米USTR、強制労働産品の輸入禁止措置に関する301条公聴会を開催、参加者は迂回阻止へ提言
(米国)
ニューヨーク発
2026年05月07日
米国通商代表部(USTR)は4月28~29日、強制労働を使用して生産された産品について、主要貿易相手国・地域が実施している輸入禁止措置の運用状況に関する公聴会
を行った。本公聴会は、USTRが2026年3月に開始した、1974年通商法301条に基づく調査の一環で開催された(2026年3月13日記事参照、注1)。米国内外の人権団体や米国の各種業界団体、調査対象国・地域のうち一部の政府や関連団体が証言した(注2)。
公聴会では、調査対象国・地域を経由して米国に迂回輸入する強制労働産品の取り締まりを強化する必要性が多く提言された。鉄鋼製造業者協会(SMA、注3)のエグゼクティブ・バイスプレジデントであるブランドン・ファリス氏は、中国企業がウイグル強制労働防止法(UFLPA、注4)の回避のため、強制労働を利用する拠点を中国内外に移動していると主張し、UFLPAの取り締まり範囲拡大の必要性を示唆した。米国ライン管製造業者協会(ALPPA)で貿易担当顧問を務める弁護士のティモシー・ブライトビル氏は、中国に対する追加関税措置が導入された2019年以降、中国から米国への大口径溶接管の輸入量は減少したものの、韓国からの輸入が増加したことを指摘。韓国には労働者を保護する法制度が存在するにもかかわらず、強制労働産品に対して十分に執行されていないと主張した。
強制労働産品の流入阻止策としての関税については、業界の立場によって意見が分かれた。米国切削工具協会(USCTI)でディレクターを務めるジェフ・シーダーストロム氏は、切削工具向けの中国産のタングステン鋼の製造に強制労働が用いられ、これが中国産原材料の価格優位性を不公正にもたらしていると主張し、追加関税の必要性を訴えた。一方で、米国石油協会(API)で税・貿易・会計担当ディレクターを務めるジョン・ショーネッカー氏は、APIの会員企業が輸入している国は強制労働関連規制を厳格に運用していると主張し、これらの国の特定製品は米国の石油産業に必要かつ米国内調達が困難な品目であるため、新たな輸入制限措置は導入しないよう求めた。
人権団体などからは、関税措置は強制労働への対処において最終手段であるべきという提言や、他国・地域が米国と同様の政策を推進できるような支援を提供すべきといった訴えがあった。また、中国国際商業会議所(CCOIC)で外部顧問を務めるミシェル・ザン氏は、2月に米国の連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置を違法と認定した後、わずか1カ月未満でUSTRが301条調査を開始した点を指摘した。その上で、調査の目的が新たな関税の導入にある場合、その関税の適法性はあらためて訴訟の対象になり得ることを示唆した(通商専門誌「インサイドUSトレード」4月29日)。
最高裁によるIEEPA関税の違法判決を受け、ドナルド・トランプ大統領は1974年通商法122条に基づき、全ての輸入に原則10%の課徴金を課した(2026年2月24日記事参照)。ただし122条に基づく課徴金は7月24日に期限を迎えるため、トランプ政権はそれまでに301条に基づく(注5)新たな関税措置を導入するのではないかと目されている。
(注1)301条は、外国の措置、政策、慣行が不合理または差別的で、米国の商業に負担や制限を与えるなどと調査を通じて判断された場合に、外国の製品に追加関税など輸入制限措置を講じる権限や、外国のサービスに料金や制限を課す権限などをUSTRに認める。
(注2)本調査の対象となっている60カ国・地域のうち、公聴会に登壇したのは、バハマ、中国、エクアドル、エジプト、グアテマラ、インド、インドネシア、メキシコ、パキスタン、ペルー、ベトナムの11カ国の政府、商工会、業界団体。全ての登壇者はUSTRの公開資料
に掲載されている。
(注3)電気アーク炉に用いられる鋼材メーカーの業界団体。
(注4)強制労働によって生産されたものではないと企業が明白に証拠を示すことができない限り、新疆ウイグル自治区が関与する産品の米国への輸入を禁止する、2022年6月施行の米国法。
(注5)USTRは現在、16カ国・地域を対象に過剰生産能力を巡る301条調査も並行して実施している(2026年3月12日記事参照)。
(滝本慎一郎)
(米国)
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