靱化の重要性が繰り返し強調された。既存送電網の利用率の向上、デジタルツインやAIを活用した需給予測、電力安定化装置の導入、ブラウンフィールド活用による許認可の迅速化など、各国や企業が取り得る対策が提示された。また、極端気象や地政学リスクに備え、電力供給の「機敏性」そのものが価値を持つとの認識が共有された。

DCのような大規模・常時稼働型負荷に対し、特にSMRは安定供給・立地柔軟性・建設期間の短縮といった利点があり、再エネと組み合わせることで強靱化向上に寄与するとの意見が多く示された(注2)。

再エネについては、コスト上昇やサプライチェーン制約が課題として指摘された一方、AIによる需給予測や系統最適化の進展により、既存インフラから付加価値を引き出せるとの見方が示された。一方で、ゲストとして登壇したDOEのクリス・ライト長官に対し、現政権の再エネ軽視の方向性に関する質問が会場から多く寄せられた。これに対しライト長官は再エネの重要性を認めつつも、「地政学的リスクを含めた危機対応の局面では、変動性の高い再エネだけではなく、安定電源の確保を優先せざるを得ない」との立場を示した。

日本企業にとっても、電力確保、送電網接続、再エネや原子力を含む多様な電源選択肢の検討が、海外事業展開における重要な論点となりつつある。

(注1DC電力需要拡大については2026年5月22日記事2026年4月15日記事2026年3月30日付地域・分析レポート参照。

(注2)一方でSMRの商業化には一定の期間を要するため、短期的には大型原子炉や天然ガスが安定電源となる(2026年6月29日記事参照)。

(久峨喜美子)

(米国)

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