トランプ政権2期目初の国家安全保障戦略、「米国第一」を貫く対外政策
(米国)
ニューヨーク発
2025年12月15日
米国のトランプ政権は12月5日、国家安全保障戦略
を発表した。トランプ政権2期目で初めての発表となる。「外交政策の目的は中核的国益の保護」だとし、「米国第一」をあらためて強調する内容となっている。バイデン前政権の戦略(2022年10月13日記事参照)とは、自国への投資を最優先する観点では共通しているものの、同盟国へも一定の負担を求める点などで異なっている。
国家安全保障戦略の冒頭では、米国の過去の戦略に対して、グローバリズムと自由貿易に「極めて誤った破壊的な賭け」を行った結果、米国の経済的・軍事的優位性の基盤である中産階級と産業基盤が空洞化した、と批判した。また、同盟国が防衛費を米国民に転嫁することを許した、とも指摘した。その上で、「米国の国力は、平時・戦時を問わず、生産需要を満たす強力な産業部門に依存している」として、産業の育成を経済政策の最優先課題に位置付けた。科学技術とイノベーションを主導する重要性も強調した。特に人工知能(AI)、バイオテクノロジー、量子コンピューティングで世界を牽引することが「米国の核心的かつ重大な国益」だとして、「最優先で注力すべき利益」と主張した。
戦略の原則を記した章では、「国家の優先性」を強調し、「各国が自国の利益を優先する時、世界は最も円滑に機能する」と説き、多国間組織による国家主権への介入に反対した。トランプ政権は2025年8月末に、「米国第一」の方針に反する国際機関などへの拠出を停止すると発表している(2025年9月3日記事参照)。また、「公平性」についても言及し、「軍事同盟から貿易関係に至るまで、米国は他国から公平な扱いを受けることを要求する」と主張した。利益を損なうフリーライダー行為、貿易不均衡、略奪的経済慣行(predatory economic practices)などを容認しないとした上で、「米国が同盟国に豊かで有能であることを求めるのと同様に、同盟国もまた、米国が豊かで有能であり続けることが自らの利益にかなうと認識せねばならない」と強調した。
これら原則を実行するための優先分野の1つに「負担の分担と転嫁」を挙げ、これを実現するためのモデルとして「同盟国と負担を分かち合い、長期的な安定を基盤とする、対象を絞ったパートナーシップ」を挙げた。具体的には、米国は安全保障でより多くの責任を自発的に引き受け、輸出管理を米国と整合させる国々に対して、経済上の有利な扱い、技術共有、防衛調達などを通じて支援するとした。優先分野には「経済安全保障」も挙げ、その重点分野に、均衡ある貿易、重要なサプライチェーンと資源へのアクセス確保、再工業化、防衛産業基盤の再生、エネルギー優位性、金融セクターの優位性維持・拡大を列挙した。
地域別の戦略は2025年12月15日記事参照。
(赤平大寿)
(米国)
ビジネス短信 90f6e92663418116




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