日米政府の対米投資に関する了解覚書、投資の対象分野や選定方法が明らかに

(日本、米国)

ニューヨーク発

2025年09月11日

日米両政府は9月4日、7月の日米合意に関する了解覚書に署名するとともに、共同声明を発出した(2025年9月9日記事参照)。このうち、投資イニシアティブの大枠について日米の共通理解を確認するための了解覚書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、日本による5,500億ドルの対米投資の対象分野や選定方法などが記載された。米国のドナルド・トランプ大統領が9月4日に発令した日本産品に対する関税措置の修正に関する大統領令に続き(2025年9月5日記事参照)、日米合意の具体的な内容が明文化された。

了解覚書の主な内容は次のとおり。

〇日本は、2029年1月19日までに、半導体、医薬品、金属、重要鉱物、造船、パイプラインを含むエネルギー、人工知能(AI)・量子コンピューティングなどの分野で、5,500億ドルを米国に投資する。

〇具体的な投資先は、米国大統領が設置する「投資委員会(Investment Committee、注1)」の推薦に基づき、米国大統領が選定する。ただし、投資委員会は、大統領への推薦に先立ち、日米両国から指名される者で構成される「協議委員会(Consultation Committee)」と協議する。日本は、独自の裁量により、投資に対して必要な資金を提供しないことを選択できるが、そのような決定を行う前に米国と協議を行う。覚書に従ったプロセスを経た上で選定されたプロジェクトに対して、日本が資金提供を行わない場合には米国は日本産品に対する関税率を引き上げることができるが、日本が覚書を誠実に履行し、資金提供を怠らない場合には米国は7月の日米合意の対象となる日本産品に対する関税率を引き上げない。

〇米国はプロジェクトに関連する連邦政府所有地のリースや、電気や水道などインフラのアレンジを提供する。また、プロジェクトのベンダー・サプライヤーの選定に当たって、可能な場合には、外国企業の代わりに日本企業を選択する。

〇各投資に関して特別目的会社(SPV)を設立し、米国または米国が指名する者が管理および統治する。SPVは投資から生じるキャッシュフローを米ドルで分配する。この際、みなし配分額(注2)に等しい合計額が分配されるまで日米にそれぞれ50%を分配する。その後、米国に90%、日本に10%を分配する。

なお、覚書は法的拘束力のある権利・義務を生じさせない。また、覚書の修正や中止に関しては、日米両国の書面での同意により随時修正が可能なほか、相手国への書面での通知により随時中止が可能だと記された。

(注1)「投資委員会」は、米国商務長官が議長を務める。

(注2)みなし配分額の詳細は覚書の付録を参照。

(葛西泰介)

(日本、米国)

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