米国務省が新たな戦略計画を発表、公正かつ相互利益に基づく通商協定を追求
(米国)
ニューヨーク発
2026年01月19日
米国国務省は1月15日、2026~2030年度の戦略計画
を発表した。過去の政権の外交方針を否定し、あらためて米国第一を主張する内容となっている。
マルコ・ルビオ国務長官は戦略計画の序文で、米国は過去の政策の失敗により、製造業の衰退に直面し、サプライチェーンの海外依存度を高めていることを課題として指摘した。その上で、超党派の合意の下で約35年間進めてきた多国間主義、グローバル化といった外交アジェンダは、「米国を文明的・地政学的な自殺へと導く危険性をはらんでいる」と批判した。これを是正するため、米国の国益と国民の利益を追求する「米国第一の外交政策」が重要だと説いた。友好国との間では、公正な貿易の拡大、民間セクター投資、対象を絞った対外援助、主要なサプライチェーンのニアショアリングを推進するとし、この方針が米国の国際的関与の指針にもなると記載した(注1)。また、現在の国際通商システムによる不当な搾取などをこれ以上容認しないとするドナルド・トランプ大統領の方針を受け、「新たな通商協定を締結し、公正かつ相互利益に基づく貿易・経済パートナーシップを実現する」とした。
戦略では、「米国の国家主権」「西半球とドンロー主義の確立」「インド太平洋地域の平和と安定」「欧州諸国との文明的な同盟の再構築」「米国の経済的・技術的優位性」「米国の国益を最優先とする対象を絞った対外援助」の6つの目標を掲げ、それを達成するための各方針を記載した。このうち経済や通商を記した「米国の経済的・技術的優位性」では、「米国の再工業化」を最初の方針に掲げた。とりわけエネルギー、重要鉱物、造船、半導体、人工知能(AI)、バイオテクノロジー、量子など「経済発展の最先端分野を中心に再工業化を推進し、サプライチェーンを敵対国への依存から保護する」と記載した。また、親米諸国による経済ブロックを形成し、基幹インフラプロジェクトなどを通じて商業関係を深めるとともに、これら諸国と新たな経済安全保障の合意を確立するとも記載した。2つ目の方針には「外国の行為体の国際貿易システム乱用阻止」を掲げ、第三国を経由して輸出を迂回させることで関税を回避する「積み替え」について、各国と協力して取り締まると記した(注2)。また「米国の技術的優位性と産業支配力の強化」では、商務省などと連携し、AIなどの先端技術が同盟・パートナー国以外に輸出されないようにするとした上で、信頼できる市場へは可能な限り積極的に輸出し米国主導のエコシステムを構築する方針を示した(注3)。
今回の戦略は、トランプ氏が2025年12月に発表した「国家安全保障戦略(NSS)」(2025年12月15日記事参照)と共通する内容が多い。例えば、親米諸国による経済ブロックを形成し新たな経済安全保障を確立する方針は、NSSで掲げた「米国と輸出管理を整合する国々を経済上有利に扱う、対象を絞ったパートナーシップ」と重なる。また通商専門誌インサイドUSトレード(1月16日)は、ベネズエラのニコラス・マドゥーロ大統領夫妻の拘束(2026年1月8日記事参照)を引き合いに、西半球における経済・安全保障の優位性を掲げていることなどから、「政権がドンロー主義と呼ぶ方針を公式政策として明文化した」と指摘している。
(注1)トランプ氏は1月7日、66の国際機関からの脱退または資金拠出の停止を指示する大統領覚書を発表している(2026年1月9日記事参照)。なお、対象となる国際機関を、さらに拡大する可能性を示唆している。
(注2)トランプ政権は、各種貿易協定において、「積み替え品(transshipment)」を規制する条項を設けている。ただし、既存のルールにおいても、第三国で単に製品を積み替えただけでは製品の原産国は変わらず関税の回避はできない。従来の「迂回貿易」との違いは、いまだ明確ではない。2026年1月14日付地域・分析レポートも参照。
(注3)商務省は2025年10月から米国AI輸出プログラムを開始している(2025年10月23日記事参照)。
(赤平大寿)
(米国)
ビジネス短信 a48e7e0520758075




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