米デミニミスルール廃止を受け、eBayでの越境EC事業者に販売戦略見直しの動き
(米国、日本)
デジタルマーケティング部ECビジネス課
2025年10月09日
米国Eコマース大手イーベイ(eBay)の日本法人イーベイ・ジャパンは8月29日、日本から米国向けのイーベイ出品者(セラー)を対象に、「いま知っておきたい、越境EC(電子商取引)セラーのための米国関税と日本支援策」と題したウェビナーを開催し、ウェビナー参加者を対象に、米国トランプ政権による関税政策への対応状況に関するアンケートを実施した。イーベイのセラーの多くは中古品を出品する個人・個人事業主であり、今回のウェビナー参加者622人のうち353人がアンケートに回答し、その構成は個人事業主51.3%、個人が26.3%、中堅・中小企業が22.4%だった。
米国では1930年関税法321条に基づき、輸入申告額が800ドル以下の少額貨物の輸入に対して、関税支払いなどを免除する非課税基準額(デミニミス)ルールが設けられていた。しかし、ドナルド・トランプ大統領の大統領令に基づき、米国東部時間8月29日午前0時1分以降に通関する貨物からデミニミスルールの適用を停止し、同ルールの下で免税対象とされていた800ドル以下の少額貨物に対しても関税が賦課されることになった(2025年8月19日記事参照)。
イーベイが実施したアンケート(添付資料参照)によると、米国政府が8月29日に停止したデミニミスルールを適用して配送を行っていた事業者は93.5%に上った(注1)。また、出品商品の原産地について、69.4%は「日本」と回答があった一方、「中国」(10.8%)および「その他」(11.9%)が約23%を占めたことから、日本以外の相互関税の影響を受ける事業者も一定数見られた。
米国関税措置による自社への影響としては、「販売戦略の見直し(出品商品、価格、販売国など)」の回答が80.5%と最多で、次いで「売上個数の減少・売上高の低下」が56.1%、関税分の負担などによるとみられる「利益率の低下」が49.3%、「物流(デミニミス廃止に伴う配送方法の変更)」が43.3%だった(複数回答可)。また、対応策として、76.8%が「関税コストの転嫁による値上げ」と回答した。「販売対象国の転換・多国化」も55%と、米国以外への販売先分散も検討されている結果が見られ、今後の対応について引き続き注視が必要だ。
イーベイは9月29日、2025年10月17日以降に発生した取引より、日本から米国に発送する2,500ドル(送料を含む)未満の商品について、配送要件としてDDP(Delivered Duty Paid:関税込み持ち込み渡し)(注2)を必須とすると発表した。DDU(Delivered Duty Unpaid:関税抜き持ち込み渡し)(注3)の場合、通関での遅延が発生していること、購入者(バイヤー)が商品受け取り時に関税を支払うためバイヤーが購入をちゅうちょする、関税支払いと商品受け取りを拒否するといった事態が発生していたことが背景となっている。この変更により、配送要件をDDUとしていたセラーはバイヤー負担としていた関税費用分の価格転嫁を検討することが求められる。
(注1)「デミニミスルールの範囲内で送付していた」と回答した64.9%および「デミニミス適用と不適用のいずれも混在していた」と回答した28.6%の合計。
(注2)関税・税金がセラー負担となる配送方式。
(注3)関税・税金がバイヤーに請求される配送方式。
(松田かなえ)
(米国、日本)
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