米税関、モーリシャス企業の繊維製品に対する輸入差し止めを発令

(米国、モーリシャス)

ニューヨーク発

2025年11月21日

米国税関・国境警備局(CBP)は11月18日、高級デニム製品で知られるモーリシャスのファイアマウントが製造した衣服、アパレル製品、繊維製品に対し、製造工程での人権侵害の疑いに基づき、違反商品保留命令(WRO)を発令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同日以降、同社で製造した製品の輸入を差し止める。

米国の1930年関税法307条は、強制労働、児童労働、囚人労働などの労働搾取を通じて生産された物品の輸入を原則禁止しており、CBPは強制労働などへの関与を推定した場合、WROを発令し、対象物品の輸入を差し止める。また、強制労働などへの関与を正式に認定(Finding)した場合には、対象物品の輸入を差し止め、押収・没収する。

CBPの発表によると、CBPによるヒアリングやNGOの報告書(注1)、メディア報道、学術研究を分析したところ、ファイアマウントの労働者は、ILOが示す強制労働の指標のうち、労働者の脆弱(ぜいじゃく)性の悪用、債務による束縛、欺瞞(ぎまん)、どう喝および脅迫の対象となっていることが確認された。また、同社の商品は米国に輸入されているか、あるいは輸入される可能性が高いという。

CBP貿易局のエグゼクティブ・アシスタント・コミッショナー代行のスーザン・トーマス氏は、今回の発令に関し、「強制労働は非人道的な行為であるだけでなく、米国企業や消費者に不公平な競争をもたらす。国境と経済安全保障の最前線(にいる機関)として、CBPは法律を執行し、公平な競争環境を確保する」と述べた。

今回のWROは2025年1月の第2次トランプ政権発足後に発令されたものとして4件目で(注2)、これまでに発令された有効なWROは2025年11月18日時点で54件、認定は9件となる。CBPのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、モーリシャスに対する有効なWROは今回の1件のみだ。

(注1)米国のNPOであるトランスペアレンタム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによる過去2年に及ぶ調査の報告書では、モーリシャスに拠点を置く4つのアパレル業者での強制労働を指摘している。

(注2)韓国産塩製品に対するWRO(2025年4月7日記事参照)、中国籍の漁船が漁獲した水産品に対するWRO(2025年5月30日記事参照)、台湾産自転車に対するWRO(2025年9月25日記事参照)が発令されている。一方で、2025年3月には、2022年11月に発令された特定のドミニカ共和国産砂糖製品に対するWROが撤回されている(2025年3月24日記事参照)。

(久峨喜美子)

(米国、モーリシャス)

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