グリア米USTR代表、貿易赤字国への関税継続とUSMCA原産地規則強化の必要性を強調
(米国、中国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2026年05月29日
外交問題評議会(CFR)は5月26日、米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表と、CFR会長で元USTR代表のマイケル・フロマン氏による対談形式のセミナー
を開催した。グリア氏は、米国の貿易赤字額が大きい国・地域に対する関税措置の必要性を強調したほか、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)における原産地規則強化の必要性を訴えた。
対談では、フロマン氏が米国のインフレ率に言及し(2026年5月13日記事参照)、物価抑制の観点から安全保障上重要でない品目の関税引き下げの可能性について質問した。これに対しグリア氏は、これまでにも追加関税の対象外品目を設ける措置を講じてきたことに触れつつも、「米国があらゆるものの最終消費者となり、巨額の貿易赤字を抱え続ける状態は望んでいない」とし、同盟国であっても大幅な対米黒字を抱える国・地域に対しては関税を引き下げるべきではないとの考えを示した。
国際貿易の枠組みについては、フロマン氏が「トランプ政権の方針は、関税を用いた2国間交渉を積み重ねているにすぎず、新しいシステムを構築しているわけではない」と指摘した。グリア氏は、WTOの基本原則の1つである最恵国待遇(MFN)について、安全保障上重要でない一部の品目には適用が継続される可能性を示しつつ、重要品目には適用されないとの見解を示した(注1)。
5月に行われた米中首脳会談について(2026年5月19日記事参照)、追加関税を維持し、管理貿易的なアプローチを継続するため、両国間における貿易委員会と投資委員会の新設に合意し、戦略的安定の方針を貫いたことで「目的を果たした」と評価した。貿易委員会については、設置に向けたパブリックコメントの公示案は既に用意していると明らかにした。
7月1日に見直しを迎えるUSMCAについて、見直しの過程で「米国産品の割合を高めるための原産地規則について議論する」と述べた。また、メキシコとの間で貿易赤字が存在する限り、関税賦課は避けられないとした。なお、USTRは5月27日、メキシコとの公式交渉のスケジュールを発表
した。第1回は5月28~29日にメキシコ市で、経済安全保障と原産規則をテーマに実施する。第2回は6月16~17日に首都ワシントンで農業と公正な競争条件をテーマに実施し、第3回は7月20日の週に再びメキシコ市で行う予定だ。こうした日程から、USTRは見直し会合後も交渉が継続される可能性を示唆している(注2)。一方、カナダについては、中国と並び、米国の関税措置に対して報復措置を講じた国として批判した。
なお、現在課されている1974年通商法122条に基づく10%の関税は、原則として150日間の期限が設けられており、7月24日に期限を迎える(2026年2月24日記事参照)。これに対しグリア氏は、「同法は再適用について特段の規定を設けていない」と指摘し、国際収支赤字への対応が必要な限り、いつでも再適用が可能であるとの見解を示し、将来的な再適用に含みを持たせた(注3)。
(注1)トランプ政権に近いとされるシンクタンクに加え、伝統的な民主党系・共和党系のシンクタンクの有識者も、トランプ政権以降もMFNが適用されないとの見通しを示している。詳しくは、2025年9月10日付地域・分析レポート参照。
(注2)2020年7月1日に発効したUSMCAは、条文上、発効から16年後に失効すると定められている。ただし、発効6年後に見直し会合の実施が規定されており、この見直しで3カ国が延長に合意すれば、合意時点から16年間延長される。見直しで延長に合意できなかった場合、その後も毎年見直しが継続され、合意に至った時点でそこから16年間延長される。合意に至らない場合、USMCAは条文に従い2036年に失効する。USMCA見直しの見通しについては、2026年2月20日付地域・分析レポート参照。
(注3)米国国際貿易裁判所(CIT)は5月7日、トランプ政権が米国の「大規模かつ深刻な国際収支赤字」を十分に証明していないとして、提訴した民間企業2社および1州に対する122条関税の賦課は違法だとの判決を下した(2026年5月11日記事参照)。ただし、トランプ政権は上訴しており、最終的な判断は示されていない。
(赤平大寿)
(米国、中国、メキシコ、カナダ)
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