9月の米小売売上高は前月比0.2%増と伸び鈍化、買い控え傾向で裁量的支出が低迷

(米国)

ニューヨーク発

2025年11月26日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(11月25日付)によると、2025年9月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.2%増の7,333億ドル(添付資料表参照)となり、ブルームバーグの市場予想(0.4%増)を下回った。米国の消費支出はこれまで総じて底堅く推移していたが、消費者の買い控え姿勢が強まったことが示された。なお、8月の改定値も発表されたが、0.6%増(速報値、2025年9月18日記事参照)から変更がなかった。同統計は、政府閉鎖の影響(2025年11月14日記事参照)で当初予定されていた10月16日から発表が遅延していた。

ガソリンスタンドやフードサービスなどが押し上げ要因に

業種別にみると、ガソリンスタンドは、ガソリン価格の上昇(9月:前月比4.1%増、2025年10月28日記事参照)が寄与し、2.0%増の529億ドル(寄与度:0.14ポイント)となった。そのほか、小売り統計で唯一のサービス項目のフードサービスは0.7%増となり、4カ月連続で上昇した。一方で、自動車・同部品は4カ月ぶりに減少し、前月の0.6%増から0.3%減に転じた。また、スポーツ・娯楽品・書籍(2.5%減)、衣料(0.7%減)、家電(0.5%減)への支出はいずれも減少し、必需品以外の裁量的支出分野に対する需要の低迷が示唆された。そのほか、無店舗小売りは0.7%減少し、消費者が年末商戦の大型セールやプロモーションを待つための支出抑制の可能性がある。

今回の結果について、金融市場の経済情報を提供する英国の独立系シンクタンク、パンテオン・マクロエコノミクスのオリバー・アレン氏は、「停滞した労働市場」と「関税による価格上昇が実質所得に与える抑制効果」が相まって、「この減速傾向は持続する可能性が高い」と指摘した(11月25日付「フィナンシャル・タイムズ」)。不動産価格の上昇や株高の恩恵を背景に、米国経済の大部分は高所得者層の消費によって支えられている。ウォルマートなどの小売り各社の決算報告によると、消費者の購買行動は二極化が進むと同時に、あらゆる所得層でコストパフォーマンスを求める価格重視の傾向が強まっている(2025年11月25日記事参照)。

消費者マインドは前月よりやや悪化した。民間調査会社コンファレンスボードが10月28日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした10月の消費者信頼感指数は94.6(9月:95.6)とわずかに減少し、6カ月ぶりの低水準となった。内訳では、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は129.3(9月:127.5)と前月よりやや改善した。一方、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は71.5(9月:74.4)に低下し、2025年2月以降、景気後退を示唆する基準値の80を下回っている(添付資料図参照)。同社によると、消費者アンケートでは6月以降、消費者が支出を計画していたサービス項目の上位5位以内に入っていたヘルスケア分野の支出が急増した。政府閉鎖期間中に、保険料や補助金に焦点が当てられたことが背景にあるとみられており、今後も生活必需品やサービスへの支出が増加するという。

(樫葉さくら)

(米国)

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