米税関、台湾ジャイアント製自転車に輸入差し止め命令、人権侵害の疑いで
(米国、台湾)
ニューヨーク発
2025年09月25日
米国税関・国境警備局(CBP)は9月24日、台湾の大手自転車メーカーのジャイアント・マニュファクチャリングが製造した自転車、部品、付属品に対して、製造工程での人権侵害の疑いに基づき、違反商品保留命令(WRO:Withhold Release Order)を発令した。これにより同日以降、対象製品の米国への輸入は差し止められる。
米国の1930年関税法307条は、強制労働、児童労働、囚人労働などを用いて生産した物品の輸入を原則禁止している。CBPは強制労働の関与を合理的に推定する場合、WROを発令して対象物品の輸入を差し止め、輸入業者に反証の申請もしくは米国外への輸出を求める。さらに、CBPは強制労働などの関与を認定(Finding)した場合、対象物品の輸入を差し止め、押収・没収することができる。対象外国企業が人権侵害の状況を是正したとCBPが判断すれば、WROや認定は撤回または修正される。今回の発令を含め、2025年9月24日時点で有効なWROは53件、認定は9件となっている。
CBPは今回、ジャイアントの製造工程で賃金の留保や過度な時間外労働など、複数のILOの強制労働指標に該当する状況を示す合理的な情報を得たと説明した。こうした労働慣行によって市場価格を下回る価格で製品を製造し、米国企業の利益を圧迫していると問題視した。
CBP貿易局のエグゼクティブ・アシスタント・コミッショナー代行のスーザン・トーマス氏は今回の発令に際して、「輸入業者はデューディリジェンスを実施し、自社のサプライチェーンを把握する責任がある」「CBPは強制労働に関する申し立てを調査し、米国サプライチェーン内で発見した場合には措置を講じ続ける」と述べた。
一方、ジャイアントは9月25日に声明を発表し、「ジャイアントグループは人権と労働者保護の支持に確固として取り組み、具体的な措置を講じている」「CBPにWROの撤回を求める請願を提出するとともに、既に適切な措置を講じていることを説明する」などと対応を公表した。また、WROの影響について、米国向けの出荷の一部で遅延などが発生する可能性があるとしつつ、米国以外の市場への供給や販売には影響がないと説明した。
今回の発令は、第2次トランプ政権下で3回目(注)となる。米国政府は、人権を尊重する米国企業との競争条件を平準化し国内産業を保護する観点などから、WROなど「ビジネスと人権」に関連する通商措置を継続的に実施している(2025年5月9日付地域・分析レポート参照)。
(注)2025年4月に特定の韓国産の塩製品に対するWRO(2025年4月7日記事参照)、5月に特定の中国漁船の水産品に対するWROを発令している(2025年5月30日記事参照)。このほか、3月には特定のドミニカ共和国産の砂糖製品に対するWROについて、状況の是正を受けて撤回した事例もある(2025年3月24日記事参照)。
(葛西泰介)
(米国、台湾)
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