トランプ米大統領、EUに対米関税引き下げを要求、期限は7月4日
(米国、EU)
ニューヨーク発
2026年05月14日
米国のドナルド・トランプ大統領はEUに対し、米国の独立記念日である7月4日までに、対米関税率を2025年8月に発表した共同声明に沿って引き下げるよう求めた。5月7日、自身のSNS上に投稿した。EUが引き下げに応じない場合、米国の対EU関税率を引き上げる可能性を示唆した。
米国政府と欧州委員会は2025年8月、米国の関税措置を巡る通商協議に関する共同声明を発表した。この中で米国は、EUが全ての米国製工業製品に対する関税を撤廃し、米国産農水産品に対する特恵市場アクセスを認める法案の提出を条件に、1962年通商拡大法232条に基づきEU原産の自動車・同部品に賦課する追加関税率の引き下げを定めていた(2025年8月22日記事参照、注1)。声明を踏まえ、EUは同月、これらの条件を満たす法案を発表し(2025年9月1日記事参照)、米国政府も同年9月、8月以降に輸入されたEU原産の自動車・同部品に対する追加関税を引き下げた(2025年9月25日記事参照)。
今回トランプ氏が関税率引き上げを示唆した背景には、欧州議会で承認された当該法案が現在も成立していないことへの不満がある。トランプ氏は2026年5月1日、自動車・同部品に対する関税率を25%へ引き上げる方針を自身のSNS上で発表した。5月5日には、米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表と欧州委のマレシュ・シェフチョビチ委員(通商・経済安全保障、EU機構関係・透明性担当)が、法案に関して協議を行った。さらに5月7日には、トランプ氏と欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が電話で関税措置などについて協議した(米通商専門誌「インサイドUSトレード」5月5日、5月7日)。
なお、法案が成立した場合でも、米国が実際に関税率を引き下げるかどうかは不透明だ。現在EU側で最終調整されている法案には、米国が関税率の上限引き上げや対象品目の拡大などを行った場合に合意内容を停止する条項や、協定の適用期間を2028年3月末までとする「サンセット条項」、EU原産の鉄鋼・アルミニウム製品に対する関税引き下げを米国に求める「サンライズ条項」といった修正案が含まれている。これに対し、グリア代表は2026年5月4日、これらの修正案が「米国の輸出を制限することになる」と批判している(CNBC5月4日)。
一方、EU側にも米国の新たな関税措置に対する懸念が存在する。米国は3月以降、1974年通商法301条に基づく2つの調査を実施している(2026年5月7日記事、2026年5月12日記事参照、注2)。これは、7月24日までの時限的措置である同法122条に基づく10%の輸入課徴金(関税)に代わる新たな関税措置の発動を目的としたものとみられている。このため米国は、EUで法案が成立した後であっても、新たな関税措置を導入する余地を残している。法案の成立の有無にかかわらず、米EU間の通商環境は予見性が低い状態が続くと見込まれる。
(注1)具体的には、232条関税の一般関税率(MFN税率)に25%上乗せする方式から、MFN税率と232条関税率の合計が15%となるように232条関税を設定する方式へ変更(ただし、MFN税率が15%以上の場合は232条関税を上乗せしない)することが定められた。
(注2)製造業における過剰生産能力や、それに関連する政策や慣行に関する60カ国・地域を対象とした調査、および強制労働により生産された産品の輸入禁止措置の実施状況に関する16カ国・地域の調査。EUは両調査の対象地域に含まれている。
(滝本慎一郎)
(米国、EU)
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