欧州委、CBAM対象製品拡大案を発表、公平な競争条件下で脱炭素化推進

(EU)

ブリュッセル発

2025年12月19日

欧州委員会は12月17日、EU域内企業と域外企業間で公平な競争条件を確保し、脱炭素を進めるべく、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)規則の対象を川下製品に拡大し、迂回を防ぐ改定案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

改正案はCBAMの本格適用に伴い、CBAM対象製品の輸入品を使用し、川下製品を製造するEU企業が追加コストに直面し、製造拠点の域外移転や炭素集約度の高い輸入品に置き換わる懸念を回避すべく提案された。2028年1月からCBAM対象製品を使用する川下製品を新たに180品目追加する案で、94%は産業用サプライチェーン製品だ。主に鉄鋼、アルミニウムで構成されている(平均79%)、重機の部品を固定する金属製の金具、産業用放熱器、鋳造機械などが含まれた。残りの6%は家庭用品で洗濯機など最終製品が含まれる。選定された川下製品の輸入量は、現在のCBAMの対象品目の15%にとどまるが、金額ベースでは53%に達する。2030年までに、これらの製品から得られる収入は、現行CBAM対象製品から見込まれる収入の約20~25%に達すると予測されている。製品の選定は、CBAM規則第30条に基づき、カーボンリーケージ(炭素漏出)を防ぐため、(1)貿易集約度と(2)製品の価格に占める炭素コストの割合、の2つの指標に基づき検証された。なお、対象となる排出は、鉄鋼、アルミニウムなどEU排出量取引制度(EU ETS)の対象範囲の原材料に対するもので、川下製品の製造工程に対してではない。

追加的な迂回防止措置としては、鉄鋼・金属行動計画(2025年3月27日記事参照)で指摘のあった、鉄鋼・アルミニウムの製造工程で発生するスクラップの再利用をCBAM計算に組み込む。リサイクル材の利用を促進し、エネルギー多消費製品の排出削減を後押しする。

また、CBAM対象製品を製造するEU企業への暫定的な支援として、脱炭素基金の設立を提案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。脱炭素化の取り組み証明の提示を条件に、EU ETSの炭素価格の一部が還付される。第三国市場でEU製品が安価で排出量の多い代替品に置き換えられ、世界全体の排出量が増え、EUの競争力が低下する懸念への対策だ。

2026年1月からの本格適用を前に、実施規則、委任規則も発表された(添付資料表参照)。いずれもEU官報掲載前の段階のもので、正式な文章はEU官報掲載後のものとなる。

(薮中愛子)

(EU)

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