米税関、トラック追加関税のガイダンス発表、USMCA原産車両への緩和制度は追加ガイダンス後から有効に
(米国)
ニューヨーク発
2025年11月04日
米国税関・国境警備局(CBP)は10月29日、1962年通商拡大法232条に基づく中・大型トラックと同部品、バスへの追加関税に関するガイダンス
を発表した。ドナルド・トランプ大統領は11月1日から、中・大型トラックなどに10~25%の追加関税を課すと発表していた(2025年10月21日記事参照)。
10月に発表された大統領布告では、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たす中・大型トラックの場合、車両の非米国産の価値に対してのみ追加関税を課すと定めている。ガイダンスでもあらためてその点を明記したが、事前に商務長官の承認が必要だとし、CBPは追加のガイダンスが出るまで同制度を用いた輸入申告を行わないよう求めた。自動車・軽トラックでも同様の制度が確立されているが、ガイダンスが出されたのは追加関税が実際に賦課されてから1カ月以上経ってからだった(2025年5月21日記事参照、注1)。
一方で、USMCAの原産地規則を満たす中・大型トラック部品は、追加関税は課さないことをあらためて明記した。ただし、海外や現地の工場で組み立てるための部品(ノックダウンキット)は対象外となる。商務長官がプロセスを確立した後は、USMCAの原産地規則を満たす場合でも、中・大型トラック部品の非米国産分の価値に対してのみ追加関税が課されるが、政府高官は少なくとも数カ月間はプロセスを確立する予定はないと述べている(通商専門誌「インサイドUSトレード」10月17日)。
そのほか、中・大型トラック部品に対する追加関税は、鉄鋼・アルミニウム、銅など他の232条に基づく追加関税などに優先して課し、追加関税率は累積しない点もガイダンスで明記した。仮に中・大型トラック部品と自動車・軽トラック部品の双方で追加関税の対象品目となっている場合は、その用途に応じて輸入申告を行い、どちらか一方の追加関税措置のみが適用されると考えられている(注2)。中・大型トラック部品と自動車・軽トラック部品の追加関税率は25%で変わらないが、日本やEU産の場合、米国との2国・地域間交渉により(日本:2025年9月16日記事、EU:2025年9月25日記事参照)、自動車・軽トラック部品に対する232条関税率は、一般関税率(MFN税率)を含めて15%、15%を超える場合は追加関税を課されないこととなるため、追加関税率は異なると考えられる。
(注1)自動車・軽トラックのケースでは、追加関税が賦課された4月3日以降に輸入された、USMCAの原産地規則を満たした車両に対しても遡及(そきゅう)適用するか否かは、商務長官の裁量により決定すると定めている。
(注2)ジェトロによる通商弁護士へのヒアリング(10月22日)。
(赤平大寿)
(米国)
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