日米首脳、通商合意の着実な実施確認、エネルギー・AI・重要鉱物で対米投資推進
(米国、日本)
ニューヨーク発
2025年10月29日
日本の高市早苗首相と米国のドナルド・トランプ大統領は10月28日、東京都内で首脳会談を実施した。高市氏は会談で日米同盟の重要性を強調し、その強化が日本の外交・安全保障政策の最優先事項と位置付けた。トランプ氏も、今後の日米関係のさらなる発展に期待を示した。
両首脳は会談後、日米合意の着実な実施を確認する文書に署名した。両国は米国の関税措置などを巡る通商交渉を経て、2025年7月に日米協議に合意し(2025年7月28日記事参照)、9月に米国はこの合意に基づき、日本の相互関税を一般関税率を含めて15%に修正するとともに、自動車関税を引き下げた(2025年9月16日記事参照)。また、両国は同月、米国の医薬品関税や半導体関税の日本製品に対する適用方針を記した共同声明を発表したほか(2025年9月9日記事参照)、日本による5,500億ドル規模の対米投資の対象分野や利益配分を記した了解覚書を交わした(2025年9月11日記事参照)。両首脳が今回署名した文書では、こうした一連の両国の取り組みを確認した上で、今後も合意実施を継続する方針を明記した。
両首脳はさらに、重要鉱物やレアアースの供給確保のための枠組みに署名したほか、両国政府は同日、人工知能(AI)など先端科学技術分野や造船産業での協力に関する覚書をそれぞれ取り交わした。さらに、同日、投資に関するファクトシートをそれぞれ公表した。
日本政府が発表した日本側のファクトシートでは、(1)小型原子炉(SMR)などエネルギー、(2)AI用途の電源開発、(3)データセンター設備などAIインフラ、(4)重要鉱物、の4分野の総事業費最大3,934億5,000万ドルのさまざまな日米の投資プロジェクトを列挙し、各プロジェクトの組成に日米企業が関心を有していると記した。
米国政府が発表した米国側のファクトシートでは、日米合意に基づく日本の5,500億ドルの対米投資の主要プロジェクトとして、日本側と同様に投資プロジェクトを列挙した。加えて、米国産品の購入拡大に向けた日本側の動きを説明した。具体的には、米国アラスカ州の天然ガスのパイプライン輸送と液化天然ガス(LNG)製造プロジェクトに関連して、日本企業がLNG購入の意向を示していることや、日本市場で米国の安全基準を満たした米国車を追加試験なしで販売できるようにする日本の措置などを記載した。
さらに、米国側のファクトシートでは、国家・経済安全保障政策での連携方針も明示した。国家安全保障分野では、米国は日本の防衛力強化を歓迎し、また、両国が違法薬物の密輸防止で協力を拡大することを確認したなどと記載した。経済安全保障分野では、両国が対内投資審査や対外投資規制の強化に取り組むほか、ロシアの石油輸送に関わる「影の船団」への経済制裁で日本が米国やG7諸国と緊密に連携する方針などを記載した。
日米両国の発表資料は次のとおり(米国時間10月28日午前時点)。
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日本側:日米合意の実施、重要鉱物供給確保の枠組み、造船協力覚書、先端技術協力覚書、投資に関するファクトシート(いずれも外務省ウェブサイト
参照) -
米国側:米日合意の実施
、重要鉱物供給確保の枠組み
、先端技術協力覚書
、投資に関するファクトシート
(葛西泰介)
(米国、日本)
ビジネス短信 b7934d79ef1f3545




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