米国のベネズエラ軍事作戦、政権は成果を強調、シンクタンクは先行きに懸念

(米国、ベネズエラ)

ニューヨーク発

2026年01月08日

米国は1月3日、ベネズエラの首都カラカスで、同国のニコラス・マドゥーロ大統領夫妻を拘束し、米国に移送した。ドナルド・トランプ大統領は同日の記者会見で軍事作戦が成功したと発表した(2025年1月5日記事参照)。米国のシンクタンクは、一連の動きがベネズエラの将来や国際的な地政学に及ぼす影響を解説する論考を相次ぎ発表している。

トランプ氏は3日の会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、軍事作戦によりマドゥーロ大統領の拘束に成功したことを強調するとともに、「安全、適切、慎重な政権の移行が実現するまで、米国が同国を運営する」と説明した。さらに、「今後、西半球における米国の優位性が再び疑問視されることはない」と述べた。このほか、トランプ氏は3~6日にかけて60件を超えるSNS投稿を通じ、作戦の正当性を繰り返し主張した。

マルコ・ルビオ国務長官兼大統領補佐官(国家安全保障担当)は翌4日、複数の米メディアの報道番組に出演し、トランプ氏の会見での発言を補足した。ルビオ氏は、トランプ氏の「米国が同国を運営する」との発言の具体的な内容を問われ、同国の海上封鎖を通じた石油輸送や麻薬密輸の取り締まりの継続、石油産業再建、犯罪組織や武装勢力の解体などの措置を挙げ、「(同国を)管理する措置を講じることだ」(CBS「フェイス・ザ・ネーション」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに対して)、「(米国が同国の)政策を運営するということだ」(NBC「ミート・ザ・プレス」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに対して)と説明した。また、トランプ氏がデルシー・ロドリゲス大統領代行らマドゥーロ政権幹部と協力していく考えを示した理由について、野党勢力は実質的な政治基盤を欠いており、その中で上記のような措置を短期的に進めることは難しいためとした。

米国シンクタンクの有識者の間では、作戦の精密な実行について一定の評価が示されている。一方で、トランプ政権の今後の対ベネズエラ戦略については、疑問視する見方も出ている。ベネズエラ国内情勢の安定化について、戦略国際問題研究所(CSIS)の有識者は、トランプ政権がベネズエラの野党指導者ではなく、マドゥーロ政権幹部との協力を志向している可能性があり、実質的な政権移行が見通せないことを指摘する。外交問題評議会(CFR)は、トランプ大統領はベネズエラを管理し、石油インフラを再建するとしたが、トランプ大統領自身・米議会・米国民のいずれもベネズエラを長期的に占拠することに関心がないとの見方を示した。ブルッキングス研究所は、今回の作戦の成功はベネズエラの状況が解決したことを意味するものではなく、むしろ同国の長期的な混乱の始まりに過ぎない可能性があるとの見解を示している(注1)。

さらに、周辺諸国やより広範な安全保障への影響を懸念する声も上がる。CSISの有識者は、今回の「ドンロー主義」に基づく作戦が、米国が西半球でより積極的な役割を果たそうとする姿勢を体現するものだとして、中南米地域における米国主導の地政学的変化を指摘する。また、ブルッキングス研究所からは、ロシアや中国がグローバルサウス諸国に対し、米国の行動を脅威として訴える材料を与えた可能性があるとして、米国を取り巻く安全保障環境への波及的影響に警鐘を鳴らす見解も示されている(注2)。

(注1)戦略国際問題研究所(CSIS)(1月5日)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます外交問題評議会(CFR)(1月3日)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますブルッキングス研究所(1月5日)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(注2)CSIS(1月3日)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますCSIS(1月5日)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますブルッキングス研究所(1月5日)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(葛西泰介)

(米国、ベネズエラ)

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