トランプ米大統領、相互関税の対象外品目を修正、関税合意の評価・実施を商務長官とUSTR代表に指示
(米国、世界)
調査部米州課
2025年09月08日
米国のドナルド・トランプ大統領は9月5日、相互関税の対象外となる品目を修正する大統領令を発表した。大統領令では、米国の関税措置を巡る各国・地域との合意に基づき、相互関税を今後免除する可能性のある品目群も公表した。
トランプ氏は4月に発表した相互関税に関する大統領令の付属書2で、相互関税を課さない品目を指定した。その後、スマホなど半導体関連製品も相互関税の対象外としていた(2025年4月14日記事参照)。今回の大統領では付属書2を修正し、複数の品目を削除・追加した。ホワイトハウスが発表したファクトシートによると、特定の水酸化アルミニウムや樹脂、シリコーン製品を削除した一方、地金関連製品や1962年通商拡大法232条に基づく調査対象となっている特定の重要鉱物と医薬品を追加した(注1)。修正した付属書2
は、米国東部時間9月8日午前0時1分以降に通関された輸入に適用する。米国税関・国境警備局(CBP)は9月6日、付属書2の修正に関するガイダンスを発表
した。
大統領令では、商務長官と米国通商代表部(USTR)代表に対し、各国・地域との枠組み合意の進捗状況を評価し、枠組み合意や最終合意を実施するよう指示した。一方、相互関税の免除や232条関税の修正は、合意における相手国・地域のコミットメントの範囲や経済的価値などに依存するとも記した。その上で、合意に基づいて相互関税を免除する可能性のある品目のリストを付属書3に列挙した(注2)。付属書3には、米国で栽培・採掘・生産できない、あるいは国内需要を満たす十分な量を生産できない製品のほか、特定の農産品、航空機・同部品、医薬用途に使用される非特許品が含まれている。
相互関税を免除する品目は各国・地域との最終合意ごとに異なるとした。トランプ政権は8月に発表したEUとの枠組み合意で、コルクなど米国で調達が困難な資源や航空機・同部品、ジェネリック医薬品・同原料については、相互関税を課さないと発表した(2025年8月22日記事参照、注3)。9月4日に発表した日本との枠組み合意を実施する大統領令でも、米国内で入手不可能な天然資源やジェネリック医薬品に対して、相互関税を免除する可能性を示した(2025年9月5日記事参照)。付属書3はこうした合意内容を念頭に置いてまとめられたものとみられる。
大統領令では、CBPに合意内容に基づく関税還付も指示した。関税還付はCBPによる標準的な還付手続きに従う。日米合意の実施に関する大統領令でも関税還付が定められているが、CBPは9月5日、CBPが詳細なガイダンスを出すまで還付手続きを行わないよう指示する暫定ガイダンスを発表している。
(注1)追加された品目は、付属書2の品目リストの注釈(Notes)に「追加(Addition)」と記されている。
(注2)付属書3は、付属書2に続いて38ページ目から記載されている。
(注3)米国時間9月8日時点で、具体的なガイダンスなどは出ていない。
(甲斐野裕之)
(米国、世界)
ビジネス短信 aa651bc9802c78a5