防衛産業強化に向け、18加盟国が融資制度に関心を表明
(EU、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)
ブリュッセル発
2025年08月13日
欧州委員会は7月30日、防衛予算の拡充策の1つである、加盟国向けの新たな融資制度「欧州の安全保障行動(SAFE)」に18の加盟国から、少なくとも1,270億ユーロの関心表明があったことを歓迎した(プレスリリース)。欧州委のアンドリウス・クビリウス委員(防衛・宇宙担当)は、SAFEに対する加盟国の強い関心は、EUの安全保障・防衛における団結を示し、より安全で統一されたEUに向け、防衛体制を強化する決意の象徴であるとコメントした。
SAFEは、EU理事会(閣僚理事会)により5月に採択された、防衛力強化に向けた8,000億ユーロ規模の防衛投資策「欧州再軍備計画(ReArm Europe Plan)」(2025年3月21日記事参照)の柱の1つ。EU名義の債券の発行により市場調達する資金を財源とし、最大1,500億ユーロの融資を一定の条件で加盟国に提供するもの。
融資の関心表明があった国は、ベルギー、ブルガリア、チェコ、エストニア、ギリシャ、スペイン、フランス、クロアチア、イタリア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ハンガリー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、フィンランドの18カ国。加盟国は今後、11月30日までに融資の使途をまとめた欧州防衛産業投資計画を策定し、提出しなければならない。なお、融資は加盟国による同計画の履行状況に関する欧州委の審査を経て、実行される。
融資を受けられるのは、加盟国のみだが、共通調達には加盟候補国、加盟申請国や、日本をはじめ、EUと安全保障・防衛パートナーシップを締結した国(アルバニア、カナダ、モルドバ、北マケドニア、ノルウェー、韓国、英国)も参加できる。調達契約では、最終製品の部品の推定コストに対し、EU、EEA/EFTA加盟国(注)およびウクライナ以外の地域から供給される部品コストは、35%を超えてはならないなど、域内防衛産業の強化に向けた条件がある。
欧州再軍備計画のもう1つの柱であるEU財政規律枠組みにおける過剰財政赤字手続きの一時的な適用停止措置には、16加盟国が申請し(2025年5月7日記事参照)、欧州委の審査を経て、7月8日、EU理事会において15加盟国に対し適用が発動された。なお、ドイツの申請は、中期的な財政・構造計画が確定した後に評価される予定。
(注)EFTA(欧州自由貿易連合)加盟国のうち、EEA(欧州経済領域)に加盟していないスイスを除くノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン。
(薮中愛子)
(EU、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)
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