8月の米小売売上高、前月比0.6%増で予想上回る、新学期商戦や物価上昇が寄与

(米国)

ニューヨーク発

2025年09月18日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(9月16日付)によると、8月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.6%増の7,320億ドル(添付資料表参照)と、3カ月連続の増加となり、ブルームバーグの市場予想(0.2%増)を大きく上回った。ただし、小売り統計はインフレ調整されておらず、8月の消費者物価指数(CPI)では、自動車部品や衣類、ガソリン、食料品などを中心に、物価上昇基調は続いていることから(2025年9月12日記事参照)、実質の伸び率はより小幅にとどまった可能性がある。また、9月の新学期に向けて需要が拡大した影響もうかがえる。なお、7月は同0.5%増(速報値、2025年8月18日記事参照)から0.6%増に上方修正された。

無店舗小売り、フードサービスなどが押し上げ要因に

業種別にみると、13業種のうち9業種で増加し、前月に続いて幅広い分野で増加した。特に無店舗小売りは前月比2.0%増の1,298億ドルで、最大の押し上げ要因だった。また、衣料やスポーツ・娯楽品・書籍なども、前年同月比でそれぞれ8.3%増、4.7%増と、例年よりも高い伸びを牽引し、価格上昇と新学期に向けた需要増が反映されたものとみられる。自動車・同部品は前月の前月比1.7%増から伸びが鈍化し、0.5%増となった。そのほか、小売り統計で唯一のサービス項目のフードサービスは前月の0.1%減から0.7%増に転じた。他方で、総合小売りやヘルスケアはいずれも0.1%減となった。

今回の結果について、オックスフォード・エコノミクスの米国担当副首席エコノミストのマイケル・ピアース氏は「小売売上高の数字は、総支出が(2025年前半の)低迷から回復して軌道に戻ったことを示唆しているが、その力強さの多くは、支出の大部分を担う高所得世帯に集中していると考えられる」とした上で、「低所得層の消費支出は、労働市場の弱体化と、実質可処分所得を圧迫する政策ミックスの圧力に依然としてさらされている」と指摘した(CNN9月16日)。

消費者マインドは前月よりやや悪化しており、民間調査会社コンファレンスボードが8月26日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした8月の消費者信頼感指数は97.4(7月:98.7)と1.3ポイント減少し、2カ月ぶりの低水準となった。内訳では、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は131.2(7月:132.8)だった。また、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は74.8(7月:76.0)に減少し、景気後退を示唆する基準値の80を7カ月連続で下回った(添付資料図参照)。

同社のグローバル指標担当シニアエコノミストのステファニー・ギチャード氏は「特に注目すべきは、消費者が現在の雇用機会を評価する見方が8カ月連続で低下したことだ」と指摘し、「将来の雇用機会に対する悲観的な見方はわずかに高まり、将来の収入に対する楽観的な見方はやや後退した」と述べた。

(樫葉さくら)

(米国)

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