トランプ米大統領、11月1日から中・大型トラック、部品への追加関税賦課を発表
(米国)
ニューヨーク発
2025年10月21日
米国のドナルド・トランプ大統領は10月17日、中・大型トラックと同部品、バスに対して追加関税を課す大統領布告を発表した。同日にファクトシート
も公開した。トランプ政権は4月に1962年通商拡大法232条に基づき、中・大型トラックの輸入が米国の国家安全保障に及ぼす影響を判断するための調査を開始していた(2025年4月24日記事参照)。
同232条は、特定製品の輸入が米国の国家安全保障に脅威を及ぼすと商務長官が判断した場合に、追加関税などの措置を発動する権限を大統領に認めている(注1)。追加関税率などは次のとおり。自動車・同部品に対する232条関税とおおむね同様の仕組みとなっている。
- 2025年11月1日米国東部時間午前0時1分以降に通関する中・大型トラック、同部品に25%、米国関税分類表(HTSUS)8702に分類されるバスに10%の追加関税を課す(注2)。
- 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たす中・大型トラックに対しては、車両の非米国産部品の価値に対してのみ追加関税を課す(注3)。
- USMCAの原産地規則を満たす中・大型トラック部品は、商務長官が非米国産部品部分に対してのみ追加関税を課すプロセスを確立するまで、この布告で課される追加関税の対象にならない(注4)。
- 今回の追加関税措置は、鉄鋼・アルミニウム、銅、自動車・同部品、木材製品に対する232条に基づく追加関税(注5)、相互関税やカナダ、メキシコ、ブラジル、インドに対する国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく追加関税の対象にならない。
今回の大統領布告では、中・大型トラック部品に対する追加関税の相殺制度も定めた。米国の中・大型トラックを生産する企業は、11月1日から2030年10月31日の間、米国内で最終組み立てを行った中・大型トラックの価値の3.75%分を、同部品の追加関税の支払いに充てられる。商務長官は今後、米国産の中・大型トラックのエンジンの製造事業者に対しても、同様の手続きを確立する。
なお、自動車部品に対しても、同様に部品に対する追加関税を2027年4月30日まで相殺できる制度がある(2025年6月13日記事参照)。今回の大統領布告では、自動車部品に対する期限を、中・大型トラック部品と同様、2030年4月30日まで延長するとともに、相殺可能額を希望小売価格(MSRP)総額の3.75%と定めた。自動車エンジンの製造業者に対しても同様の制度を今後確立する(注6)。
また、中・大型トラック向けの用途に限り、232条に基づく鉄鋼・アルミへの追加関税を、現在の50%から最大25%まで商務長官が削減できる権限も定めた。対象は、カナダまたはメキシコで生産施設を運営し、米国の自動車または中・大型トラック製造企業に鉄鋼・アルミを供給する企業からの輸入となる(注7)。
詳細な手続きについては今後、税関・国境警備局(CBP)からガイダンスが出るとみられる。
今回の追加関税の対象となった車両総重量(GVW)が5トン超20トン以下のディーゼルトラック(HTS870422)の日本からの米国輸入台数(2024年)は1万5,695台と、国別3位の多さで、米国の全輸入台数の18.9%を占める(注8)。
(注1)232条に基づく調査、報告、措置決定などの手続きの詳細は、2024年12月10日付地域・分析レポート参照。
(注2)中・大型トラックの具体的な品目は、大型ピックアップトラック、引っ越しトラック、貨物トラック、ダンプトラック、18輪トレーラー用トラクターなど、部品はエンジン、トランスミッション、タイヤ、シャーシなど、バスはスクールバス、路線バス、長距離バスなど。HTSは大統領布告の付属書I(Annex I)参照。なお、GVWが5トン未満の小型トラックは、232条に基づく自動車への追加関税の対象となっている。
(注3)自動車に対しても同様の制度が既に確立されている(2025年5月21日記事参照)。
(注4)政府高官は、少なくとも数カ月間はプロセスを確立する予定はないと述べている(通商専門誌「インサイドUSトレード」10月17日)。自動車部品に対しても、同様の仕組みが設けられている(2025年5月2日記事参照)。
(注5)特定の追加関税措置では、関税率が累積しない制度が設けられている(2025年6月4日記事参照)。
(注6)中・大型トラック部品、自動車部品ともに、完成品を部品に分解した状態で輸送し、海外や現地の工場で組み立てるための部品(ノックダウンキット)は自動車部品関税の相殺制度の対象外。
(注7)ただし、商務長官が認めた米国生産能力の増強分と同量に限られるほか、USMCAの原産地規則を満たしていることと、カナダまたはメキシコで製錬・鋳造または溶解・鋳造された場合に限られる。
(注8)1位はメキシコの4万247台(全輸入台数に占める割合48.6%)、2位はカナダの2万2,396台(同27.0%)。
(赤平大寿)
(米国)
ビジネス短信 145e2fb0f9b1534e