英国政府、CBAM導入で間接排出を2029年まで対象外に

(英国)

ロンドン発

2025年12月15日

英国政府は11月26日、2025~2026年度財政法案の立法化を通じ、炭素国境調整メカニズム(CBAM、注1)を予定どおり2027年1月1日から導入すると発表した。ただし、対象商品の生産に伴う間接排出量(注2)は、少なくとも2029年まではCBAMの対象から除外する外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。これは鉄鋼、製紙、プラスチックなど、エネルギー多消費産業への継続的な支援(注3)が必要と判断されたためとしている。

また政府は、石油精製所がエネルギー安全保障および国内産業基盤の維持に重要な役割を果たしていることを踏まえ、今後、燃料部門に関するエビデンス募集を実施し、将来的に石油精製品をCBAM対象に含めることの実現可能性および影響について検討する。

そのほか、2025年4月に実施された意見公募(2025年5月7日記事参照)を受け、CBAM法案には技術的な変更が加えられた。主な変更点は次のとおり。

  • CBAM賦課金の算出上の無償割当調整は、英国排出量取引制度(UK ETS)の無償割当を考慮し、各セクター別の排出量平均値に基づく。
  • 他国のCBAMで支払った炭素価格をより反映できるよう、炭素価格軽減措置を拡大する。
  • 二重の炭素価格負担を防ぐため、CBAM対象品の一部として英国に再輸入される原材料(注4)の体化排出量(注5)に対する免除措置を追加。
  • 英国の一時輸入品に含まれるCBAM対象商品の体化排出量については、関税を全額免除する。
  • 申告誤りによるCBAM賦課金の過払い分の返還請求期限を3年に設定。
  • グループ扱い(注6)による企業側の便益が限定的であることから、グループ扱い規定は削除する。

(注1)CBAMやUK ETSについては2024年5月27日付地域分析レポート「英国カーボンプライシング政策の今」を参照。

(注2)生産工程で消費される電力の発電に伴って排出される温室効果ガス(GHG)を指す。

(注3)生産活動においてエネルギー依存度の高い産業分野。政府は、エネルギーコスト上昇がエネルギー多消費企業に重大な競争上の不利をもたらすリスクに対処するために支援措置を講じている。

(注4)最終製品になる前段階の材料や物品のこと。

(注5)体化排出量(embedded emissions)とは、英国外から輸入された対象製品の生産に伴う(製品に含まれる)温室効果ガスの排出量。

(注6)全ての構成員が同一の支配下にあることなど一定の条件を満たす場合に、複数の構成員をグループとして扱い、CBAM申告書の提出およびグループ全体のCBAM債務の支払いをグループ代表者が代行することを認める制度。

(バリオ純枝)

(英国)

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