英国、2020年4月1日よりデジタル税を導入へ

(英国)

欧州ロシアCIS課

2020年03月23日

英国歳入関税庁(HMRC)は3月11日に発表された予算案(2020年3月18日記事参照)の中で、デジタル分野における課税に関する方針を発表した。これにより、2020年4月1日以降、各種デジタルサービス事業の収益のうち、英国のユーザーから生じた分に対し課税が行われる。同方針案は2019年7月に発表されており、同年9月まで意見募集が行われていた。

課税対象はソーシャルメディアサービス、検索エンジンやオンライン・マーケットプレイスを提供する企業で、当該事業からの収益が、世界で5億ポンド(約655億円、1ポンド=約131円)超、うち2,500万ポンド超が英国のユーザーからもたらされる企業。英国ユーザーから得られた収益のうち2,500万ポンドを超えた分に対し2%が課税される。なお、「英国のユーザー」とは普段英国に所在する個人、もしくは英国に設立されたその他の主体とされた。税額の計算は企業グループごとで行われるものの課税は寄与分に応じてグループ内の個社に対し行われる。また、英国内に法人税を課税可能な拠点を有するかを問わない。

今後、課税対象となる企業向けにガイダンスを発表する予定。

英国産業連盟(CBI)はこれに先立ち、同方針案に関し、二重課税、ユーザーへの価格転嫁の懸念や、デジタル産業の誘致や育成を目指す英国の産業戦略に反するメッセージとなるリスクを指摘した上で、OECDが目指す合意に基づく、国際課税ルールの策定までデジタル課税の導入は保留すべきとしている。また、英国テック産業の業界団体テックUKも3月11日、「疑問点が残る中でデジタルサービスへの課税の導入に政府が踏み込むのは不本意」としてOECDレベルで解決策を見つけることに注力すべきという声明を発表している。

デジタル税は米国からの反発も強い。フランスが2019年7月に同様の法案を可決(2019年7月16日記事参照)したところ、米国それに対し同年12月に報復関税案を発表するなど緊張が高まった(2019年12月3日記事参照)。今回の英国の発表に対しても、米国の業界団体、情報技術産業協議会から取り下げを求める声明が出されるなど、反発が予想される。

(山田恭之)

(英国)

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