米シンクタンク、米英合意を考察、今後もベースライン関税は維持の見立て

(米国、英国)

ニューヨーク発

2025年05月20日

米国の首都ワシントンのシンクタンクは、米国と英国の5月8日の合意(米国側:2025年5月9日記事参照、英国側:2025年5月9日記事参照)について、米国と他国の通商交渉を占う先例になるとの見通しを示している。

戦略国際問題研究所(CSIS)経済プログラムと国際ビジネス・ショールチェアのシニアアドバイザー、名誉ショールチェアのウィリアム・ラインシュ氏は5月12日に発表した論考外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、米英合意のポイントとして、(1)合意が法的拘束力を持たず、合意内容の持続性は疑問視されること、(2)今後の交渉を約束する暫定的な合意が多くを占めつつ、米国の英国産自動車に対する関税割当(TRQ)のような実質的な合意も含まれること、(3)米国がベースライン関税10%の維持で譲歩しなかったことなどを挙げた。これらを踏まえて、米国は他国との通商交渉でも、部分的に実質的な合意をする用意はあるものの、ベースライン関税10%を引き下げることはないだろうとの考えを示した。

ブルッキングス研究所外交政策プログラムと米欧センターのノンレジデント・シニアフェローのダニエル・ハミルトン氏は5月12日に発表した論考外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、米英合意のポイントとして、米国がベースライン関税10%を維持したことを挙げ、英国の対米輸出に与える負の影響は大きいと指摘したほか、「多くの詳細が不明確なまま、多くの問題が残されたままになっている」と指摘した。また、合意内容は自動車などの分野別の合意を組み合わせたものだとして、米国と他国の通商交渉の結果も、「包括的な通商協定ではなく、選択的な分野別の協定になる可能性が高い」との考えを示した。

このように、シンクタンクの研究者は米英合意について、暫定的な合意内容が多いことや、合意内容の詳細が不明確なこと、法的拘束力を持つ合意ではないことを挙げ、引き続き予見可能性の低い状態が継続する可能性を指摘する。また、米国と他国との通商協議では、自動車などの各分野に焦点を当ててTRQなどの緩和措置を設ける一方で、ベースライン関税10%は維持される可能性を指摘し、合意成立後も引き続きトランプ政権発足前と比べて高い関税が残るとの見方を示している。

(葛西泰介)

(米国、英国)

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