米商務省、米国製AIの世界的普及を目指して、AI輸出プログラムを始動
(米国)
ニューヨーク発
2025年10月23日
米国商務省国際貿易局(ITA)は10月21日、米国人工知能(AI)輸出プログラムの開始を発表した。まずは制度設計のため、産業界からパブリックコメントを募る。米国発のAI技術のグローバル展開を支援することで、AI分野における米国のリーダーシップを維持・拡大し、米国の敵対国が開発したAI技術への国際的な依存度を低減する狙いがある。
ホワイトハウスは2025年7月23日、米国製AIシステムの世界的な普及のため、産業界から輸出促進に向けた提案を受け付けるプログラムの創設などの提言を盛り込んだ「AI行動計画」を発表し、ドナルド・トランプ大統領は同日、行動計画で示された「米国AI輸出プログラム」の設立を指示する大統領令を発表していた(2025年7月25日記事参照、注1)。
これらを受け、ITAは今般、情報提供要請(RFI)を通じて、米国内外のテクノロジー企業からプログラムの形成、業界ニーズの把握、政策成果達成に向けたパブリックコメントを募集する。求めるコメントは、(1)コメント提出者の属性、(2)AI技術スタック(注2)、(3)コンソーシアムの要件、(4)外国市場、(5)ビジネス・運営モデル、(6)連邦政府による支援、(7)国家安全保障規則、(8)評価、(9)その他、に分かれ、計28の質問が並んでいる。例えば、(2)では大統領令で定義されたAI技術スタックの明確化または拡充が必要か、(4)ではどのような事例・条件下で外国組織のコンソーシアムへの参加を認めるべきか、といった内容が挙げられている。コメントはRFIが連邦官報に掲載されてから30日以内に提出する必要があるが、政府機関閉鎖の継続により、ITAの業務のほとんどが停止されているため、掲載時期は不透明だ(2025年10月2日記事参照)(注3)。
これらコメントを踏まえ、今後、AI輸出プログラムが確立された後、優先AI輸出パッケージとして商務長官に認定された案件は、連邦資金への優先アクセスなどによって支援されることになる。
そのほかITAは、米国企業と信頼できる海外企業との連携促進のため、新たなウェブサイト(AIexport.gov)を立ち上げた。企業はウェブサイトを通じて、自社のAI製品・サービスの特徴、拡大したい海外マーケットなどを提出でき、ITAは米国の在外公館などと連携して、企業の海外展開を支援する仕組みとなっている。
(注1)トランプ政権のAI政策と日本・日系企業への影響については、2025年10月15日付調査レポート参照。
(注2)米IT大手のインテルによれば、AI技術スタックとは、AI アプリケーションの開発と導入を促進するハードウエア、ソフトウエア、ツールで構成される完全なソリューション。
(注3)連邦官報に掲載され次第、現状のRFIはウェブサイトから削除される。内容に相違がある場合は、連邦官報掲載版が優先される。
(赤平大寿)
(米国)
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