米USTR、EUのCBAM本格実施やデジタル規制・標準化の執行強化を新たな貿易障壁として指摘、2026年外国貿易障壁報告書(EU編)
(米国、EU)
調査部米州課
2026年04月09日
米国通商代表部(USTR)が3月31日に発表した2026年版の「外国貿易障壁報告書(NTE)
」は、EUについて前年の34ページから拡大して45ページを充て、従来から指摘してきた問題のうち、特に2026年以降「実施・執行段階」に入る案件について、制度運用に伴い米国企業が負うコストや市場歪曲への懸念を指摘した。
中でも、2026年初から本格適用となり、2026年の排出分から課金徴収の対象となるEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)(2025年12月19日記事参照)について詳細な実施規則が2025年中旬まで公表されなかった点や、第三者検証機関の不足、デフォルト値に懲罰的な上乗せが含まれる点などを具体的に批判した。
政府調達の面では、EUの防衛産業向け投資計画「欧州防衛投資プロブラム(EDIP)」について、欧州製品購入条項などEDIP資金の65%以上が欧州企業に還元されることを義務付ける要件を問題とした。防衛予算に関する加盟国向け融資制度である「欧州の安全保障行動(SAFE)」(2025年8月13日記事参照)も欧州内からの防衛品調達を重視する内容となっており、米国を含む域外企業の参入余地が限定される可能性を指摘している。
EUの通関制度についてもEU共通関税法があるにもかかわらず、加盟国ごとの法体系に落とし込まれた際に、運用が異なることから、米国企業の負担になっていると従来から指摘してきた。2026年版では加盟国共通の関税庁とデータハブ創設を柱とするEUの関税制度改革案(2026年4月1日記事参照)を歓迎しつつも、ハブの運営方法や利用者サービス、収集されるデータの保護などについて新たに懸念を表明した。これに加えて、2026年7月にEUが導入を予定する電子商取引(EC)の150ユーロ未満の小包および定額貨物の輸入に対する一律3ユーロの手数料(2025年12月27日記事参照)について、加盟国が独自に導入する手数料と併せて、事実上の二重負担となる可能性があるとし、越境ECや部品輸出を行う企業への影響を懸念している。
また、例年詳述されてきたデジタル分野でのデジタルサービス法(DSA、注1)やデジタル市場法(DMA、注2)、一般データ保護規則(GDPR、注3)などについて、2026年版では米国企業を対象とした実際の調査や制裁内容が明記され、論調が一段厳しさを増した。特に、規制対象が米国企業に集中している点や、データ保護義務、違反などに対する巨額制裁金が競争条件を歪めかねない点が強調されている。
EUの標準化政策や適合性評価手続きについても、従来どおり「排他的」との評価を踏襲しつつ、2026年版では、欧州標準が存在しない場合に欧州委員会が直接技術要件を定める「共通仕様(common specifications)」の範囲拡大案(2025年5月発表、2025年7月18日記事参照)を取り上げ、共通仕様の策定プロセスにおいて透明性が欠如していることから排他性が制度的に固定化されつつあるとの懸念を示した。
USTRは2025年8月21日に米国とEUが発表した貿易の枠組み合意(2025年8月22日記事参照)について関税引き下げに必要な立法措置を迅速に可決するようEU側に強く求めていくとしている。
(注1)EU域内でデジタルサービスを提供する事業者に対し、違法コンテンツ対策や利用者保護の義務を定める規則。2022年11月施行、2024年2月17日から全面適用。仲介サービス、オンライン・プラットフォーム、検索エンジンなどが対象。
(注2)巨大IT企業による市場支配行為を防止し、公正な競争環境を確保するための規則。2022年11月施行、2024年3月7日から本格適用。「ゲートキーパー」に指定された大規模デジタルプラットフォーム事業者に対し、自己優遇の禁止やデータ利用制限などの義務を課す。
(注3)個人データの保護と越境移転のルールを定めたEUの包括的データ保護規則。2016年4月に公布、2018年5月25日から適用開始。EU域内で個人データを処理する事業者のほか、EU域外であってもEU居住者のデータを扱う事業者を対象とする。
(岩井晴美)
(米国、EU)
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