米USTR、英国のEU食品関連規制への再接近、英国版CBAM導入に懸念、2026年外国貿易障壁報告書(英国編)

(米国、英国)

調査部米州課

2026年04月09日

米国通商代表部(USTR)は3月31日に公表した2026年版「外国貿易障壁報告書(NTE)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(2026年4月2日記事参照)で英国に関して、前年から4ページ拡大して、9ページを充てた。EUから離脱した英国は、EUから独立して法令や規則を制定することが可能であるとしながら、米国企業が不利益を被る可能性がある一部のEU規制に英国が整合を取るために再接近を図ろうとしている点に難色を示した。

USTRが特に問題視する点として、英国とEUが2025年5月の首脳会談で発表した「共通理解(Common Understanding)」を挙げている(2025年5月21日記事参照)。ここで英国は、将来的なEUとの衛生植物検疫措置(SPS)協定の一環として、食品安全、動植物検疫、農薬、動物用医薬品、有機製品などの分野でEUの食品関連規制に動的に整合させる方針を示した。このことは、EUによるホルモン処理牛肉の禁止や米国式の病原体低減処理(PRT)の不承認、米国とは異なる農薬残留基準(MRL)など、従来、米国がEU向け輸出の課題として指摘してきた問題点が英国市場でも恒常化する可能性を示唆している。

また、英国の国境管理システムである国境目標運用モデル(BTOM)は、輸入品を3つのリスクカテゴリーに分類し、商品および原産国・地域がもたらすリスク評価に基づいて国境管理を実施する。BTOMは、英国独自の衛生証明書の提出も求める。USTRは、BTOMがリスク区分を決定するために用いる一部のパラメーターについて、その公平性および科学的根拠に対し懸念を示したほか、EUとのSPS協定交渉(2026年3月11日記事参照)の進展次第で、BTOMや英独自の衛生証明書制度の位置付けが不透明になる懸念を新たに記した。

デジタル分野では、「2024年デジタル市場・競争・消費者法(DMCCA)」(注1)の運用についての記述が新たに加わった。同法に基づき英国競争・市場庁(CMA)が2025年10月に米国企業2社を「戦略的市場地位(SMS)」を有する事業者として指定したことを挙げ、これらの米国企業に追加要件が課され得る点を懸念としている。

英国のデジタルサービス税(DST、注2)(2020年3月23日記事参照)については、英国政府が2024~25年度に約8億ポンド(約10億ドル)を徴収し、そのうち数億ドル分を米国企業が負担した点が具体的に示された。USTRは2025年3月21日付の大統領令「海外による恐喝および不当な罰金・制裁から米国企業とイノベーターを守る」で調査が指示されたDSTに、英国のそれも含まれていることを挙げ、OECDの国際課税枠組みの先行きが不透明な中、通商上の対応を再検討する可能性をにじませている。

環境分野では、2027年に英国で導入が計画されている炭素国境調整措置(CBAM)(2025年12月15日記事参照)について、英国とEUは現在、相互の排出量取引制度(ETS)の連携について交渉中であり、両者が相互免除となれば、第三国である米国が相対的に不利になる可能性があると指摘している。

(注1)巨大デジタル企業の規制と消費者保護の枠組みを定め、反競争的な活動に迅速かつ効果的に対応する権限を政府に付与している。

(注2)英国内で特定のデジタルサービス(検索エンジン、ソーシャルメディア・プラットフォーム、オンライン・マーケットプレイス)を提供し、全世界での当該サービスの年間総収益が5億ポンド超、かつ英国ユーザーに関連付けられる英国内由来収益が2,500万ポンド超の企業を対象に、当該英国内由来のデジタルサービス収益のうち2,500万ポンドを超える部分に対して2%課税するもの。

(岩井晴美)

(米国、英国)

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