トランプ米政権、韓国との先端技術協力に関する覚書発表、通商協定は発表せず

(米国、韓国、日本)

ニューヨーク発

2025年10月30日

米国のトランプ政権は10月29日、韓国と先端技術協力に関する覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを締結したと発表した。また、米国と韓国の双方向の投資などに関するファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも発表した。一方で、調整が進められていた米国による追加関税や、韓国による対米投資を取りまとめた合意文書は発表されなかった。

覚書(注)では、米国と韓国が協力する具体的な分野として、人工知能(AI)とイノベーション、技術リーダーシップ、研究セキュリティー、先進無線アクセスネットワークと第6世代移動通信システム(6G)、医薬品・バイオテクノロジーのサプライチェーン確保、量子イノベーション、基礎研究とSTEM(科学、技術、工学、数学)、宇宙探査を挙げた。このうちAIに関しては、先進製造やバイオテクノロジー分野での活用に向けた革新的研究開発の推進や、アジアなどへのAI輸出協力などを記載した。米国商務省国際貿易局(ITA)は10月21日にAI輸出プログラムの開始を発表している(2025年10月23日記事参照)。

トランプ政権は10月29日、日本と韓国との技術協力に関する覚書では、米国が両国と科学技術での連携を加速させ、規制・基準の整合化や、研究開発の加速化、国家安全保障の強化を実現するものだとする声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも発表した。トランプ政権は日本とも同様の協定を前日の28日に結んでいた(2025年10月29日記事参照)。

ファクトシートでは、大韓航空による362億ドル相当のボーイングの航空機103機や、137億ドル相当のGEエアロスペースのエンジンの購入、米国のリエレメント・テクノロジーズと韓国のポスコ・インターナショナルの提携による、高付加価値モビリティー磁石に特化した希土類(レアアース)の分離・精製・磁石生産複合施設の米国での設立などを列挙した。そのほか、LSグループによる海底ケーブルなど米国の電力網インフラに対する2030年までの30億ドルの投資や、ハンファ・オーシャンによる米ペンシルベニア州フィリー造船所の生産能力を10倍以上に拡大する50億ドルの投資計画なども記した。一方で、米国のアマゾンが2031年までに50億ドルを投資し、韓国でクラウドインフラを構築するとも記載した。

米国の追加関税引き下げや韓国の対米投資に関する合意文書は発表されなかった。米国は韓国に対する相互関税率を15%とし、1962年通商拡大法232条に基づく自動車・同部品に対する25%の追加関税を15%に引き下げる一方、韓国は米国に対して3,500億ドルを投資することなどで合意している(米国側発表:2025年8月1日記事参照、韓国側発表:2025年8月5日記事参照)。米国は3,500億ドルの現金での拠出を求めているものの、韓国はこれを拒否したことで交渉が難航していたとされるが、ドナルド・トランプ大統領は10月29日、韓国の李在明大統領との会談後に「われわれは多くの異なる項目について結論に達した」と述べた(政治専門紙「ポリティコ」10月29日)。しかし、現状は、韓国に対する相互関税率は合意どおりの15%だが、自動車・同部品の追加関税は25%のままとなっている。

(注)覚書は、両国の署名とともに発効した。覚書を破棄する場合は、相手国に対して書面で通知した後、180日後に効力は失われる。なお、同覚書は法的拘束力を有さない。

(赤平大寿)

(米国、韓国、日本)

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