トランプ米政権、AI行動計画を発表、規制緩和や輸出管理厳格化など表明
(米国)
ニューヨーク発
2025年07月25日
米国のトランプ政権は7月23日、人工知能(AI)分野の競争力強化に向けた「AI行動計画」を発表した。
ドナルド・トランプ大統領は2025年1月にAIなどの規制緩和に関する大統領令を発表し、大統領補佐官(国家安全保障担当)らに対して、バイデン前政権のAI関連規制を見直すとともに、AI分野における米国の優位性の維持や強化に向けた行動計画の策定を指示していた(2025年1月27日記事参照)。
行動計画は、(1)イノベーションの促進、(2)国内のAIインフラ構築、(3)AIに関する外交政策・安全保障措置の3章で構成され、100以上の提言が盛り込まれた。このうち、(1)イノベーションの章では、過度な規制の見直しの方針が示され、AIの開発や展開を制約する規則、指針、行政命令などの特定、改正、撤廃などが提言された。(2)インフラ構築の章では、AIに必要な半導体製造施設、データセンター、発電施設の建設許認可の迅速化に向けて、関係当局が効率的に手続きを進められる関連規則の簡素化などが提言された。(3)外交・安全保障の章では、米国製のAIシステムなどを世界に普及させることで、AI分野における米国の優位性を強化するとともに、同盟国が戦略的競争相手の技術に依存することを防ぐことができるとして、商務省内に産業界からの輸出促進に向けた提案を受け付けるプログラムを創設するなどの提言が盛り込まれた。また、輸出促進の方針が示される一方で、懸念国への技術流出防止に向けた輸出管理の厳格化の方針も示された。具体的には、既存の輸出管理の抜け穴をふさぐため、現在規制対象に含まれない「半導体製造サブシステム」「コンポーネントサブシステム」に関する輸出管理措置を商務省が策定することが提言された。このほか、米国と同盟国が輸出管理の連携に向けて取り組む方向性も示された。
さらに、トランプ氏は同行動計画の発表と同日に、(1)データセンター建設許認可の迅速化、(2)連邦政府の調達するAIシステムからDEI(注)などのイデオロギー的教義を排除
、(3)米国製AI技術の輸出促進
、の3本の大統領令を発令した。(1)は、ジョー・バイデン前大統領によるAIデータセンターのインフラ増強に向けた大統領令(2025年1月15日記事参照)を撤廃するとともに、商務長官に対しデータセンタープロジェクトの財政支援イニシアチブの設立を、関係機関に対し許認可手続きの迅速化や簡素化に向けた措置などを指示した。(2)は、政府機関の大規模言語モデル(LLM)の調達に際して、思想的中立性などを担保したシステムの調達を規定した。(3)は、商務長官に行動計画で示された輸出促進に向けた産業界の提案を受理および検討する「米国AI輸出プログラム」の設立を指示した。
(注)DEI(多様性、公平性、包摂性)プログラムに関しては、2025年4月14日付地域・分析レポート。
(葛西泰介)
(米国)
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