米USTRによる過剰生産に関する301条公聴会、業界団体が対中措置の導入と同盟国への適用除外を要求
(米国、中国)
ニューヨーク発
2026年05月12日
米国通商代表部(USTR)は5月5~8日、16カ国・地域(注1)の製造業における過剰生産能力や過剰生産に関連する政策や慣行に関する公聴会
を開催した。本公聴会は、USTRが2026年3月に開始した、1974年通商法301条に基づく調査の一環で実施された(2026年3月12日記事参照、注2)。
公聴会では、多くの証言者が、中国の非市場的な政策・慣行によって生じた過剰生産への懸念を示す一方で、輸入制限措置は対象を限定するよう求めた。全米民生技術協会(CTA)で国際貿易担当シニア・バイス・プレジデントを務めるエド・ブリズトワ氏は、広範な品目を対象とした輸入制限措置は米国内での製造コストを押し上げる要因になると指摘し、過剰生産を助長することが明らかな非市場的慣行に対象を限定した措置を導入すべきと訴えた。情報技術・イノベーション財団(ITIF)で貿易、知的財産、デジタル技術ガバナンス担当アソシエイト・ディレクターを務めるロドリゴ・バルボンティン氏は、中国が先端産業で「競争上の優位性を得るために、過剰生産を武器として利用している」とし、中国に対する輸入制限措置を講じるよう訴えた。また、米国太陽エネルギー製造業者連合(SEMA)や特殊運送・荷役協会(SC&RA)などの業界団体も、中国への措置を求めた一方、同盟国は措置の対象から除外すべきだと主張した(米通商専門誌「インサイドUSトレード」5月6日)。
他方、鉄鋼・アルミニウムの業界団体は、中国の過剰生産への懸念に加え、他国でも同様の慣行が行われていると主張した。米国鉄鋼協会(AISI)で公共政策担当シニア・バイス・プレジデントを務めるジェレミー・ヘクハウス氏は、中国産品が大規模な国家補助金によって支えられていると主張するとともに、インドも自国産業に多額の補助金を支給していると述べた。
なお、米国に輸入される鉄・アルミに対しては、1962年通商拡大法232条に基づく追加関税が既に課されており、これに上乗せするかたちで追加関税を課すべきかについては、証言者によって意見が割れた(「インサイドUSトレード」5月8日)。
米国内で十分に製造されていない品目については措置の対象外とするよう求める業界団体もあった。全米小売業協会(NRF)でサプライチェーン・税関政策担当バイス・プレジデントを務めるジョン・ゴールド氏は、衣料品や家電など消費財セクターでは、米国内で消費者需要を満たせるほど生産できていないと指摘した。その上で、これらの品目の輸入は過剰生産ではなく、米国の経済構造に起因するものだと主張した。
トランプ政権は2月、1974年通商法122条に基づき10%の輸入課徴金(関税)を発動したものの(注3)、7月24日までの時限的措置となっている。このため、現在行われている301条調査は、これに代わる新たな関税措置の発動を目的としたものだとみられている(注4)。現在行われている2つの調査を経て新たな関税措置が発動した場合、対象国・地域がどこまで絞り込まれるか、また対象品目が従来の関税措置とどのように異なるかが注目される。
(注1)日本、韓国、中国、台湾、EU、スイス、ノルウェー、ベトナム、カンボジア、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、インド、バングラデシュ、メキシコの16カ国・地域。
(注2)301条は、外国の措置、政策、慣行が不合理または差別的で、米国の商業に負担や制限を与えるなどと調査を通じて判断された場合に、外国の製品に追加関税など輸入制限措置を講じる権限や、外国のサービスに料金や制限を課す権限などをUSTRに認める。なお、USTRは現在、60カ国・地域を対象に強制労働を使用して生産された産品の輸入禁止措置の実施状況を巡る301条調査も並行して実施している(2026年3月12日記事参照)。
(注3)米国連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を違法と判断した後、ドナルド・トランプ大統領は「米国は貿易赤字を抱え、海外に投入する資本と労働から純利益を得ておらず、国外に流出する移転支払いが流入を上回っている」などとして、122条に基づいて10%の関税を課した(2026年2月24日記事参照)。
(注4)なお、米国国際貿易裁判所(CIT)は5月7日、122条関税を違法とする判決を下した(2026年5月11日記事参照)。
(滝本慎一郎)
(米国、中国)
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