米国際貿易裁判所、122条関税に違法判決、ただし関税を巡る不確実性は続く

(米国)

ニューヨーク発

2026年05月11日

米国国際貿易裁判所(CIT)は5月7日、1974年通商法122条に基づく10%の輸入課徴金(関税)について、違法とする判決PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を下した。香辛料や玩具を輸入する米国の民間企業2社と24州が、122条関税は違法だとしてトランプ政権を訴えていた。

122条は「大規模かつ深刻な国際収支赤字」などに対処するため、大統領に最大で150日間、15%を超えない範囲で関税などを課す権限を与えている。ドナルド・トランプ大統領は、連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を違法と判断した後、「米国は貿易赤字を抱え、海外に投入する資本と労働から純利益を得ておらず、国外に流出する移転支払いが流入を上回っている」などとして、122条に基づいて10%の関税を課していた(2026年2月24日記事参照)。

一方で、米国が「大規模かつ深刻な国際収支赤字」の状態にあるか否かについては見解が分かれ、原告側は「現代の変動為替相場制の下では、同条が想定する『大規模かつ深刻な国際収支赤字』は成立し得ない」「大統領は国際収支赤字の概念を経常収支赤字にすり替えている」などとして、122条関税の賦課を決めた大統領布告は、同条の発動要件を満たしていないと主張していた。これまでに122条に基づく措置が発動されたことはなく、「国際収支赤字」の言葉の詳細な定義について裁判所が判断する機会がなかったため、判決の行方が注目されていた(2026年2月27日記事参照)。

こうした状況に対しCITは、122条が「国際収支赤字」と「貿易収支黒字」を明確に区別しているといった理由から、同布告は、米国が「大規模かつ深刻な国際収支赤字」にあることを証明していないと結論付けた。その上で、トランプ政権に対し、原告の民間企業2社とワシントン州に対して、122条関税の恒久的な賦課の禁止と、既に支払われた関税を利子付きで返還するよう命じた。ワシントン州については、州立のワシントン大学が直接の輸入者となり関税を支払っていたことから、訴えが認められた(注1)。一方で、それ以外の原告の州の訴えについては、実際に関税を支払っておらず、間接的な影響しか主張していないことから、原告となる「適格性」が欠如しているとして棄却した。判決には2人の判事が賛成し、1人が反対だった。政治専門紙「ポリティコ」(5月7日)は、「裁判所は、関税を支払った、あるいは支払いを続けている数十万の輸入者に対して全国的な救済措置を命じることはしなかったが、他の企業が同様の救済を求める法的措置において参照し得る判例を確立した」と伝えた。

なお、122条に基づく関税措置は7月24日で期限が切れる。トランプ政権は5月8日に連邦巡回控訴裁判所へ上訴しており、最終的な判決が出るのは期限後になるとみられている(注2)。また、トランプ政権は、同法301条に基づいて主要な貿易相手国・地域の過剰生産能力(2026年3月12日記事参照)と強制労働産品の輸入禁止措置(2026年5月7日記事参照)に関する調査を行っており、7月24日の期限直後にこれらを根拠とする新たな関税措置が導入される可能性があるため、関税を巡る不確実な状況は当面続く見通しだ。

(注1)IEEPA関税に関する判決とは異なり、今回は訴えが認められた企業・州に対してのみ、関税の還付などが認められた。

(注2)執筆時点で控訴裁は判断を示していないが、米国の通商政策に詳しい弁護士事務所によると、IEEPA関税を巡る裁判と同様に、CITの判決後も、最終判断が示されるまでは関税措置は継続されるとみられる。

(赤平大寿)

(米国)

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