グリア米USTR代表、通商政策の最優先課題はAGOAの改正・延長やカナダの対米報復措置

(米国、アフリカ、カナダ)

ニューヨーク発

2026年04月27日

米国の連邦議会下院歳入委員会は4月22日、2026年の米国の通商政策をテーマに、米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表を召喚した公聴会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを開催した(注1)。

グリア代表は冒頭陳述PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、ドナルド・トランプ大統領がかねて問題視している貿易赤字を取り上げ、トランプ政権下での関税措置などによって貿易赤字は減少傾向にあると述べた。また、貿易赤字と経常収支赤字は国家の緊急事態だと述べ、1974年通商法122条に基づく課徴金の正当性を暗に示した。歳入委のジェイソン・スミス委員長(共和党、ミズーリ州)も、122条課徴金を支持すると述べている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注2)。グリア代表はまた、米国企業の輸出や投資の障壁となる外国の貿易慣行などをまとめた「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2026年4月2日記事参照)を基に、相手国・地域の貿易障壁を解消するための相互貿易協定(ART)を締結したと述べた。その上で、ARTによって米国の関税を引き上げて過度な輸入依存を低減し、製造業の国内回帰を促進すると同時に、外国の関税を引き下げて米国の輸出者の市場アクセスを拡大させた、と実績を強調した。

続く議員との質疑応答でグリア代表は、アフリカにおける中国の存在感の高まりに対処するため、アフリカ成長機会法(AGOA)の改正が最優先課題だと述べた。AGOAは、米国とサブサハラ地域間の貿易投資拡大や、同地域の持続可能な経済成長の促進などを目的に、サブサハラ産品の関税を免除する制度で、2026年12月31日に期限が切れる(注3)。グリア代表は、具体的な延長年数については明かさなかったものの「複数年延長するために議会と協力する」と述べた。スミス委員長も、AGOAがアフリカにおいて、「中国やロシアのような国々の有害な影響に対抗する一助となる」として、長期間の延長が不可欠との認識を示している。

グリア代表はまた、米国の関税に対する報復措置としてカナダのほとんどの州で米国産アルコールの販売が禁止されている点について、「何らかの対抗措置が必要になるかもしれない」と批判した。加えて、オンライン・ストリーミング企業が、カナダ国内での収益の5%をカナダ政府に拠出することを義務付ける規制について、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しで(注4)、「カナダと協議したい数多くの課題の1つ」と指摘した。そのほか、カナダにおける乳製品の市場アクセスの障壁については、USMCA見直しで解決されない場合、対抗措置を取る可能性があると述べた(注5)。こうしたカナダとの通商上の摩擦については、公聴会に参加した共和、民主両党の議員も指摘したため、政治専門紙「ポリティコ」(4月22日)は、「カナダにいら立ちを募らせているのは、トランプ政権だけではないことが浮き彫りになった」「(USMCAの)将来にとって不吉な兆候」だと指摘した。

(注1)上院で通商を所管している財政委員会でも、4月23日に同様の公聴会が予定されていたが、延期外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。

(注2)連邦最高裁判所は2月20日に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を無効と判断した。判決を受けて、トランプ政権は2月24日にIEEPA関税の適用を停止するとともに、「大規模かつ深刻な米国の国際収支赤字」を理由に122条課徴金の適用を開始した(2026年2月24日記事参照)。だが、米国ではそのような状態ではないとして、課徴金の停止を求める訴訟が起こされている。

(注3)AGOAは2025年9月30日に失効したが、2026年2月3日~12月31日の期間で再開されている(2026年2月5日記事参照)。

(注4)2026年7月1日のUSMCAの見直しに向けて、米国はメキシコと協議を行っているが、カナダとは開始していない(2026年4月22日記事参照)。USMCA見直しの見通しについては、2026年2月20日付地域・分析レポート参照

(注5)米国はカナダの乳製品に対する関税割当が、不当に高い関税を課しているなどとして長年、課題視している(2026年4月9日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国、アフリカ、カナダ)

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