カナダの対米報復措置に懸念を表明、2026年外国貿易障壁報告書(カナダ編)

(米国、カナダ)

調査部米州課

2026年04月09日

米国通商代表部(USTR)は3月31日に公表した2026年版「外国貿易障壁報告書(NTE)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(2026年4月2日記事参照)で、カナダに関して(1)貿易協定、(2)輸入政策、(3)貿易の技術的障壁(TBT)・衛生植物検疫(SPS)障壁、(4)政府調達、(5)知的財産保護、(6)その他の非市場的政策および慣行、(7)労働の7項目を取り上げた。昨年から新たに政府調達の項目が増え、2ページ拡大し、8ページを充てた。

政府調達の章では、カナダの企業や資材を優先的に採用することを義務付けた「バイ・カナディアン(Buy Canadian)」政策(注1)に対し、米国企業からカナダの連邦政府契約を競う上で障壁となる懸念が報告されていると記載。また、オンタリオ、ケベック、ブリティッシュコロンビアの3州が、米国企業を入札から排除することを義務付ける規制や政策を実施したとして、こうした措置に対する懸念を引き続き表明するとともに、カナダに対し、全ての州および連邦の調達政策・規制が、WTO政府調達協定(GPA)におけるカナダの国際的な調達上の約束と整合的に実施されるよう求めるとした。

輸入政策の非関税障壁としては、カナダにおける酒類販売を指摘した。カナダのほとんどの州において、酒類は州が運営する管理公社を通じてのみ販売が許されており、この管理公社が定めるサービス原価に基づく価格上乗せ、取扱品目の制限、基準価格(酒類管理委員会が支払う意思のある最高価格、あるいは輸入製品がそれ以下で販売してはならない価格)、ラベル表示要件、流通政策などを市場参入障壁と認識し、米国産酒類のカナダ市場への展開を阻害していると指摘した。また、2025年12月31日時点で、アルバータ州およびサスカチュワン州を除く各州・準州の酒類管理委員会が、米国産アルコール飲料の取引を停止していることに対し引き続き深刻な懸念を表明し(注2)、米国産アルコール飲料が全ての州・準州の市場に即時かつ恒久的に復帰するよう、カナダに対し強く求めるとした。

その他の非市場的政策および慣行としては、カナダは強制労働を用いて生産された製品の輸入阻止を目的として「サプライチェーンにおける強制労働・児童労働との闘いに関する法律」を制定しつつも、強制労働による輸入禁止措置を効果的に執行していない可能性があり、人件費などのコスト抑制によりカナダ産およびカナダ国内の特定の製品に不公正な優位性をもたらす恐れがあると懸念を表した(注3)。

(注1)USTRの発表では、バイ・カナディアン政策は第1段階では、契約額が2,500万カナダ・ドル(約28億6,429万円、Cドル、1Cドル=約115円)以上の案件において、カナダの企業や資材の優先的な採用を義務付けている。また、2,500万Cドル以上の大規模な連邦政府の建設・防衛プロジェクトにおいても、カナダ産の鉄鋼、アルミニウム、木材製品の使用を義務付ける。2026年春までに実施予定の追加措置では、契約額が500万Cドル以上の案件にもこれらの要件が拡大される見込みとしている。

(注2)カナダの各州政府は米国による対カナダ関税の報復措置として、カナダの専売公社制を生かした米国産アルコールの販売禁止などで州別の対抗措置を打ち出している(2025年3月5日記事特集:米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を取り巻く環境参照)。

(注3)2026年2月に米国連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税などを無効と判断した後、トランプ政権は2月24日から1974年通商法122条に基づき、輸入品に対して10%の課徴金を課している(2026年2月24日記事参照)。その後、USTRは301条に基づき、3月12日にカナダを含む60カ国・地域を対象に強制労働産品の輸入禁止措置について、調査を開始した(2026年3月13日記事参照)。122条に基づく課徴金が7月24日に期限を迎えることから、その前に301条調査を終え、新たな関税措置を導入するとみられており、その際、NTEによる調査結果を活用する可能性が指摘されている。

(谷本皓哉)

(米国、カナダ)

ビジネス短信 915744dbead84a9f