米国向け越境EC販売で通関事前対応の重要性増大、価格転嫁の動きも

(日本、米国)

デジタルマーケティング部ECビジネス課

2025年10月23日

ジェトロは10月17日、越境EC(電子商取引)取り組み事業者向けの米国関税ウェビナーを開催し、越境ECに関心を持つ約540人が参加した。ジェトロとフェデラルエクスプレス・ジャパンが、米国のデミニミスルール撤廃を受けた、同国向けの越境ECのビジネス環境の変化や(2025年8月19日記事9月3日記事10月9日記事参照)、事業者が今後取り組むべき対応などについて解説した。概要は次のとおり。

  • デミニミスルールの撤廃により、越境ECで通関されることが多かった課税評価額800ドル以下の商品であっても、一般貨物の通関と同等のクライテリアのペーパーワークが求められるようになった。
  • デミニミスルールの適用下では、物流や通関の専門企業(サードパーティ)の費用はコストと捉えられがちだったが、今後は「リスク回避と信頼性確保の投資」として取り組むべきだ。
  • 同ルール廃止によるプラスの影響として、意図的に800ドルまでに発注金額を抑えていた米国バイヤーの購入単価が上昇する可能性がある。
  • ジェトロが実施中の「JAPAN STORE」(注1)に参加し、Amazon(アマゾン)で米国へ販売する日本企業へのアンケート結果によると、関税分を商品価格へ転嫁している一部の事業者は、商品の付加価値をさらに高める工夫をしていることが分かった。

本セミナー参加申し込み企業への事前アンケート(注2)によると、米国関税措置による影響としては「販売戦略の見直し」が41%と最も高く、物流や売上高・利益への影響も3割弱見られた。対応策では、「関税コストの価格への転嫁による値上げ」が36%と最多で、「販売国の転換・多国化」や「商品の付加価値向上」も一定数が実施していた。

参加後のアンケート(注3)では、「今回のウェビナーを受けて今後取り組もうと思っていること」として、約半数が「商品の関税率やHSコードの調査・把握」と回答したほか、物流関連事業者との連携強化(39%)、配送方法や商品価格設計の見直し(いずれも29%)と続き、事業者の今後の対応が見込まれる。

本ウェビナーは、2025年12月中旬までアーカイブを配信中。

(注1)ジェトロがアマゾンと連携して実施する、日本の事業者の米国や英国へのアマゾン出品販売をサポートするプログラム

(注2)申込者850人のうち、法人格を有する事業者、かつ「米国向けに配送したことがない」と回答した事業者を除く、計538社の回答データを基に算出。

(注3)アンケート回答者317人(個人を含む)の回答データを基に算出。

(松田かなえ)

(日本、米国)

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